ヌーナン症候群
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ヌーナン症候群は、生まれつき遺伝子の変化があり、体のさまざまな部分に影響を及ぼす病気です。特徴的な顔つき、低身長、心臓の病気などがよく見られます。症状の出方は人によって大きく異なり、ごく軽い場合から治療が必要な場合まであります。
重要な事実
- 遺伝子の変化によって起こる病気です。多くの場合、親に原因なしに突然起こります。
- 心臓の病気、低身長、学習面の課題など、合併症は一人ひとりで異なります。
- 専門的な治療や支援により、多くの方が健康で充実した生活を送れます。
まれな病気ですが、決して極端に少なくはなく、およそ1,000人から2,500人に1人の割合で生まれるとされています。
男の子にも女の子にも、世界中のあらゆる人種で起こります。親がこの病気の場合は、子どもに遺伝する可能性があります。
症状
- 突然の激しい胸の痛み
- 呼吸ができず、言葉が話せない
- 意識を失って呼びかけに反応しない
- 片方の手足が動かない、言葉がしゃべれない
- ⚠いつもより息切れが強くなり、横になっていられない
- ⚠胸の痛みが続く、または何度も起こる
- ⚠高熱が続き、ぐったりしている
- ⚠下痢や吐き気が続き、水分をとれない
一般的な症状
- 広い額、目のすき間が広い、まぶたが下がっているなどの特徴的な顔つき
- 生まれたときから身長・体重が小さく、成長の速度が遅い(低身長)
- 心臓に生まれつきの異常がある(特に肺動脈の狭窄など)
- 首が短い、首の後ろの皮膚にたるみがある
- 胸の骨がでこぼこしている(漏斗胸、鳩胸)
- 血液が出にくい・出血しやすいなどの血液の異常
子供の症状
- 哺乳がうまくできず、体重が増えにくい
- 首の筋肉の力が弱く、首がすわるのが遅い
- 歩き始める、言葉を話すなどの発達がゆっくり
- 聞こえにくさや、見えにくさを伴うことがある
高齢者の症状
- 心臓の弁の変化によって、動悸や息切れが目立つことがある
- 筋力の低下や骨粗しょう症が進みやすくなる
- 難聴が進む、視力の低下を感じることがある
- 高血圧や脂質異常症など生活習慣病のリスクが高まりやすい
原因
主な原因
- 「PTPN11」など、特定の遺伝子に変化(変異)があることが原因です。
- 親から受け継ぐ場合と、親に原因がなく精子や卵子の段階で起こる場合があります。
リスク要因
- この病気を持つ親から子どもに遺伝する可能性はあります。ただし、多くの場合は家族に同じ病気の人がいない突然変異ですので、「原因に心当たりがない」と心配する必要はありません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 動悸(どきどき)や息切れが急に悪くなった
- 胸の痛みや圧迫感がある
- めまいや失神を起こしたことがある
- 感染症が重度または繰り返している
定期受診を予約すべき場合:
- 定期的な心臓の検査(心エコー、心電図)を受けている
- 成長や発達の気になることがある
- 聴力や視力の低下に気づいた
- 妊娠を計画している、または妊活に不安がある
- 学校や職場で体のことで困ったことがある
診断
診察と、顔つきや体の特徴の確認が基本です。心臓の検査や成長の評価を行い、必要に応じて遺伝子検査を行います。遺伝子検査は必ずしも全員に必要ではなく、診断が難しい場合に検討されます。
行われる可能性のある検査
- 体の診察(顔つき、首、胸、手足の形、背骨の状態)
- 心臓の超音波検査(心エコー)と心電図
- 身長や体重を繰り返し測る成長の評価
- 聴力検査と視力検査
- 血液を使った遺伝子検査
- 心臓や血管の状態を詳しく見る画像検査(CTやMRIなど)
診察で予想されること
診断は多くの場合、外来で行われます。複数回の通院でデータをまとめ、遺伝子検査の結果は専門の医師か遺伝カウンセラーから説明があります。結果を聞く前に、心配なことや知りたいことを紙に書いて持っていくとよいでしょう。
治療
ヌーナン症候群では、症状は人それぞれなので、治療も個人の状態に合わせて組み立てます。基本的には、心臓の専門医、小児科医、整形外科医、発達支援の専門家などが連携して行うチーム医療になります。病気自体を完全に治す方法はまだありませんが、各症状に応じた治療で生活の質を大きく高めることができます。
自宅でのセルフケア
- 毎日の健康状態(息切れ、疲れ、むくみなど)の変化に気を配る
- 心臓の問題がある場合は、激しい運動を避け、医師の許可した範囲で体を動かす
- 歯科治療の前に、出血しやすさを医師に伝える
- 学校や職場に必要な配慮を求め、無理をしない
医療治療
低身長に対しては成長ホルモン治療を行うことがあり、心臓の弁や血管の異常に対しては症状を抑える薬や手術などが検討されます。血液が固まりにくい場合は、外科的な処置の前にそのことを伝えます。すべての治療は、担当医と十分に話し合い、納得したうえで受けることが大切です。
手術が検討される場合
心臓の病気(特に肺動脈の狭窄など)で血流が悪い場合や、胸の変形が強い場合、脚や背骨の変形が日常生活に影響する場合は手術が検討されます。手術が必要かどうかは、症状の重さと年齢、からだの成長に合わせて専門医が判断します。
この病気と共に生きる
症状が軽ければ、多くの方が通常の学校生活や仕事をし、結婚や出産も含めて普通の人生を送ることができます。自分の体の特徴を理解し、無理をしすぎないこと、必要な治療や検査を続けることが大切です。疲れやすいと感じたら、休息を優先しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 禁煙を心がける(本人も家族も)
- 節酒・規則正しい食事で生活習慣病を予防する
- ストレスをため込まず、信頼できる人に話す
- 定期的に血圧や体重を測る
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、心不全がある場合は塩分を控えるよう医師から指示されることがあります。運動は、ウォーキングや水泳など、息がはずむ程度のものを週に数回行うとよいでしょう。ただし、心臓や骨の状態によっては運動制限があるため、必ず主治医の確認を受けてから始めてください。
精神的健康と心の健康
見た目のことで悩んだり、学校や職場で周囲と違うことに不安を感じることがあるかもしれません。そのようなときは、ひとりで悩まず、家族や学校の先生、カウンセラーに相談してください。特に自分を傷つけたい気持ちや、生きていてつらいという気持ちが強い場合は、すぐに信頼できる人か医療機関に連絡し、ひとりで抱えないでください。日本では、厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」など、電話で無料・匿名で相談できる窓口があります。
予防
遺伝子の変化が原因のため、いまのところ予防する方法はありません。しかし、定期的な健康チェックと合併症の早期発見・治療によって、症状の進行や重度な合併症を防ぐことができます。
ワクチン
肺炎やインフルエンザなどの感染症は、心臓に負担をかけることがあります。定期接種のワクチンは、かかりつけ医と相談しながら、決められた時期に受けることが大切です。
検診プログラム
新生児期には心臓の病気がないか、心臓超音波検査などで調べることが一般的です。また、定期的に聴力・視力・歯科の健診を受けることで、早期に対応できます。
合併症
治療しない場合
- 心臓の弁の狭窄や閉鎖不全が進み、心不全や不整脈を起こすことがある
- 身長の伸びが止まり、最終身長が低くなる
- 血液が固まりにくい状態がある場合、けがや手術のときに出血が止まりにくくなる
- 発達の遅れへの支援がないと、学習や人間関係で困難が続く
長期的な見通し
心臓の状態が良好で適切な治療を受けている場合、平均的な寿命と大きな違いはないという報告もあります。症状が重い場合でも、小児期からの専門的な治療により、成人期には自立した生活を送ることができる方が増えています。医学は進歩しており、希望を持って治療や支援を続けることが大切です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。