炎症性乳がん(IBC)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
炎症性乳がん(IBC)は、まれですが進行の速い乳がんで、乳房が赤く腫れて熱を持つなど、炎症のように見えることが特徴です。乳房の皮膚のリンパ管(リンパという液体が流れる細い管)ががん細胞で詰まることでこのような症状が出ます。細菌やウイルスによる感染症ではありません。
重要な事実
- 乳がん全体の約1%から5%ほどを占めるまれなタイプです。
- しこりとして触れるよりも、乳房の赤みや腫れが最初の症状のことが多いです。
- 進行が速いため、早く診断して、できるだけ早く治療を始めることがとても大切です。
日本では乳がん全体の1%から5%ほどとされ、まれながんに当たります。しかし、乳がんそのものは増えており、炎症性乳がんの診断を受ける方もいます。
女性に多く見られますが、男性でも発症することがあります。一般的に40代から60代で診断されることが多いですが、もっと若い方や高齢の方にも起こり得ます。
症状
- 突然の息苦しさ
- 胸の強い痛み
- 血の混じった痰が出る
- 突然の強い頭痛や、片方の手足のまひ・しびれ
- 意識がうすれる
- ⚠乳房が急速に腫れ、赤くなり、熱を持ち、痛みを伴う
- ⚠乳房の皮膚がオレンジの皮のように厚くなってきた
- ⚠乳頭が急にへこむ、あるいは血や液体がにじんでくる
- ⚠症状が数日のうちに悪化する
- ⚠乳房の赤みや腫れに伴って発熱がある
一般的な症状
- 片方の乳房が数日から数週間で急速に腫れて赤くなる
- 乳房の皮膚がオレンジの皮のようにでこぼこして厚くなる(ペオ・ドランジュと呼ばれます)
- 乳房が熱を持ち、触ると温かい
- 乳房の皮膚の少なくとも3分の1以上が赤く見える
- 乳房にしこりが触れないこともある
- 乳房に痛みや重い感じがある
- 乳頭がへこむ、かさぶたができる、ただれる
原因
主な原因
- 炎症性乳がんは、がん細胞が乳房の皮膚のリンパ管を塞ぎ、リンパ液の流れを妨げることで炎症のような見た目を引き起こします。
- 実際の原因はまだ完全にはわかっていませんが、けがや感染が原因ではありません。
リスク要因
- 女性であること
- 年齢(一般的に40歳以上で増える)
- 乳がんの家族歴
- 過去に乳がんになったことがある
- BRCA1やBRCA2などの遺伝子の変化
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 乳房が急に赤く腫れて熱を持ち、痛みがある場合は、数日以内に乳腺外来やかかりつけ医を受診してください。
- 症状が数日で急速に悪化する場合は、すぐに医療機関に連絡しましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- 乳房にしこりや皮膚の変化、乳頭の異常がある場合は、軽い症状でも早めに医師に相談してください。
- 40歳以上の方は、症状がなくても2年に1回の乳がん検診(マンモグラフィ)を受けましょう。
診断
乳がんの専門医による問診と診察のあと、マンモグラフィや乳腺エコー、MRIなどの画像検査、そして皮膚や組織の一部を採取して調べる生検(せん検)を行います。炎症性乳がんではしこりを触れないことも多いため、皮膚の生検がとても重要です。
行われる可能性のある検査
- マンモグラフィ(乳房のX線検査)
- 乳腺エコー(超音波検査)
- 乳房MRI
- 皮膚生検(皮膚の組織を採取して顕微鏡で調べる)
- 針生検(しこりがある場合に、細い針で組織を採取)
- PET-CTやCTなど、転移の有無を調べる画像検査
診察で予想されること
検査は外来で行われることがほとんどです。生検は局所麻酔を使って行うため、痛みは軽いです。結果がわかるまでに1週間前後かかることがあります。もし炎症性乳がんと診断された場合は、医師、看護師、薬剤師など多職種のチームが治療方針を説明し、あなたと一緒に決めていきます。
治療
炎症性乳がんは進行が速いため、診断後できるだけ早く集中的な治療を始めます。多くの場合、最初に抗がん剤治療(化学療法)を行い、その後、手術、放射線治療、ホルモン療法、分子標的治療などを組み合わせて行います。治療法は、がんの種類や広がり、あなたの体の状態に合わせて決められます。
自宅でのセルフケア
- 治療中は十分に休養を取り、体をいたわりましょう。
- 症状の変化や気になることをメモに残し、医療者に伝えましょう。
- 皮膚が敏感になることがあるため、医療者に相談の上で保湿を行いましょう。
- 家族や友人に、家事や通院のサポートを頼んでみましょう。
医療治療
治療には、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療、ホルモン療法、分子標的治療などがあります。どの治療を選ぶかは、がんの検査結果や進行度によって異なります。それぞれに効果と副作用があり、医師と十分に話し合って納得のいく治療を選ぶことが大切です。
手術が検討される場合
多くの場合、抗がん剤治療でがんを小さくしてから乳房をすべて摘出する手術(乳房切除術)が行われます。また、わきの下のリンパ節も取り除くことがあります。手術による見た目の変化については、形成外科医と相談し、乳房再建(乳房を元に近い形に再建すること)を選ぶこともできます。
この病気と共に生きる
炎症性乳がんと診断されたことは、とてもつらい体験です。しかし、治療は進歩しており、多くの方が治療を受けながら生活しています。まずは治療に集中し、無理をせず、体調に合わせて毎日の予定を調整していきましょう。仕事や家事については、職場や家族と相談しながら進めてください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙や飲酒を控えることがすすめられます。
- 医師に確認した上で、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れましょう。
- リラックスできる時間や趣味を大切にしましょう。
- 治療中は感染症にかかりやすくなることがあるので、手洗いやうがいを徹底しましょう。
食事と運動
バランスの良い食事が基本です。野菜や果物、魚や豆類などのたんぱく質を十分にとり、水分をこまめに補給しましょう。運動は、体力が許す範囲で軽いウォーキングなどから始めてください。医師や管理栄養士に相談すると、自分に合った食事や運動を知ることができます。
精神的健康と心の健康
がんと診断されると、不安、悲しみ、怒りなどさまざまな感情が押し寄せるのは自然なことです。つらい気持ちを一人で抱え込まず、家族や友人に話したり、病院の相談窓口を利用したりしましょう。もし自分を傷つけたくなるような気持ちが続く場合は、すぐに医師や看護師、または地域の保健所などに連絡してください。電話で相談できるサービスもあります。
予防
炎症性乳がんには、今のところ決まった予防法はありません。しかし、日頃から自分の乳房を観察し、赤み、腫れ、皮膚の変化などのサインを見逃さないことが早期発見につながります。日本の厚生労働省は、40歳以上の女性に対して2年に1回の乳がん検診(マンモグラフィ)を推奨しています。
検診プログラム
乳がん検診は、症状がない人でも受けることがすすめられています。炎症性乳がんはマンモグラフィだけでは見つけにくいこともあるため、家庭でのセルフチェック(自分で乳房を確認すること)も併せて行い、いつもと違う変化に気づいたらすぐに受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 炎症性乳がんは治療をしないと、数か月のうちに進行し、リンパ節や骨、肝臓、肺などほかの臓器に転移することがあります。
- 皮膚の赤みや腫れが広がるだけでなく、痛みや潰瘍が生じることもあります。
長期的な見通し
炎症性乳がんは進行が速い病気ですが、抗がん剤治療や手術、放射線治療、分子標的治療などを組み合わせることで、治療の成果は改善しています。多くの患者さんが長期にわたって病気とともに生活しています。診断されたからといって希望を失わず、信頼できる医療チームと一緒に治療を続けていくことが大切です。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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