アベタリポプロテイン血症とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
アベタリポプロテイン血症(アベタリポプロテインけっしょう)は、遺伝子の変化によって、食事の脂肪や脂溶性ビタミン(油に溶けるビタミン。ビタミンA・E・Kなど)を体がうまく吸収・運搬できなくなる、まれな先天性の病気です。その結果、神経や目、血液などにさまざまな症状が現れることがあります。
重要な事実
- 遺伝性の病気で、両親から原因となる遺伝子を受け継いだ場合に発症します。
- 脂肪の吸収が悪く、特にビタミンEの不足が神経や目の症状に関係しています。
- 早期に発見して栄養管理とビタミン補充を始めれば、症状の進行を抑えることができます。
非常にまれな病気で、世界中でも報告例は少なく、日本でもごくわずかしかいないと考えられています。
ふつうは乳幼児期に症状が現れます。男の子・女の子どちらにも発症します。両親がどちらも健康でも、原因となる遺伝子をひとつずつ持っている場合、子どもに発症することがあります。
症状
- 以下の症状が1つでもある場合は、ためらわずに119番を呼んでください。
- 突然、目が見えなくなった
- 胸の痛みや息苦しさ、動悸(どうき)が続く
- 体の片側の力が抜ける、言葉がしゃべりにくい
- 止まらない出血がある
- ⚠次の症状がある場合は、その日のうちに医療機関に連絡・受診してください。
- ⚠激しい下痢や嘔吐が続き、水分がとれずぐったりしている
- ⚠高熱(38度以上)が続く
- ⚠めまいが強く、立っていられない
- ⚠いつもより歩きにくい、手の震えが強いなど、今までと違う神経の症状がある
一般的な症状
- 脂肪便:油っぽく、悪臭のある便が出ます。脂肪がうまく吸収されず、そのまま便に出てしまうためです。
- 発育不良:体重や身長が十分に増えない、発達の遅れがみられることがあります。
- 神経の症状:ふらつき、手足のしびれ、感覚がにぶい、筋肉の力が入りにくいなどが現れることがあります。
- 目の症状:暗いところで見えにくい夜盲症(よもうしょう)や、視力の低下が現れることがあります。
- 血液の異常:赤血球の周りにとげのような突起がある有棘赤血球(ゆうきょくせっけっきゅう)がみられることがあります。
原因
主な原因
- 遺伝子(MTTP)の変化により、脂肪や脂溶性ビタミンを脂肪と一緒に体のすみずみへ運ぶタンパク質(アポリポプロテインB)が正しくつくられません。
- 両親の両方から、原因となる遺伝子を受け継いだ場合に発症します(常染色体潜性遺伝)。
リスク要因
- 両親がともに、この病気の原因となる遺伝子をひとつずつ持っている(保因者である)ことです。
- 両親が近い血縁関係にある場合、遺伝子を受け継ぐ確率が高まることがあります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 乳児で、体重の増えが悪い、下痢が続く、おなかが張るなどが続く
- 歩くのがふらふらする、手足に力が入らないなど、運動の発達が気になる
- 暗いところで見えにくい、視力が落ちたと感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 学校や職場の健康診断で、血中コレステロールが非常に低いと指摘された
- 原因不明の慢性的な下痢や脂肪便が続いている
- 遺伝性の病気について、専門医に相談したい
診断
血液検査でコレステロールが極端に低いことや、特徴的な赤血球の形がみられることで疑われます。その後、神経・目・消化器の専門的な検査と遺伝子検査を行い、確定診断に至ります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:コレステロールや中性脂肪が非常に低くなっています。
- 末梢血液像:顕微鏡で赤血球の形を調べると、とげ状の有棘赤血球(ゆうきょくせっけっきゅう)がみられます。
- 脂溶性ビタミン(A・E・K)の測定:血液中の濃度が低くなっています。
- 遺伝子検査:原因となる遺伝子の変化を確認します。
- 眼科検査:網膜(めまく)の状態を調べます。
診察で予想されること
まずは内科や小児科で血液検査を受け、必要に応じて専門の医療機関を紹介されます。遺伝子検査は専門機関で行われ、結果が出るまでに数週間かかることがあります。診断後は、小児科・神経内科・眼科・管理栄養士などが連携して長期的にフォローアップします。
治療
現在の治療の中心は、脂肪のとり方を工夫する食事管理と、不足している脂溶性ビタミン(特にビタミンE)を補うことです。根本的に治す治療法はまだありませんが、適切な管理を続ければ、症状の進行を大きく抑えられます。
自宅でのセルフケア
- 食事は医師や管理栄養士の指導に従い、脂肪のとり方を調整しましょう。
- ビタミン補給は、医師が処方したものだけを、指示された量で服用しましょう(自己判断で増やさないこと)。
- 定期的に血液検査を受け、栄養状態とビタミン濃度をチェックしましょう。
- 体重の変化や便の様子を記録しておきましょう。
医療治療
脂溶性ビタミン(特にビタミンE、ビタミンA、ビタミンK)は、医師が適切な製剤を処方し、必要な量を補います。また、下痢やおなかの張りなどの消化器症状に対して、症状を和らげる薬が使われることがあります。栄養状態が極端に悪い場合には、点滴で栄養を補う中心静脈栄養(ちゅうしんじょうみゃくえいよう)が行われることもあります。治療は専門医と管理栄養士が連携して進めます。
手術が検討される場合
この病気そのものに対する手術はありません。ただし、白内障など目の合併症が視力に大きく影響している場合、その症状に対して手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
生涯にわたって定期的な通院と栄養管理が必要です。小児期は成長に合わせて、成人後は生活の変化に合わせて管理方法を調整していきます。まわりの人に病気を理解してもらうことも、安心して暮らすために大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙しましょう(神経や血管の健康を守るためです)。
- アルコールは医師と相談の上、控えめにしましょう(肝臓への負担を避けるためです)。
- ふらつきがある場合は、家庭内の段差をなくし、手すりをつけるなど転倒を防ぐ工夫をしましょう。
- 定期的に眼科と神経内科を受診しましょう。
食事と運動
食事は、低脂肪でありながら、十分なエネルギーとたんぱく質をとることが基本です。脂溶性ビタミンが吸収されにくいため、医師の指示に従って必要なビタミンを補います。運動は、筋肉の衰えを防ぎ神経機能の維持に役立つため、無理のない範囲で続けることが大切です。リハビリスタッフに相談して、安全な運動を見つけましょう。
精神的健康と心の健康
慢性的な病気と向き合うことは、からだだけでなく心にも負担がかかります。特に、まれな病気なので周囲に理解者が少なく、孤独感や不安を感じることがあるかもしれません。自分や家族を責めず、つらい気持ちは医療者やカウンセラーに話してください。もし、自分を傷つけたいという気持ちが消えない場合は、一人で抱え込まず、すぐに医療機関や相談窓口に連絡してください。
予防
遺伝子の変化が原因のため、発症そのものを予防することはできません。ただし、早期に発見して治療を始めることで、神経や目の合併症を予防・軽減することができます。遺伝について心配がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることもできます。
ワクチン
この病気に特有のワクチンはありませんが、感染症を予防して全身の健康を保つために、一般的な予防接種(インフルエンザや肺炎球菌など)は医師と相談の上、受けることがすすめられます。
検診プログラム
一般的な新生児マススクリーニング(先天性疾患の検査)には含まれていないことが多いですが、家族歴がある場合や症状が疑われる場合は、早めに小児科で相談できます。
合併症
治療しない場合
- 進行する神経の障害:手足のしびれやふるえ、歩行困難、感覚の低下が進みます。
- 視力障害:網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう。網膜が障害され視力が低下する病気)により、夜盲症や視野がせまくなることがあります。
- 心臓の合併症:心筋症(心臓の筋肉が弱くなる病気)を起こすことがあります。
- 血液凝固の異常:ビタミンKの不足により、出血しやすくなることがあります。
- 骨の病気:骨が弱くなり、骨折しやすくなることがあります。
長期的な見通し
早期に診断され、適切な栄養管理とビタミン補充を続ければ、多くの場合、症状の進行をゆっくりにし、日常生活の質を保つことができます。この病気とともに生きる人は、専門医のフォローアップを受けながら、自分に合ったペースで健康的な生活を送ることができます。現在も研究が進んでいるため、新たな治療につながる可能性にも期待がもてます。
サポートを探す
地域の団体
- 難病情報センター ↗ · 日本
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。