妊娠中の胆汁うっ滞(妊娠性肝内胆汁うっ滞)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中に肝臓で作られる胆汁(消化を助ける液体)の流れが滞り、胆汁の中の成分が血液に増えてしまう病気です。そのために皮膚がかゆくなったり、まれに赤ちゃんに影響が出たりすることがあります。出産後には多くの場合よくなります。
重要な事実
- 主な症状は発疹を伴わない強いかゆみで、特に手のひらや足の裏に現れやすいです。
- 妊娠後期(多くの場合28週以降)に起こりやすい病気です。
- 適切な管理とタイミングの良い出産により、多くの母子が元気に過ごせます。
まれな病気で、およそ100~1000人に1人程度と言われています。国や地域、人種によって頻度は異なりますが、日本では比較的まれです。
妊娠中の女性にのみ起こります。特に妊娠後期に多く、双子などの多胎妊娠、過去の妊娠で胆汁うっ滞があった方、家族歴がある方に起こりやすいとされています。
症状
- 胎動が明らかに少ない、または感じられない
- 強いおなかの痛みや張りが続く
- 性器出血がある
- 破水のような水っぽいおりものがある(破水の疑い)
- ⚠強いかゆみが続き、眠れないほどである
- ⚠尿の色が濃い、または皮膚や白目が黄色い(黄疸)
- ⚠かゆみに加えて吐き気や体調不良がある
一般的な症状
- 発疹がないのに、特に手のひらや足の裏が強くかゆい(夜間に悪化しやすい)
- 尿の色が濃くなる
- 便の色がいつもより白っぽくなる
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- 疲れやすい、全身の不快感
子供の症状
- この病気は妊娠中の女性だけに起こるため、子どもに直接の症状はありません。ただし、赤ちゃんへの影響を防ぐため、胎動の変化には注意が必要です。
高齢者の症状
- 妊娠中の女性に起こる病気のため、高齢者に特有の症状はありません。
原因
主な原因
- 原因は完全には分かっていませんが、妊娠によって増える女性ホルモン(エストロゲンなど)の影響で、肝臓からの胆汁の流れが弱まることが関係していると考えられています。
- 遺伝的な要素も関与します。
リスク要因
- 過去の妊娠で胆汁うっ滞になったことがある
- 家族に同じ病気の人がいる
- 双子や三つ子など多胎妊娠
- 肝臓や胆のうの病気を持っている
- 一部の国・地域(南米や南アジアなど)にルーツがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「緊急」に該当する症状がある場合は、すぐに救急車(119)または産科の緊急連絡先に連絡してください。
- 強いかゆみで日常生活に支障がある場合や、黄疸がある場合は、同じ日中に産科医の診察を受けてください。
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中のどんなかゆみでも、次の妊婦健診のときに伝えましょう。早めの検査で安心につながります。
- 以前の妊娠で胆汁うっ滞になった方は、妊娠初期から産科医に伝え、計画的な管理を受けてください。
診断
医師が症状や妊娠中の経過を聞き、血液検査で胆汁酸(胆汁に含まれる成分)と肝機能の値を調べます。かゆみの程度や妊娠週数なども合わせて診断します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血清胆汁酸、肝機能検査)
- 超音波検査(肝臓や胆のうの状態を確認し、ほかの原因を除外するため)
診察で予想されること
診断は外来で行われることがほとんどです。血液検査の結果は数日で出ます。診断された場合は、産科と肝臓内科が連携して、週に1~2回の胎児チェックなど、より細かい管理が始まります。
治療
治療の目標は、かゆみなどの症状をやわらげ、赤ちゃんへのリスクを減らすことです。薬物療法に加えて、赤ちゃんの状態をこまめに確認し、場合によってはやや早め(妊娠37週以降)に分娩を計画することもあります。
自宅でのセルフケア
- 入浴はぬるめのお湯にして、熱いお湯を避ける
- 刺激の少ない石けんや保湿剤を使う(薬局で相談してみましょう)
- ゆったりとした綿の服を着て、肌を冷やす
- 爪を短く切り、かきむしらずに冷たいタオルを当てる
- 規則正しい生活と十分な休息をとる
医療治療
医師が処方する胆汁酸を低下させる内服薬や、かゆみをやわらげるお薬が使われることがあります。赤ちゃんの肺の成熟を促す治療が行われることもあります。どのお薬も必ず医師の指示に従ってください。市販薬を自己判断で使うのは避けましょう。
手術が検討される場合
胆汁うっ滞そのものに対する手術はありません。分娩方法(経腟分娩か帝王切開か)は、母体と赤ちゃんの状態に応じて医療チームが決めます。
この病気と共に生きる
毎日決まった時間に胎動をチェックし、気になる変化をすぐに伝える習慣をつけましょう。かゆみが強いときは、涼しい環境で過ごし、保湿と冷やし方を工夫してください。通院の予定を守り、処方されたお薬は指示どおりに服用しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 日中もこまめに水分をとる
- 就寝前のカフェイン摂取を避ける
- 部屋を涼しく保つ
- 妊娠中はアルコールを避ける(妊娠中のアルコールは禁止です)
- ストレスをためずに、話しやすい人に気持ちを伝える
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスのよい食事を心がけてください。適度なウォーキングなど軽い運動は、体調がよければ問題ないですが、必ず主治医に確認してから行いましょう。
精神的健康と心の健康
強いかゆみと赤ちゃんへの心配が重なると、不安やイライラ、眠れないことがあります。そうした気持ちになるのは自然なことです。パートナーや家族、助産師や医師に率直に相談してください。必要に応じて、産前・産後のこころのケアを提供する専門家(精神科医やカウンセラー)につないでもらえます。
予防
完全に予防する方法はまだ分かっていません。以前の妊娠で胆汁うっ滞になった場合は、次の妊娠の初めから医師に伝えることで、早期に検査し、リスクを減らす計画が立てられます。
ワクチン
特に関係するワクチンはありません。
検診プログラム
すべての妊婦さんを対象にした、この病気のスクリーニング検査は一般的ではありません。症状がある場合やリスクが高い場合は、早めに血液検査を行います。
合併症
治療しない場合
- 赤ちゃんへの影響として、早産、羊水が緑色に濁ること、まれに胎児が弱ることでおなかの中で亡くなることがあります。
- お母さんへの影響として、強いかゆみによる不眠や生活の質の低下、まれに肝機能の異常や胆石が起こることがあります。
長期的な見通し
妊娠中の胆汁うっ滞は、適切な管理とタイミングの良い出産により、赤ちゃんへの大きなリスクは大幅に減らせます。症状は出産後数日で消えることがほとんどで、多くのお母さんが元気に退院されます。次回の妊娠でも再発することがありますが、その際も早めの対応で乗り越えられます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月1日
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