股関節形成不全(発育性股関節形成不全)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
股関節形成不全とは、太ももの骨(大腿骨)の先端にある丸い部分(骨頭)が、骨盤側のくぼみ(臼蓋)にしっかりはまらない状態です。このくぼみが浅い、または関節がゆるいために、股関節がぐらぐらして不安定になります。子どもでは発育の過程で見つかることが多く、大人になってから痛みなどの症状が出て診断されることもあります。
重要な事実
- 生まれつき股関節の形が浅い、または関節がゆるいために起こります。
- 乳児の健康診査で見つかることが多く、早期発見・早期治療が大切です。
- 治療は年齢や症状によって異なり、多くの場合、手術をしなくても改善できます。
日本では100人に1~2人程度に見られ、決して珍しい病気ではありません。乳児の健康診査で股関節のチェックが行われているため、比較的早い段階で見つかることが多いです。
特に女の子に多く、男の子の約5~6倍と言われています。逆子(骨盤位)で生まれた赤ちゃん、家族に股関節形成不全の人がいる場合、初めての出産で生まれた赤ちゃんでは、ややリスクが高まります。大人では、中高年の女性に多い股関節の痛みの原因のひとつになることもあります。
症状
- 転倒などのけがのあと、股関節に激しい痛みがあり、足をまったく動かせない場合(すぐに119番に電話してください)
- 立ち上がれず、太ももの形や向きがいつもと違って見える場合(すぐに119番に電話してください)
- ⚠急に股関節の痛みが強くなり、歩くのがつらい場合
- ⚠赤ちゃんが片方の足だけ動かさず、触ると激しく泣く場合
- ⚠発熱を伴う股関節の痛みがある場合
一般的な症状
- 股関節の痛みや違和感
- 歩き方の異常(足を引きずる、がに股など)
- 股関節が開きにくい、または動かしにくい
子供の症状
- おむつ替えや入浴のときに、股関節が左右で開きにくい
- 太ももの内側のしわの位置や数が左右で違う
- 足の長さが左右で違って見える
- 歩き始めるのが遅い、または歩き方が不安定
高齢者の症状
- 股関節の痛み(歩き始めや長時間歩いたときに強くなりやすい)
- 股関節に引っかかり感や違和感がある
- 靴下を履く、足を組むなど、股関節を動かす動作がしにくい
- 股関節をかばうことで、腰や膝の痛みが出ることもある
原因
主な原因
- 胎児のときの子宮内での姿勢(逆子や羊水が少ない場合など)が影響する
- 妊娠中のホルモンの影響で、赤ちゃんの関節や靭帯がゆるい状態で生まれる
- 出生後に、股関節が正しい位置に保たれないまま成長する
リスク要因
- 女の子であること
- 逆子(骨盤位)で生まれたこと
- 家族(両親や兄弟姉妹)に股関節形成不全の人がいること
- 赤ちゃんの足をまっすぐに伸ばしたまま、強くおくるみで巻く習慣があること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい股関節の痛みで歩けない場合
- 赤ちゃんが片方の足を動かさず、不自然にだらんとしている場合
定期受診を予約すべき場合:
- 乳児健診で股関節について指摘を受けた場合
- 股関節の痛みや引っかかり感が続く場合
- 歩き方の変化(足を引きずるなど)が気になる場合
診断
まず、医師が問診を行い、その後、股関節の動きや安定性を確認する診察を行います。乳児の場合、おむつを外して足を開いたり閉じたりすることで、股関節が外れやすいかどうかを確かめます。必要に応じて画像検査で詳しく確認します。
行われる可能性のある検査
- 診察:足を開く・閉じるなどの動作で、股関節のゆるみや外れやすさを確認します
- 股関節エコー(超音波検査):乳児では、音波を使って股関節の形と安定性を確認します
- レントゲン(X線)検査:股関節の骨の形を画像で確認します
- CT・MRI検査:必要に応じて、骨や軟骨、周りの組織をより詳しく調べます
診察で予想されること
特別な準備はほとんど必要ありません。診察と検査は30分~1時間程度で終わることが多いです。検査そのものに痛みはなく、乳児の場合も保護者が付き添いながら行われます。診断結果と治療方針は、医師がわかりやすく説明してくれます。
治療
治療は、年齢と症状の程度によって異なります。乳児では、股関節を正しい位置に保つための装具を使う治療が基本で、多くの場合、外来通院で対応できます。大人では、痛みを和らげながら股関節の機能を保つため、運動療法や生活の工夫が中心になります。まずは医師と相談して、自分に合った治療を選びましょう。
自宅でのセルフケア
- 長時間の正座やしゃがみ込み、重い荷物の持ち上げなど、股関節に負担のかかる動作を避ける
- 体重を増やしすぎない(体重が増えると股関節への負担が大きくなります)
- 痛みがあるときは無理に動かさず、安静にする
- 股関節にやさしい運動(水中歩行など)を日常に取り入れる
医療治療
痛みを和らげるための薬物療法や、股関節の周りの筋肉を鍛える理学療法が行われることがあります。どの治療法を選ぶかは、医師が個人の状態に合わせて判断します。乳児の場合、股関節を正しい位置に保つための装具(足を開いた姿勢で固定するハーネス型の装具など)を使用します。装具は医療機関で調整してもらえます。
手術が検討される場合
装具や運動療法で改善が難しい場合や、股関節の形が大きく崩れている場合には、手術が検討されることがあります。手術では、骨盤や太ももの骨の形を整えて関節を安定させる方法や、関節が大きくすり減っている場合に人工関節に置き換える方法などがあります。手術が必要かどうかは、専門医が画像検査と症状をふまえて説明します。
この病気と共に生きる
股関節をいたわりながら、無理のない範囲で日常生活を続けることが大切です。痛みが強いときは休む、調子がよいときは適度に動く、というように、自分の体の声を聞きながら活動量を調整しましょう。定期的に医師のチェックを受け、経過を見守ることも長く付き合うためのポイントです。
生活習慣のアドバイス
- 股関節に負担のかからない高さの椅子を使い、立ち座りを楽にする
- 滑りにくい靴を選び、転倒を防ぐ
- 長時間同じ姿勢を続けず、こまめに休憩をとる
- 禁煙を心がける(たばこは骨や関節の健康に悪影響を及ぼします)
食事と運動
骨の健康を保つために、カルシウムやビタミンDを含む食品(牛乳・小魚・きのこ類など)をバランスよくとりましょう。運動は、股関節に負担が少ない水中運動やウォーキングがおすすめです。体重が増えると股関節への負担が大きくなるため、適正体重を維持しましょう。
精神的健康と心の健康
股関節の痛みや動きの制限が続くと、気分が落ち込んだり、外出がおっくうになったりすることがあります。そんなときは、一人で抱え込まず、家族や友人、医師に気持ちを話してみましょう。眠れない・食欲がないなど、心の不調が続く場合は、地域の精神保健福祉センターや心療内科などの専門機関に相談することも一つの方法です。
予防
すべての股関節形成不全を予防することはできませんが、リスクを減らすことは可能です。特に乳児では、足をまっすぐに伸ばした状態で強くおくるみを巻くことは避け、足が自然に開いた「M字」のような姿勢を保つようにしましょう。日本の乳幼児健康診査には股関節のチェックが含まれており、早期発見につながっています。
ワクチン
股関節形成不全そのものを予防するワクチンはありません。ただし、定期予防接種は感染症から体を守るために大切です。乳幼児健康診査やかかりつけ医に相談して、接種スケジュールを確認しましょう。
検診プログラム
日本では、厚生労働省の指針に基づき、生後3~4か月頃の乳幼児健康診査で股関節のチェックが行われています。逆子で生まれた赤ちゃんや家族歴がある場合など、リスクが高いと判断された場合は、より早い時期に医療機関で検査を受けることがすすめられます。
合併症
治療しない場合
- 股関節の脱臼(関節が外れること)が繰り返し起こる
- 足を引きずる歩き方(跛行)など、歩き方の異常が残る
- 関節の軟骨がすり減り、変形性股関節症(関節がすり減って痛みや動きの制限が出る病気)を引き起こす
- 股関節が硬く動かしにくくなる(関節拘縮)
長期的な見通し
股関節形成不全は、早期に発見して適切な治療を行えば、多くの場合、経過は良好です。乳児期に治療を始めた子どものほとんどは、問題なく成長し、普通に歩けるようになります。大人になってから見つかった場合でも、運動や生活の工夫、適切な医療によって、痛みを和らげながら活動的な生活を続けられます。あきらめずに、医師と一緒に自分に合った方法を探していきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。