原発性側索硬化症(PLS)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
原発性側索硬化症(げんぱつせいそくさくこうかしょう、PLS)は、脳から脊髄を通って筋肉に動きの指令を伝える神経が、ゆっくりと傷ついていく、とてもまれな病気です。その結果、主に脚の筋肉がこわばったり、力が入りにくくなったりします。けがや感染でうつる病気ではなく、進行は年単位でゆっくりです。
重要な事実
- 筋肉の動きをコントロールする神経が少しずつ機能しなくなる病気です。
- 最初は足のこわばりや歩きにくさから始まることが多いです。
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)と似ていますが、経過や症状の広がりが異なり、PLSのほうが進行が遅いとされています。
非常にまれな病気です。正確な患者数はわかっていませんが、難病指定の対象となるほど、一般にはあまり見られない病気です。
多くは40歳から60歳の間に症状が始まります。男性にやや多い傾向があるという報告がありますが、どの年齢でも起こり得ます。
症状
- 突然、ろれつが回らない、片方の手足に力が入らないなど、脳卒中を疑う症状が出た場合は、すぐに119番に電話してください。
- 呼吸が苦しくて息ができない場合は、すぐに119番に電話してください。
- 飲み込みがまったくできず、よだれが止まらない場合は、すぐに119番に電話してください。
- 意識がもうろうとする場合は、すぐに119番に電話してください。
- ⚠転倒して強い痛みがあり、動けない場合は、すぐに医療機関へ連絡してください。
- ⚠1日以上、水分や食事がとれない場合は、早めに受診してください。
- ⚠足の力が急に入らなくなり、歩けなくなった場合は、その日に医療機関へ相談してください。
- ⚠筋肉の強いけいれんが続く場合は、早めの受診をおすすめします。
一般的な症状
- 歩くときに脚がこわばる、つまずきやすい
- 脚の力が入りにくい、筋肉が痙縮(けいしゅく)する
- バランスを取りにくい
- 少しの段差を上がるのがつらい
- 進行すると、腕のこわばりや、話す・飲み込む機能に影響が出る場合がある
原因
主な原因
- 原因ははっきりとはわかっていません。筋肉へ指令を伝える「上運動ニューロン」と呼ばれる神経細胞が、何らかの理由で徐々に傷ついていくと考えられています。
- 大部分は家族に同じ病気がいない「孤発性」ですが、きわめてまれに遺伝が関係する家系が報告されています。
- 感染やけが、生活習慣が直接の原因になるという証拠はありません。
リスク要因
- 年齢(40~60代に多い)
- ごくまれですが、家族歴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に筋力が落ちて歩けない場合は、すぐに受診してください。
- 呼吸がしにくい場合は、その日のうちに受診してください。
- 顔や体の一部が突然動かせない場合は、すぐに救急車を呼んでください。
定期受診を予約すべき場合:
- 脚のこわばりや歩きにくさが続く場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
- つまずいたり、転んだりすることが増えた場合は、早めに受診しましょう。
- 話しにくさや飲み込みにくさを感じる場合は、神経内科の受診を検討しましょう。
診断
神経内科の専門医が問診や神経の診察を行い、ほかの病気(脊髄の圧迫、多発性硬化症、ALSなど)を除外しながら診断を進めます。症状がゆっくり進むため、診断確定までに時間がかかることがあります。
行われる可能性のある検査
- 神経の伝わり方を調べる「神経伝導検査」
- 筋肉の小さな電気の動きを調べる「針筋電図」
- 脳や脊髄の状態を詳しく見る「MRI」
- ほかの病気を除外するための「血液検査」
- 必要に応じて行う「腰椎穿刺(髄液検査)」
診察で予想されること
診断までに数か月から数年かかることもあります。医師は経過を見ながら、症状の変化を慎重に確認します。焦らず、通院を続けることが大切です。
治療
現在、PLSを根本的に治す薬や治療法はありません。しかし、症状に合わせたリハビリや薬物療法、生活の工夫によって、進行を遅らせたり、苦痛を和らげたりすることが期待できます。
自宅でのセルフケア
- 毎日無理のない範囲でストレッチを行い、筋肉のこわばりをやわらげる
- 家の中の段差やじゅうたんの端など、転倒のリスクを取り除く
- 杖や歩行器などの用具を上手に使い、安全性を高める
- 疲れを感じたら早めに休息をとる
- 話しにくさがある場合は、ジェスチャーやメモなど伝え方を工夫する
医療治療
症状を和らげる目的で、筋肉のこわばりを改善する薬などが処方されることがあります。薬の種類や量は、必ず医師が個別に判断します。また、理学療法士による運動療法、言語聴覚士によるコミュニケーションや飲み込みのリハビリも行われます。自己判断で薬をやめたり市販薬を使ったりせず、医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
ふつう、手術は行いません。ただし、飲み込みの機能が低下して食事が難しい場合には、胃ろう(お腹に直接栄養を送るための小さな管)を設置することを検討する場合があります。これも担当医や栄養士と十分相談したうえで決める大切な選択です。
この病気と共に生きる
PLSは進行がゆっくりなので、診断後も長い間、自分らしい生活を続けることができます。「できないこと」に注目するより、「今できること」を見つけて、無理のない毎日のリズムを作っていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- リハビリを日課にして、できるだけ筋肉の働きを保つ
- 家族や友人と一緒に過ごす時間を大切にする
- 転倒に備えて、外出時は歩行補助具を活用する
- 参加できる社会活動や趣味をみつける
- 睡眠と休息をしっかりとり、体をいたわる
食事と運動
バランスのよい食事を心がけましょう。飲み込みにくさがある場合は、食べ物を小さく切ったり、やわらかく調理したりするなどの工夫が役立ちます。運動は、理学療法士の指導のもとで、こわばりを強くしすぎない程度のストレッチや軽い筋力トレーニングを行うとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
「将来が不安」「人に迷惑をかけているのでは」と感じることもあるかもしれません。それらの気持ちは自然な反応です。つらいときは、ひとりで抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみましょう。気分の落ち込みが長く続く場合は、心の健康の専門家や医療機関に相談することも大切です。
予防
原因が特定されていないため、確実な予防法はありません。しかし、健康的な生活習慣を心がけ、転倒予防やリハビリを続けることは、生活の質を保ち、症状の進行をゆるやかにする可能性があります。
ワクチン
ワクチンで予防できる病気ではありません。
検診プログラム
この病気に特化した定期スクリーニングはありません。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが最も大切です。
合併症
治療しない場合
- 転倒による骨折やけが
- 食べ物を誤って気管に入れることによる肺炎
- 運動不足による筋力のさらなる低下
- 人との交流が減り、孤独感やうつにつながる
長期的な見通し
PLSはゆっくり進行する病気ですが、命に直接かかわることが少ないとされています。個人差はありますが、症状とうまくつきあいながら、長く活動的な生活を続けられる方も多くいます。希望を持ち、周囲のサポートを受けながら、今を大切に過ごしていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。