腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)の検診(スクリーニング)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
おなかの中を通る大動脈という太い血管が、風船のように膨らんでしまう病気です。ふくらんだ部分が破れると命に関わることがあるため、早期に見つけるための検査が「スクリーニング検査」です。はっきりした症状がないことが多く、検診で初めて見つかることがあります。
重要な事実
- おなかの大動脈が直径3cm以上に膨らむと腹部大動脈瘤と診断されます。
- 初期にはほとんど症状がないため、検診での発見が重要です。
- 喫煙・高血圧・男性・60歳以上などの人はリスクが高くなります。
- 破裂する前に見つかれば、経過観察や手術などで対応できます。
日本人では欧米に比べると少ないとされていますが、高齢化にともない増えています。特に65歳以上の男性では見つかることがあります。
主に60歳以上の人、特に男性で多くみられます。喫煙歴がある人や高血圧・脂質異常症のある人、家族に大動脈瘤の人がいる場合はリスクが高くなります。
症状
- 突然、おなかや背中に激しい痛みが起こる
- 痛みとともに冷や汗やめまい、意識がもうろうとする
- おなかのしこりが急に大きくなった感じがして、激しい痛みを伴う
- ⚠持続する腰や背中の痛みがある
- ⚠おなかに拍動を強く感じる
- ⚠原因不明の体重減少や食欲不振がある
一般的な症状
- 多くの場合、症状はありません。
- 大きくなると、おなかの奥の拍動(ドクドクする感じ)を感じることがあります。
- 背中や腰の痛みが出ることがあります。
子供の症状
- 小児では通常みられません。
- 小児に大動脈瘤がある場合は、先天的な病気や結合組織の病気が原因のことがあります。
高齢者の症状
- 高齢者では自覚症状がないことが多く、他の検査で偶然見つかることがほとんどです。
- 急速に大きくなると背部痛や腹部痛が現れることがあります。
原因
主な原因
- 大動脈の壁がもろくなって、血圧の圧力で膨らむと考えられています。
- 動脈硬化が主な原因です。
リスク要因
- 脂質異常症(コレステロールなどの異常)
- 加齢(特に65歳以上)
- 家族に腹部大動脈瘤の人がいる
- 糖尿病、慢性腎臓病など
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「救急対応が必要な症状」に当てはまる場合は、ためらわずに119番で救急車を呼んでください。
- 急な激しい腹痛や背部痛、それにともなう冷や汗や意識の変化があれば、すぐに受診が必要です。
定期受診を予約すべき場合:
- 検診や健康診断で大動脈の拡大を指摘された場合
- 腹部エコーで異常を指摘された場合
- 65歳以上で喫煙歴がある、または家族に大動脈瘤の人がいる場合は、一度検診を相談する
診断
腹部のエコー(超音波)検査で、大動脈の直径を測定するのが一般的です。他にはCT検査やMRI検査で詳しく調べることもあります。
行われる可能性のある検査
- 腹部超音波(エコー)検査
- CT検査
- MRI検査(造影剤を使う場合もある)
- 診察(おなかを触って拍動を確認)
診察で予想されること
検査は痛みを伴わず、数分から30分程度で終わります。エコー検査では、ジェルをおなかに塗って、プローブを当てます。CT検査では、ベッドに横になり数分間動かずに撮影を行います。検査前に食事制限がある場合もありますが、通常は簡単な問診と採血などの後に行われます。
治療
治療は動脈瘤の大きさや成長の速さ、症状の有無で決まります。小さい場合は定期的な画像検査で経過を見ることが多く、大きい場合や急に大きくなる場合は手術やカテーテル治療が検討されます。治療方針は医師とよく相談して決めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 禁煙をする(喫煙は動脈瘤の拡大や破裂のリスクを高めます)
- 血圧を適正に保つ(自宅での血圧測定を習慣に)
- 定期的に医療機関で経過観察を受ける
- 腹部に強い衝撃を与えるような運動は避ける
- 症状に変化がないか意識する
医療治療
動脈硬化や高血圧の進行を抑えるために、生活習慣の改善や血圧・脂質の管理が行われます。これらには生活習慣の見直しや、医師が必要と判断した場合に薬物療法が含まれますが、具体的な薬の名前や用量はここでは示しません。動脈瘤のサイズが大きくなった場合には、外科手術(人工血管置換術)やカテーテルを使ったステントグラフト内挿術などの治療があります。
手術が検討される場合
動脈瘤の最大径が約5cm以上(女性ではもう少し小さい場合もある)や、6か月で5mm以上急に大きくなる場合、痛みなどの症状がある場合には、手術が検討されます。詳しい基準は患者さんごとに異なるため、担当医と相談します。
この病気と共に生きる
無理のない範囲で通常の生活を続けられます。激しい運動や重い荷物を持つことは避け、医師の指示に従った運動を行いましょう。定期的な検査を忘れずに受けることが最も大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を徹底する
- 血圧とコレステロールを良い状態に保つ
- 適度な運動(ウォーキングなど)を続ける
- ストレスをためない工夫をする
- 定期的な検診・通院を守る
食事と運動
塩分を控えめにし、野菜や果物、魚を多く取るバランスの良い食事を心がけましょう。有酸素運動(軽いウォーキングや水中歩行など)は循環機能を保つのに役立ちますが、急に始めるのではなく医師の許可を得て無理のない範囲で行ってください。
精神的健康と心の健康
命に関わる病気と聞くと不安になるのは自然なことです。しかし、早期発見されれば経過観察や適切な治療でリスクを大きく減らせます。不安があれば、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。
予防
完全に予防することはできませんが、動脈硬化のリスクを下げることで発症の可能性を減らせます。生活習慣の改善(禁煙、血圧管理、適度な運動)が有効です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌の予防接種は、動脈瘤そのものの予防にはありませんが、感染症による全身への負担を減らすことで、間接的に健康維持に役立ちます。接種についてはかかりつけ医に相談しましょう。
検診プログラム
腹部超音波検査によるスクリーニングは、65歳以上の喫煙歴のある男性などに対して特に推奨されています。日本では特定健診に含まれていませんが、自治体の検診などでも実施される場合があります。詳しくはお住まいの自治体や職場の健診窓口に問い合わせてください。
合併症
治療しない場合
- 大動脈瘤が破裂し、大出血を起こす
- 瘤の中に血液の固まり(血栓)ができ、それが飛んで血管を詰まらせる(末梢塞栓症)
- 隣接する臓器(消化管や尿管など)を圧迫する
- 進行すると死亡リスクが高まる
長期的な見通し
日本人全体では、破裂前に見つかって適切な管理を行えば、多くの方は安心した生活を送ることができます。検診で早期に見つけることが、命を守る最も有効な方法です。希望を持って治療や経過観察に取り組みましょう。
サポートを探す
相談窓口
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。