乳房パジェット病(乳頭パジェット病)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
乳房のパジェット病(乳頭パジェット病)は、乳頭(ちくび)の皮膚の表面にできる、まれなタイプの乳がんです。乳頭やそのまわりの茶色い部分(乳輪)に湿疹(しっしん)に似たかゆみや赤み、かさぶたのような変化が現れます。放置すると、乳管(にゅうかん)とよばれる乳汁の通り道を通って、奥の乳腺組織に広がることがあります。
重要な事実
- 乳頭や乳輪に、かゆみ、赤み、かさぶた、じくじくした症状が現れる。
- 乳がんの一種で、多くの場合、乳管の中に別のがん(乳管内がんや浸潤性乳がん)が隠れています。
- 乳がん全体の約1〜4%と、まれな病気です。
まれな病気です。日本では、乳がん全体のおよそ1%から4%程度とされています。
主に40歳以上の女性に多いですが、男性や若い女性にもごくまれに起こることがあります。
症状
- 突然息苦しくなる
- 胸に強い痛みがある
- 意識がもうろうとする
- ただし、これらはパジェット病の一般的な初期症状ではありません。急な体調変化があれば、ためらわず119番に電話してください。
- ⚠乳頭から突然、多量の出血がある
- ⚠乳房に急にしこりを感じるようになった
- ⚠皮膚が赤く腫れて熱をもち、痛みが強い(感染の疑い)
一般的な症状
- 乳頭や乳輪の赤み
- かゆみ、ヒリヒリする感覚
- 皮膚のかさぶた、ただれ、じくじくした状態
- 乳頭から血や黄色い液体が出る
- 乳頭がへこむ、潰瘍になる(進行した場合)
原因
主な原因
- 乳管(乳汁の通り道)の内側の細胞ががん化し、乳頭の皮膚に沿って広がることが原因と考えられています。
- 多くの場合、乳管の中に「非浸潤性乳管がん(DCIS)」という初期のがん、または「浸潤性乳がん」が同時に存在します。
- 正確な原因はまだ完全には解明されていません。遺伝子の変化やホルモンの影響などが関わるともいわれていますが、だれにでも起こりうる病気です。
リスク要因
- 乳がんにかかったことがある
- 高齢(特に60歳以上)である(ただし、若い女性でも起こります)
- 家族に乳がんの人がいる(遺伝性の場合があります)
- 特定の遺伝子の変化を生まれつき持つ場合(ごくまれ)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 乳頭から突然、大量の出血がある
- 乳房に急にしこりを感じる
- 皮膚が赤く腫れて熱をもち、強い痛みがある(感染の疑い)
定期受診を予約すべき場合:
- 乳頭や乳輪のかゆみ、赤み、かさぶた、ただれが2週間以上続く
- 乳頭から分泌物が続く
- 乳頭の形が変わる、へこむ
- 乳がん検診の結果が気になる
診断
まず医師が問診と診察を行い、乳頭や乳輪の状態を詳しく確認します。必要に応じて、乳がん検診と同じようにマンモグラフィ(乳房をX線で撮影する検査)や超音波(エコー)検査を行います。確定診断のために、皮膚の一部や乳房の組織を採取して調べる「生検(せいけん)」が行われます。
行われる可能性のある検査
- 診察(視診・触診)
- マンモグラフィ(乳房X線検査)
- 乳腺エコー(超音波検査)
- 乳房MRI(磁気共鳴画像)を行うこともあります
- 生検(局所麻酔をして、皮膚や乳房の組織を少量採取し、顕微鏡で調べる)
診察で予想されること
乳腺外来や乳腺専門医のいる病院へ紹介されることが多いです。検査は痛みをともなうこともありますが、短時間で終わります。結果が分かるまで数日かかります。疑問や不安があれば、遠慮なく医師に質問してください。
治療
治療は、パジェット病の範囲や、乳房の奥にがんが隠れているかどうかによって異なります。多くは手術が中心となりますが、がんの種類や進行度に応じて、放射線治療や薬物療法(全身療法)を組み合わせることがあります。治療方針は医師とよく話し合って決めます。
自宅でのセルフケア
- 乳頭の皮膚をこすらない。やさしく洗い、清潔に保つ
- 保湿クリームを医師や薬剤師と相談して使用する
- 症状を隠すために自己判断で市販薬を塗り続けず、まず診察を受ける
- 医師から指示された通院や検査をこまめに受ける
医療治療
薬物療法には、抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬などがありますが、具体的な薬剤名や用法・用量はここではお伝えしません。治療は、がんの性質や患者さんの状態に合わせて、担当医が保険診療で適切な方法を選択します。必ず主治医に相談してください。
手術が検討される場合
パジェット病の治療では、多くの場合、手術が行われます。病変が広い場合は、乳頭と乳輪を含めて切除する「乳房部分切除術」、または乳房をすべて切除する「乳房切除術(マンメクトミー)」が選択されます。手術の範囲は、がんの広がり方や患者さんの希望を尊重して決められます。また、わきの下のリンパ節に転移があるかどうかを調べる手術が行われることもあります。
この病気と共に生きる
治療後は、定期的な通院と自己検診(月に一度、乳房やわきの下を触って変化を確認すること)を続けながら、無理のない生活を送ることが大切です。変化を感じたら、次の受診時に医師へ伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける(喫煙は乳がんのリスクを高める可能性があります)
- 飲酒は適量(日本では1日あたりアルコール20g程度が目安)を超えないようにする
- 十分な睡眠と休息をとる
- ストレスをためすぎない
食事と運動
栄養バランスの良い食事を心がけましょう。特に野菜や果物、全粒穀物を多くとり、脂肪分や加工食品を控えめにすると、全体的な健康に役立ちます。運動は、医師の許可があれば、週に150分程度のウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲で行いましょう。運動はストレス軽減にもつながります。
精神的健康と心の健康
がんと診断されることや手術を受けることは、大きな不安や恐怖をともなうものです。悲しみやつらさ、孤独感を感じることもあるでしょう。それらの感情は自然な反応です。無理に一人で抱え込まず、家族や友人、医療者、専門のカウンセラーに気持ちを話してみましょう。必要に応じて精神保健のサポート(精神科・心療内科や相談窓口)を利用することも大切です。
予防
パジェット病を完全に予防する方法は、まだ分かっていません。乳がん全体にいえることですが、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動、禁煙・節酒などがリスクを下げる可能性はあります。ただし、これらを守っていても発症することがあります。最も大切なのは、早期発見・早期治療です。
ワクチン
現在のところ、パジェット病を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
日本では、乳がん検診が40歳以上の女性を対象に、2年に1回、マンモグラフィによる検診が推奨されています(厚生労働省)。乳房や乳頭・乳輪の変化に気づいたら、検診を待たずに医療機関を受診しましょう。自己触診(乳房を自分で触って確認すること)も、月に1回程度行うことをすすめます。
合併症
治療しない場合
- 乳頭の皮膚の病変が広がり、潰瘍やただれが悪化する
- がんが乳管から乳腺組織の奥へと進み、浸潤性乳がんになる
- わきの下のリンパ節に転移する
- さらに進行すると、骨や肺、肝臓など全身に広がる可能性がある
長期的な見通し
パジェット病は、早期に発見して適切な治療を行えば、治る可能性が高い病気です。特に、乳房の奥にがんがなく、皮膚の変化だけの場合(非浸潤性)は、予後(病気の経過や見通し)は非常に良好です。浸潤性乳がんをともなっていても、多くの方が長期にわたって元気に生活されています。診断されてからも、医療者と協力しながら前向きに治療に取り組み、生活の質を保つことができます。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
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