仮性球麻痺(PBA)と感情失禁
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳の障害が原因で、感情とは別に笑ったり泣いたりするコントロールができなくなる状態です。悲しくないのに涙が出る、うれしくないのに笑いが止まらないといった「感情失禁」の症状が現れます。
重要な事実
- 脳梗塞や認知症など、脳や神経の病気に伴って起こることがあります。
- 本人の気分と一致しないことが多く、自分の意志で止められません。
- 医療機関で相談することで、症状を和らげる方法があります。
まれではありませんが、正しく診断されにくいことがあります。脳や神経に障害のある人では、数%から数十%という報告もあります。
脳卒中(脳梗塞・脳出血)、多発性硬化症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、認知症、頭部外傷などの神経の病気のあとに起こることがあります。症状は中高年以降に目立ちますが、小児でも起こり得ます。
症状
- 突然の片側の麻痺・しびれ
- ろれつが回らない、言葉がでない
- 顔のゆがみ
- 激しい頭痛
- 意識がぼんやりする
- これらの症状が急に出た場合は脳卒中の可能性があり、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- ⚠泣き笑いの発作に加えて、新たに体の麻痺や言葉の問題が出た場合
- ⚠発作のために食事や寝込むことが続き、日常生活が大きく妨げられる場合
- ⚠家族や周囲が対応に困って疲れ果ててしまった場合
一般的な症状
- 急に泣き出してしまう(泣き続ける)
- 突然笑い出して止まらない
- 場面に合わないほど激しい泣き笑いが出る
- 自分ではコントロールしづらい
- 発作の間は普通の感情に戻れる
- 職場や人前で恥ずかしい思いをすることがある
子供の症状
- 脳の病気やけがをした後に、突然の泣き・笑いの発作が見られることがあります。
- 本人は自分で止められなず、恥ずかしさや不安を感じることもあります。
- 周囲の大人が「わざと」と誤解しないことが大切です。
高齢者の症状
- 脳卒中や認知症に伴って起こりやすいです。
- 介護中に泣いたり笑ったりが頻繁に起こり、介護者の負担が増えることがあります。
- 感情の起伏が激しくなるために、うつ病と間違われることもあります。
原因
主な原因
- 脳の複数の領域をつなぐ神経の経路が傷つくことで、感情の調節に失敗します。
- 代表的な原因は、脳梗塞や脳出血などの脳卒中です。
- 多発性硬化症、ALS、認知症、パーキンソン病、頭部外傷などでも起こります。
リスク要因
- 脳卒中の既往
- 神経変性疾患(認知症やALSなど)
- 多発性硬化症
- 頭部外傷
- 神経系の手術後
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 新たに突然、ろれつ不良・顔面麻痺・片腕の脱力・激しい頭痛など、脳卒中のような症状が現れた場合は、すぐに119番に電話してください。
- 発作が強く、呼吸が苦しい、転んでケガをした場合も緊急対応が必要です。
定期受診を予約すべき場合:
- 泣き笑いの発作が続き、仕事や人間関係に支障がある場合。
- 周囲の人が「性格が変わった」と心配する場合。
- 基礎疾患(脳卒中や認知症など)を持つ人で、新しい症状の出現に気づいた場合。
- 市販薬や自分流の対処で不安が続く場合。
診断
医師が詳しい問診と神経診察を行い、症状のパターンを確認します。PBAを直接示す血液検査はありませんが、他の病気(うつ病や脳卒中など)を除外するために検査を組み合わせます。
行われる可能性のある検査
- 脳のMRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピューター断層撮影)などの画像検査
- 神経学的診察(反射・運動・感覚の確認)
- 症状の頻度や強さを評価する質問票
- うつ病や他の感情障害と区別するための評価
診察で予想されること
診察は外来で可能です。初回はいつから始まったか、どのくらい続くか、きっかけや気分との関係、持っている病気などを聞かれます。必要に応じて画像検査が行われ、結果は数日から数週間後に説明されます。
治療
治療の目標は、感情のふき出しを減らし、生活の質を取り戻すことです。原因となる病気への治療と、発作そのものへの対応の両方を進めます。
自宅でのセルフケア
- 発作が起きたら、慌てずにゆっくり深呼吸をする。
- 周囲の人に「病気の症状」だと説明し、理解と協力を求める。
- 発作の引き金となる睡眠不足・過労・強いストレスを避ける。
- 発作を日記やアプリに記録し、医師と共有する。
- 無理に感情を抑え込もうとせず、発作が終わるのを待つ。
医療治療
PBAの症状を抑えるために、医師が薬を処方することがあります。気分の安定や神経の伝達に働きかける薬が使われますが、薬の種類や量は必ず医師が個別に判断します。市販薬では対応できません。自分で服用を止めたり、増やしたりすることは避けてください。
この病気と共に生きる
発作は一時的で、意図的ではないことを自分のペースで周囲に説明できると安心です。職場や家庭であらかじめ「こういうことがあります」と伝えておくと、誤解を減らせます。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と休息をとる
- 飲酒やカフェインのとり過ぎに注意する
- ストレスをためない工夫(趣味・入浴・軽い運動)
- 発作のパターンを記録して、医師と一緒に管理する
食事と運動
バランスのよい食事と、塩分のとり過ぎに気をつけた生活は、脳卒中や関連の認知症の予防に役立ちます。できる範囲で軽い有酸素運動を続けると、気分の安定にもつながります。
精神的健康と心の健康
周囲の視線や「変だ」と思われることへの不安から、うつ気分や引きこもりが生じることがあります。この症状は病気のせいであり、自分を責めないことが大切です。つらい気持ちがあるときは、医師や公認心理師などの専門家に話しましょう。
予防
PBAそのものを完全に予防することは難しいですが、原因となる脳卒中を予防すること(血圧管理、禁煙、健康的な食事、運動)はとても大切です。
合併症
治療しない場合
- 周囲の誤解を招き、人間関係がぎくしゃくする。
- 仕事・学校・社会生活に支障が出る。
- うつ病や不安症を併発しやすくなる。
- 介護する家族のストレスが大きくなり、家庭内の安全が損なわれることもある。
長期的な見通し
PBAは治療が可能な症状です。適切な理解とケアによって、多くの人の発作は軽減し、生活の質も確実に改善することが報告されています。専門家と連携しながら無理なく続けることが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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