原発性卵巣機能不全(POI)— 40歳前に卵巣の働きが低下する病気
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
原発性卵巣機能不全(POI)は、40歳より前に卵巣の働きが弱くなり、月経が止まったり不規則になったりする状態です。以前は「早期閉経」とも呼ばれていましたが、卵巣の働きが一時的に戻ることもあるため、現在はこの名前が使われます。女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで、閉経のような症状があらわれることがあります。
重要な事実
- 40歳より前に卵巣の働きが低下する病気です。
- 月経が止まる・不規則になる・妊娠しにくくなるなどの影響があります。
- 女性ホルモンが減るため、骨や心臓の健康に長期的な注意が必要です。
- 原因がはっきりしないことも多いですが、治療やサポートで症状を和らげられます。
まれな病気ではありませんが、決して多くはありません。40歳未満の女性のおよそ100人に1人くらいの割合で見られます。
主に40歳未満の女性に見られます。10代で初めての月経が来ない場合や、20〜30代で月経が止まって気づくことが多いです。子どもを産める年齢の女性なら誰でも発症する可能性があります。
症状
- 突然の激しい下腹部痛
- 大量の性器出血(1時間にナプキンが1枚以上ぬれるくらい)
- めまいや意識がもうろうとする症状
- ⚠これまで順調だった月経が突然止まり、妊娠の可能性がない場合
- ⚠強い腹痛が続く、または悪化する場合
- ⚠大量の出血がある場合
- ⚠自分を傷つけたい気持ちがある場合
一般的な症状
- 月経が3か月以上止まる(妊娠以外の理由で)
- 月経の回数が少なくなる、または不規則になる
- ほてりや寝汗(のぼせ)
- 腟の乾燥や性交時の痛み
- 気分の落ち込みや不安
- 眠りにくい、疲れやすい
- 集中力の低下や物忘れ
- 性欲(リビドー)の低下
子供の症状
- 15歳になっても初めての月経(初経)がない
- 乳房の発育や体型の変化など思春期の兆候がなかなか現れない
- 思春期の進行が遅い、または止まってしまう
高齢者の症状
- 閉経後の女性と同じような症状(ほてり、寝汗、腟の乾燥)が突然あらわれることがあります
- 骨密度の低下が進みやすく、骨折しやすくなることがあります
- 長期間ホルモンが低下したままだと、心血管系のリスクにも注意が必要です
原因
主な原因
- 原因がはっきりしないこと(特発性)が最も多いと言われています
- 染色体や遺伝子の異常(ターナー症候群やFMR1遺伝子の異常など)
- 自己免疫疾患(体の免疫が自分自身の卵巣を攻撃してしまうこと)
- 抗がん剤治療や放射線治療
- 卵巣の手術による影響
リスク要因
- 家族に原発性卵巣機能不全や早期閉経の人がいる
- 自己免疫疾患(甲状腺疾患など)を持っている
- 卵巣に影響するがん治療を受けたことがある
- 卵巣の手術歴がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい腹痛や大量の性器出血がある場合
- 自分を傷つけたい気持ちがあり、一人で抱え込んでいる場合
定期受診を予約すべき場合:
- 月経が3か月以上止まっている
- ほてりや寝汗が続く
- 妊娠を希望しているがなかなか妊娠しない
- 思春期の成長や月経の開始が遅い
- 気分の落ち込みが続く
診断
問診と採血で卵巣の働きを調べます。医師が最終的に判断しますが、40歳未満で月経が止まり、血液検査で卵胞刺激ホルモン(FSH)という値が高くなり、エストロゲンという女性ホルモンが低い場合に診断されることが多いです。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(女性ホルモンやFSHなどの値を調べます)
- 問診(月経の状態や症状、家族歴、治療歴など)
- 骨密度検査(骨が弱くなっていないか確認します)
- 染色体や遺伝子の検査(原因を調べるために勧められることがあります)
- 超音波検査(卵巣や子宮の状態を確認します)
診察で予想されること
診断までに時間がかかることがあります。症状がほかの病気に似ているため、何度か通院して血液検査を繰り返すこともあります。心配なことや妊娠の希望がある場合は、遠慮なく医師に伝えましょう。
治療
治療の目的は、不足している女性ホルモンを補い、症状を和らげることと、長期的な健康を守ることです。治療法は年齢や妊娠の希望によって変わります。医師とよく話し合って決めましょう。
自宅でのセルフケア
- カルシウムとビタミンDを十分にとる(乳製品、小魚、緑黄色野菜など)
- 骨を強くするための運動(ウォーキングや筋力トレーニングなど)
- 禁煙する
- ほてりや寝汗がつらいときは、重ね着や冷感グッズを活用する
- ストレスをためこまず、信頼できる人に話す
医療治療
医師は、不足しているホルモンを補う「ホルモン補充療法」を勧めることがあります。これは、症状を和らげるだけでなく、骨や心臓の健康を守るためにも使われます。どの治療法が合うかは、年齢や健康状態によって異なります。妊娠を希望する場合は、専門の医師(生殖医療専門医)に相談し、体外受精(卵子提供を含む)などの選択肢について説明を受けることができます。薬の種類や使用法は必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
卵巣機能不全そのものを手術で治すことはありません。ただし、別の病気(卵巣腫瘍など)で手術が行われた結果として、この状態になることがあります。
この病気と共に生きる
この病気は一生付き合っていくことになるかもしれませんが、上手くつきあっていく方法はたくさんあります。定期的に医師のフォローアップを受け、骨や心臓の健康に気をつけることで、元気に暮らすことができます。
生活習慣のアドバイス
- 骨を強くする運動を習慣にする
- バランスのよい食事を心がける
- アルコールはほどほどにする
- 禁煙する
- 睡眠をしっかりとる
- 気分がつらいときは早めに相談する
食事と運動
骨や心臓の健康を保つために、カルシウムとビタミンDを意識してとりましょう。牛乳・ヨーグルト・小魚・豆腐・緑黄色野菜などがおすすめです。運動は、ウォーキングや階段の上り下りなど、骨に軽く負荷がかかる運動を週に数回行うとよいと言われています。激しすぎない範囲で、続けられるものを選びましょう。
精神的健康と心の健康
妊娠や月経に関する知らせは、悲しみや喪失感、不安など、さまざまな感情を引き起こすことがあります。自分の気持ちを否定せず、パートナーや家族、友達に話してみてください。必要に応じて、カウンセラーや心の健康を支援する専門家に相談することも大切です。気分の落ち込みが長く続くときは、早めに医療機関に相談しましょう。
予防
現時点では、原発性卵巣機能不全を確実に予防する方法はありません。ただし、がん治療などで卵巣の機能が低下しそうな場合は、治療前に卵子や卵巣組織を凍結保存する「妊よう性温存」という選択肢があります。将来子どもを持ちたい可能性がある場合は、治療前に医師に相談しましょう。
検診プログラム
原発性卵巣機能不全のための特別な検診はありませんが、月経が不規則な場合や気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 骨密度が低下し、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まる
- 心血管疾患(心臓病や脳卒中)のリスクが高まる
- 腟の乾燥や萎縮による不快感、性交時の痛み
- 妊娠しにくくなる
- 気分の落ち込みや不安が続くことがある
長期的な見通し
原発性卵巣機能不全は、人生の多くの面に影響を与える病気ですが、適切な治療とサポートを受けることで、多くの女性が健康で活動的に暮らしています。症状を和らげながら、骨や心臓の健康を守ることができます。将来のことを不安に思うのは自然なことですが、医師と一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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