小児発語失行(しょうにはつごしっこう)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
小児発語失行とは、脳がことばを話すために必要な口や舌、あごの動きをうまく計画できないために、言いたいことばが正しく発音できない病気です。筋肉そのものには問題なく、子どもは何を言いたいかをちゃんとわかっていますが、ことばとして声に出すことが難しくなります。
重要な事実
- 脳が発声のための動きを計画・調整する力に課題がある病気です
- 筋肉や知能の問題とは違います
- 早い時期から専門的な言語療法を受けることで、話す力は大きく改善できます
まれな病気です。およそ1000人に1~2人とされ、あまり多くはありませんが、ことばの発達に不安を持つご家族は少なくありません。
おもに幼児期に症状が現れ始めます。男の子にやや多く見られます。また、早産や低出生体重で生まれたお子さん、神経発達症(自閉スペクトラム症など)のあるお子さんの一部に見られることがあります。
症状
- 急に全く話せなくなった
- 顔の片側が動かない、手足の力が入らない
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- けいれんが起きた
- ⚠ことばの遅れや発音の一貫性のなさが気になる
- ⚠子どもが話そうとするときに苦しそう、または極端に避ける
- ⚠聴こえているかどうか心配なほど話さない
一般的な症状
- 乳児期にクーイングや喃語(あー、うーなど)が少ない
- 初めてのことばが出るのが遅い
- 同じことばなのに、言うたびに発音が違う
- 親には通じにくい発音で、伝えようと苦労する
- ことばの理解に比べて、話すことだけが特に難しい
子供の症状
- 話そうとすると、口や舌をゆっくり探しながら動かすような様子が見える
- 短いことばは言えるが、長いことばになるとつまずく
- 音を入れ替えたり、抜かしたりする(例:「ばった」が「たばっ」になる)
- ジェスチャーや目線は豊かで、伝えたい気持ちは強い
- 年齢に比べて使える子音の数が少ない(口を閉じる音、舌を上げる音など)
原因
主な原因
- 原因はまだ完全にはわかっていませんが、脳内でことばを発するための運動を計画する神経回路に問題があると考えられています
- 生まれつきの脳の発達の違いであり、親のしつけや育て方が原因ではありません
リスク要因
- 早産・低出生体重
- 自閉スペクトラム症など、ほかの神経発達症があること
- 家族に言語障害や学習障害があること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然、話せなくなったり、意識の変化やけいれんがみられるときは、すぐに119番へ連絡してください
- 言葉以外に、体の動きに麻痺の疑いがある場合も救急車が必要です
定期受診を予約すべき場合:
- ことばの発達が年齢より遅れている、発音が毎回変わってしまうなど気になる場合
- お子さんの話し方に強い違和感があり、家庭での様子が気になるとき
- 幼稚園や保育園で、先生から「ことばが通じづらい」と指摘されたとき
診断
小児発語失行の診断は、小児科医や言語聴覚士がお子さんのことば全体の発達、聞こえ、口や舌の動き、発音の様子などを総合的に観察して行われます。家庭での様子も聞き取り、典型的な症状がそろっているかを丁寧に確かめます。
行われる可能性のある検査
- 聴力検査(音がきちんと聞こえているかの確認)
- 口・舌・あごなどの運動の評価
- 標準化された言語発達テスト
- 音声を録音して発音の一貫性を分析する評価
診察で予想されること
最初は小児科での発達相談から始まります。必要があれば、言語聴覚士や発達の専門医を紹介されます。診断には数回の評価が必要で、時間がかかることもありますが、その間も子どもに合わせた関わり方のアドバイスを受けることができます。
治療
治療の中心は、専門の言語聴覚士による言語療法です。週に数回、1対1で、ことばを発するために必要な口や舌の動きを、子どもが楽しみながら練習できるように進められます。早く始めるほど改善が期待できます。
自宅でのセルフケア
- 子どもが話そうとしたら、決して遮らず、じっくり最後まで聞く
- 間違った発音をその都度直すより、言えたことに注目してほめる
- 絵カードやジェスチャー、指さしを使って伝わる楽しさを育てる
- 顔を見て話せるように、少ししゃがんで目線を合わせる
- 絵本の読み聞かせや、歌、リズム遊びなどを日常に取り入れる
医療治療
この病気に対する特別な薬はありません。治療は言語聴覚士による個別の言語療法を中心に、必要に応じて作業療法や心理的支援を組み合わせて行います。ご家族がトレーニングを家庭で続ける方法も指導されます。
手術が検討される場合
手術が必要になることはありません。
この病気と共に生きる
お子さんが「伝えたい」と感じる気持ちを何よりも大切にしてください。ことばでの表現が苦手でも、ジェスチャーや絵を使ってコミュニケーションが取れるように工夫しながら、ゆったりしたペースで生活することが大切です。保育園・学校とはお子さんの特性を共有し、個別の支援計画を一緒に考えてもらいましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に読み聞かせをするなど、ことばに触れる習慣を作る
- 子どもが好きな遊びを通して、楽しく発声を促す
- 兄弟姉妹にも理解をしてらい、家族全体で温かく見守る
- 睡眠や食事など、規則正しい生活リズムを保つ
食事と運動
特別な食事は必要ありませんが、歯ごたえのある食材や舌を使う遊びは、口周りの意識を育てる助けになることがあります。固いものを食べるときは、噛み砕きにくい場合は無理せず、飲み込みが心配なときは言語聴覚士や医師に相談してください。運動は特に制限はなく、体を動かす遊びを十分に楽しんでOKです。
精神的健康と心の健康
ことばが伝わりにくいと、お子さんは苛立ちや自信のなさを感じることがあります。また、保護者の方も「自分の育て方が悪いのでは」と不安や孤独を抱くことがあります。それは決してありません。お子さんにも、ご自身にも、優しく向き合う気持ちを持ち続けてください。
予防
小児発語失行そのものを予防する方法はまだありません。しかし、ことばの発達の偏りを早く見つけ、すぐに専門的な支援を始めることで、その後のコミュニケーション力や学習面でのつまずきを大きく減らすことができます。
ワクチン
定期予防接種は、ほかの感染症からお子さんを守るために、いつも通り受けることをおすすめします。特定のワクチンがこの病気を予防するわけではありませんが、感染症による脳への影響を防ぐ間接的な役割はあります。
検診プログラム
乳幼児健診では、ことばの発達の様子も確認されます。健診で指摘がなくても、保護者が気になる場合は、待たずに保健センターや小児科へ相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 話すことへの苦手意識が強くなり、コミュニケーションの機会が減る
- 友達との遊びや集団生活での参加に影響が出ることがある
- 文字の習得や読み書きなど学習面にまで影響が及ぶことがある
- 自己肯定感の低下や、怒りっぽさ、引っ込み思案などの行動面の課題につながることがある
長期的な見通し
適切な言語療法を早く始めた子どもほど、大きな改善が期待できます。子どもの成長に合わせて、話す力は少しずつ確実に伸びていきます。短期間で劇的に変わることは少なくても、数ヶ月、数年の単位で見ると、多くの子どもが意味のあることばで伝え合えるようになります。希望を持って、専門家と一緒に長い目で見守ることが何より大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月2日
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