ハンター症候群(ムコ多糖症II型)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ハンター症候群は、体内で特定の糖(ムコ多糖)を分解するために必要な酵素が生まれつき不足しているため、糖が細胞の中にたまっていき、全身の臓器や骨、神経に障害を起こす、非常にまれな遺伝性の病気です。正式にはムコ多糖症II型といいます。
重要な事実
- ほとんどが男の子に発症し、女の子では極めてまれです。
- 症状は人によって大きく異なり、軽いものから重いものまで幅があります。
- 進行性の病気ですが、治療や支援によって症状を和らげ、生活の質を保つことができます。
非常にまれな病気で、日本では男の子のおおよそ10万人に1人程度の割合で発症すると考えられています。
主に男の子に発症します。軽いタイプでは成人まで生存し、妊娠可能な方もいますが、多くは幼児期から学童期に診断されます。
症状
- 呼吸が止まりそうになるほど息苦しい
- 胸の強い痛み
- 突然の意識の低下
- けいれんが長く続く
- ⚠激しい頭痛
- ⚠腹部の強い痛みや膨らみ
- ⚠突然の視力の低下
- ⚠けがなどによる激しい痛みや出血
一般的な症状
- 顔つきの粗さ(がっしりした顔立ち)
- 頭が大きい
- 肝臓や脾臓の腫れ
- 臍や鼠径のヘルニア
- 関節のこわばり
- 反復する中耳炎や呼吸器感染症
- いびきや呼吸のしにくさ
- 心臓の弁の異常など心臓の問題
- 下痢などの消化器症状
子供の症状
- 成長の遅れ
- 言葉の発達の遅れ
- 多動や落ち着きのなさなどの行動の特徴
- 骨や関節の変形
- 手のこわばり
- 進行に伴う学習の難しさ
高齢者の症状
- 軽症の場合、成人になってから関節のこわばりや痛みがめだつ
- 指のしびれ(手根管症候群)
- 心臓の弁の異常による動悸や息切れ
原因
主な原因
- X染色体にある遺伝子の異常によって、ムコ多糖を分解する酵素の働きが低下または消失することで起こります。
- この遺伝子は母親から受け継がれることが多く、男の子に症状が出ます。
リスク要因
- 家族にハンター症候群の患者がいる場合、男児に発症する可能性が高くなります。
- 母方が保因者(症状はないが遺伝子異常を持つ)の場合、その息子に遺伝する確率は50%です。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸の苦しさ、胸痛、激しい腹痛など、生命に関わりそうな症状がある場合は、すぐに救急(119番)を受けてください。
定期受診を予約すべき場合:
- お子さんの発育の遅れや顔つきの特徴などが気になったら、まずはかかりつけの小児科医に相談してください。
診断
尿検査でムコ多糖の量を調べたり、血液や皮膚の細胞を使って酵素の働きを測定したり、遺伝子検査を行ったりすることで診断されます。
行われる可能性のある検査
- 尿中のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の測定
- 血液や皮膚の線維芽細胞での酵素活性の測定
- 遺伝子検査(X染色体上のIDS遺伝子の変異)
診察で予想されること
診断がついたら、心臓、目、耳、骨、神経など全身の状態を詳しく調べるための検査をすすめられます。結果に基づいて、かかりつけ医と専門医が一緒に治療・支援の計画を立てます。
治療
現在のところ、この病気を完全に治す治療法はありませんが、原因となる酵素の不足を補う治療や、症状に合わせた対症療法、リハビリテーションなどを組み合わせることで、症状の進行を遅らせ、生活の質を高めることができます。
自宅でのセルフケア
- 理学療法などのリハビリテーションで関節や筋肉の機能を保つ
- 学校や家庭での学習・遊びの環境を整える
- 感染症を予防するための手洗い・うがいなどの毎日の習慣
- 痰が絡みやすい場合は、水分を十分にとり、部屋の湿度を保つ
医療治療
主な治療として、不足している酵素を静脈から投与する酵素補充療法があります。また、造血幹細胞移植(骨髄移植など)という方法が選択されることもあります。そのほか、症状に応じて、呼吸や心臓、聴覚などの専門的な治療が行われます。治療の選択は、年齢や症状、重症度によって専門医と話し合って決めます。
手術が検討される場合
ヘルニアの修復、中耳炎による鼓膜へのチューブ挿入、気道の確保を目的とした手術、心臓の弁の手術、脊髄の圧迫を解除する手術などが必要になることがあります。
この病気と共に生きる
定期的に専門医の診察を受け、症状の変化に注意しながら暮らしましょう。呼吸や心臓の状態をみてもらい、運動や活動の程度を調整することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 理学療法士や作業療法士と相談しながら、無理のない運動を続ける
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 感染症を防ぐために、予防接種をきちんと受ける
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、栄養バランスのよい食事をとり、飲み込みに問題がある場合は食事の形態に注意しましょう。運動は、関節や心臓への負担を考えて、医師や療法士の指導のもとで行ってください。
精神的健康と心の健康
慢性の病気と向き合うことは、本人や家族にとって心理的に負担が大きいこともあります。つらい気持ちをひとりで抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談しましょう。心のケアも治療の一部です。
予防
遺伝子の異常によって起こる病気のため、現在のところ発症そのものを予防する方法はありません。しかし、遺伝カウンセリングを受けることで、再発のリスクや検査について理解を深めることができます。
ワクチン
ハンター症候群を直接予防するワクチンはありませんが、呼吸器感染症を防ぐために、かかりつけ医と相談の上で、定期接種や任意接種を検討するとよいでしょう。
検診プログラム
日本では、ハンター症候群を対象にした新生児スクリーニング検査はまだ一般的ではありません。しかし、家族歴がある場合などには、出生前診断や出生後の早期診断が可能です。これらについては、専門医や遺伝カウンセラーに相談してください。
合併症
治療しない場合
- 心臓の弁膜症や心肥大による心不全
- 呼吸障害(気道の狭さや睡眠時無呼吸など)
- 進行に伴う神経の障害や知的障害
- 関節や骨の変形による機能障害
- 感染症にかかりやすくなる
長期的な見通し
治療や支援の技術は進んでいます。早期に診断され、適切な治療を続けることで、症状の進行を遅らせ、生活の質を保つことができます。病気の重症度は人によって異なりますが、希望を持って医療チームとともに歩んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
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