遺伝性代謝疾患(いでんしせいたいしっかん)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
遺伝性代謝疾患とは、親から受け継いだ遺伝子の変化により、食べ物をエネルギーに変える「代謝」の仕組みがうまく働かない病気の総称です。体に必要な物質が作られなかったり、不要な物質がたまってしまったりすることで、さまざまな症状が現れます。
重要な事実
- 多くの遺伝性代謝疾患は、ひとつひとつは非常にまれです。
- 症状が現れるのは赤ちゃんのころが多い一方、大人になってから気づくこともあります。
- 新生児マススクリーニングなどで早期に見つかれば、適切な治療により進行を抑えられます。
遺伝性代謝疾患は1つの病気としてはまれで、すべてのタイプを合わせても、おおよそ数千人から数万人に1人とされています。
男女を問わず、どの家庭にも起こりうるものです。家族に同じ病気や似た症状を持つ人がいる場合、リスクが高くなりますが、初めて発症するケースも少なくありません。
症状
- けいれんが止まらない
- 呼びかけに反応しない(意識がない)
- 呼吸が苦しそう
- 激しいおう吐が続いて水分がとれない
- このような症状があれば、すぐに119番に連絡してください。
- ⚠いつもよりひどいぐったり感がある
- ⚠水分をまったく受けつけない
- ⚠発熱や下痢などで体調が大きくくずれた
- ⚠普段と様子が大きく異なる
- ⚠このような場合、同じ日中に医療機関へ相談してください。
一般的な症状
- だるさや倦怠感が続く
- 食欲がない
- 吐き気や嘔吐
- 体重が増えない・減ってしまう
- 意識がぼんやりする
子供の症状
- 哺乳力が弱い
- 嘔吐や下痢をくり返す
- 発育(身長・体重・運動)が遅れる
- けいれんする
- 体や息、尿などがいつもと違うにおい
高齢者の症状
- 慢性的な疲労感
- 筋肉痛やけいれん
- 運動や食事のあとに体調をくずしやすい
- 気分の落ち込みや集中力の低下
原因
主な原因
- 遺伝子の変化(変異)によって、体の中の酵素やタンパク質の働きが十分でなくなることが原因です。
- 多くの場合、両親から特定の遺伝子を受け継ぐことで発症しますが、両親自身は健康で気づかないこともあります。
リスク要因
- 家族に同じ病気を持つ人がいる
- 両親が病気の原因となる遺伝子を持っている場合、子どもに受け継がれる可能性が高まります。
- 両親が血縁関係にある場合は、一部の遺伝性疾患のリスクが高くなるといわれています。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に体調が悪くなった場合
- 今までの治療で説明のなかった症状が出た場合
- いつもと違う強い症状がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 学校や職場の健康診断で異常を指摘された
- 慢性的なだるさや発育の遅れが気になる
- 家族歴があり、遺伝について相談したい
診断
医師は、お話をうかがったうえで身体診察を行い、必要に応じて血液検査や尿検査などを行います。診断が難しい場合や、遺伝子検査が必要な場合は、専門の医療機関を紹介されることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(アミノ酸や有機酸の測定など)
- 遺伝子検査
- 酵素活性の測定(必要な時)
診察で予想されること
採血や尿検査は、通常の検査と同じように行われます。結果が出るまでに時間がかかることがあり、遺伝子検査では専門的なカウンセリングも行われます。専門医から結果と今後の方針について、わかりやすく説明されます。
治療
治療の基本は、不足している物質を補い、過剰にたまった物質を減らして、体内のバランスを整えることです。多くの場合、食事療法(特別な食事やミルク)が中心となり、症状に合わせて薬を使うこともあります。何より大切なのは、診断を受けたら専門医の指導のもとで治療を続けることです。
自宅でのセルフケア
- 医師や管理栄養士の指示に従って、毎日の食事を工夫する
- 体調の変化を記録し、診察のときに伝える
- 無理な断食や極端な食事制限はしない
医療治療
病気のタイプによって補充する栄養素や薬剤が異なります。特定のビタミンやアミノ酸の製剤、特殊な食品などが使われることがありますが、どの治療が適するかは一人ひとり異なります。必ず担当医や病院の管理栄養士の指示に従い、自己判断で増やしたり、やめたりしないでください。
手術が検討される場合
遺伝性代謝疾患そのものに対して手術が行われることはまれですが、合併症に対して外科的治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
一度つき合い方がわかれば、治療を続けながら学校や仕事などいつもの生活を送ることができます。継続的な通院と自己管理が、元気な毎日をつくる鍵です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを保つ
- 睡眠を十分にとる
- ストレスをためすぎない
- 感染症などで体調をくずさないように生活する
食事と運動
食事は病気のタイプによって注意点が異なります。医師や管理栄養士から示された食事計画に沿うことが基本です。運動は体調の良いときに行い、無理をしすぎないようにしましょう。
精神的健康と心の健康
慢性の病気を抱えながら生活することは、ときに不安や孤独を感じることもあります。そうした気持ちは自然なものです。家族や友人だけでなく、医師、看護師、心理士など、まわりの専門家に遠慮なく相談してください。
予防
遺伝性代謝疾患は遺伝子が原因のため、発症そのものを予防することは難しいのが現状です。しかし、新生児マススクリーニングにより早期に発見できれば、重い症状を防いだり、軽くしたりすることが可能です。妊娠を考えている方は、医療機関で遺伝について相談することもできます。
ワクチン
この病気を直接予防するワクチンはありませんが、感染症をきっかけに代謝のバランスがくずれることがあります。一般的な予防接種については、かかりつけ医と相談のうえ、接種時期を決めることをおすすめします。
検診プログラム
日本では、厚生労働省の指針に基づき、生後まもない赤ちゃんを対象にした先天性代謝異常症のスクリーニング検査が行われています。出生後の入院中などに採血し、早期発見に役立てられています。
合併症
治療しない場合
- けいれんや意識障害がくり返す
- 発達の遅れや知的障害が残ることがある
- 肝臓などの内臓に障害が出ることがある
長期的な見通し
新生児マススクリーニングの普及や治療の進歩により、遺伝性代謝疾患を持つ方の多くが日常生活を送れるようになっています。たとえ診断を受けても、早くからきちんと管理することで、充実した人生を送ることができるのです。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。