逆流性食道炎(胃食道逆流症)の基礎知識
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
逆流性食道炎は、胃の中の胃酸や食べ物が食道(のどと胃をつなぐ管)に逆流することで起こる病気です。食道は胃酸に弱く、逆流すると胸焼けやのどの違和感などの症状が出ます。胃食道逆流症(GERD)とも呼ばれます。
重要な事実
- 胃と食道の境目にある筋肉の締まりが弱くなると、胃酸が食道に逆流します。
- 主な症状は胸焼け、酸っぱい液体がのどに上がってくる感じなどです。
- 生活習慣の改善だけで良くなることもありますが、長引く場合は医師の診察が必要です。
- 治療せずに放置すると、食道の粘膜に傷がついたり、まれに重い合併症を起こすことがあります。
はい、逆流性食道炎はとても一般的な病気です。食生活の変化や高齢化に伴い、日本でも患者さんが増えています。多くの人が一度は胸焼けや胃酸の逆流を経験したことがあると言われています。
どの年齢でも起こり得ますが、40歳以上の中高年に多く見られます。男性にやや多い傾向がありますが、女性も妊娠中などに起こりやすくなります。肥満の方、喫煙者、お酒をよく飲む方にも多く見られます。
症状
- 激しい胸の痛み・圧迫感がある
- 息苦しい、冷や汗が出る
- 痛みが腕やあご、背中に広がる
- 呼吸ができないほどの苦しさがある
- ⚠飲み込みにくさが急に悪化した
- ⚠吐血や黒色の便が出た
- ⚠のどや胸に何かがつかえた感じが続く
- ⚠体重が急に減った
- ⚠症状がひどくて食事がとれない
一般的な症状
- 胸焼け(胸のあたりが熱く感じる)
- 胃酸や食べ物がのどや口に逆流してくる感じ(呑酸)
- 胸の痛み、特に食後に起こることが多い
- のどの違和感、声のかすれ、せき
- げっぷがよく出る
- 吐き気、胃もたれ
子供の症状
- 子どもの場合は、胸焼けというより吐き戻しや嘔吐が見られることが多い
- 食欲がなく、体重が増えない
- 機嫌が悪い、夜泣きがひどい
- 慢性的なせきやぜんそくのような症状が出ることもある
高齢者の症状
- 高齢者では胸焼けがそれほど強くなく、のどの痛み、声のかすれ、飲み込みにくさなどが出やすくなります。
- 食欲が落ちる、体重が減る、貧血といった症状が先行することもあります。
- 症状がはっきりしないため、発見が遅れやすいので注意が必要です。
原因
主な原因
- 胃と食道の境目にある下部食道括約筋という筋肉の力が弱くなり、胃の中の物を食道に押し戻さなくなる
- 食後の横になる、前かがみになることで胃酸が逆流しやすくなる
- 胃酸の分泌量が多い、胃の内容物が多すぎる
- 胃と食道の解剖学的な異常(食道裂孔ヘルニアなど)
- 妊娠によって腹部の圧力が高くなる
リスク要因
- 肥満(特に腹部の脂肪が多い)
- 喫煙や過度の飲酒
- 脂肪分の多い食事、チョコレート、ミント、炭酸飲料など
- カフェインや香辛料の多い食べ物
- 食後にすぐ横になる習慣
- ストレスや睡眠不足
- 一部の薬(鎮痛薬、血圧の薬など)の服用
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい胸の痛みがある
- 吐血や下血がある
- 飲み込みにくさがひどく、水も飲めない
定期受診を予約すべき場合:
- 胸焼けや胃酸の逆流が週に2回以上ある
- 症状が2週間以上続く
- 市販の胃薬を試しても改善しない
- 声のかすれ、のどの違和感、慢性的なせきがある
- 食事や体重に影響が出ている
診断
医師の診察が第一歩です。症状について詳しく聞かれ、必要に応じて検査が行われます。症状だけではっきり診断できることもありますが、症状が長引く場合や他の病気を除外するために検査をすることがあります。
行われる可能性のある検査
- 上部内視鏡検査(胃カメラ):口から細い管を入れて食道の粘膜に傷がないか直接確認します。
- 24時間pHモニタリング:食道に細い器具を留置し、胃酸の逆流の程度を測定します。
- 食道造影検査:バリウムを飲んでレントゲン撮影し、逆流や食道の形を調べます。
- 食道内圧検査:食道の筋肉の動きや締まりを調べる検査です。
診察で予想されること
診察では、症状の頻度や食事・生活習慣について質問されます。胃カメラなどの検査をする場合は、前日の食事制限が必要になることがあります。検査自体は数分から十数分で終わることが多く、少しのどが痛くなることはあっても、多くの人は無事に受けられます。
治療
治療の基本は、胃酸の逆流を減らすことです。生活習慣の改善がとても大切で、それだけで良くなる方もいます。一方で、症状が強かったり、食道の粘膜に炎症がある場合には、薬での治療が行われます。治療は長く続けることが多いですが、多くの方は症状をうまくコントロールできます。
自宅でのセルフケア
- 食後すぐに横にならない(食後少なくとも2〜3時間は横にならない)
- 食事は一度にたくさん食べず、ゆっくりよく噛んで食べる
- 脂肪分の多い食べ物、香辛料、カフェイン、炭酸飲料などを控える
- 喫煙や過度の飲酒を控える
- 就寝時は頭側を数センチ高くして寝る(逆流を防ぎやすい)
- きつい服やベルトを避ける
- 肥満の方は減量を心がける
医療治療
医療機関では、胃酸の分泌を抑える薬や胃酸を中和する薬、逆流を防ぐ薬などが処方されることがあります。一般的には、胃酸の働きを抑える薬が第一選択として使われ、多くは症状が改善します。薬は医師の指示に従って正しく服用してください。自己判断で止めたり量を変えたりしないことが大切です。
手術が検討される場合
薬で十分に効果が得られない場合や、薬を長期間飲みたくない場合、または合併症がある場合には、外科的治療(手術)が検討されることがあります。代表的なのは腹腔鏡手術で、胃の上部を食道の周りに巻き付けて逆流を防ぐ方法です。手術の適応については、消化器外科の医師とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
逆流性食道炎は、よくなることと悪くなることがある慢性的な病気です。生活習慣を整え、症状が出たら早めに対処するようにすれば、日常生活への影響は大きくなりません。処方された薬がある場合は、症状が良くなっても医師の指示に従って飲み続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日の食事を規則正しくとる
- 寝る前の食事や深夜の間食を避ける
- 食後に軽い散歩をする
- ストレスをためない工夫をする(軽い運動、趣味、十分な睡眠など)
- 体重を適正に保つ
- 禁煙する
食事と運動
食事は、野菜や魚、鶏肉など消化の良いものを中心にし、揚げ物や脂っこい肉、菓子類、柑橘類、トマト、コーヒー、緑茶、炭酸飲料などは控えめにしましょう。適度な運動は胃の働きを整え、肥満解消にも役立ちます。ただし、腹筋を使う激しい運動や、食後すぐの運動は逆流を悪化させることがあるので注意してください。
精神的健康と心の健康
長引く胸焼けや逆流の症状は、睡眠の妨げになったり、食事を楽しめなくなったりして、心の負担になることがあります。特に夜間の症状は不安や不眠を引き起こすこともあります。症状に悩んでいること自体を恥ずかしいと思わず、医師や家族、友人に相談してください。
予防
逆流性食道炎は、生活習慣の改善である程度予防できます。特に、食事の量や内容、食べた後の姿勢、体重管理に注意することが効果的です。すでに症状がある方でも、生活改善で悪化を防ぐことができます。
合併症
治療しない場合
- 食道の粘膜がただれる(逆流性食道炎の悪化)
- 食道が狭くなって飲み込みにくくなる(食道狭窄)
- 食道の粘膜が傷ついて出血する
- まれに、細胞が変化して食道がんのリスクが高まる(バレット食道)
- 慢性的なせきや喘息、声のかすれを引き起こすことがある
長期的な見通し
逆流性食道炎は、適切な治療と生活管理を続ければ、多くの方が症状のない状態を保てる病気です。食道の粘膜の傷も、早期に治療すれば元通りに治ることがほとんどです。怖い合併症を防ぐためにも、症状を我慢せず早めに医療機関を受診してください。しっかり治療すれば、安心して日常生活を送れます。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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