急性間欠性ポルフィリン症(AIP)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
急性間欠性ポルフィリン症(AIP)は、体の中で「ヘム」という血液が酸素を運ぶために必要な成分を作るときに、途中の化学反応がうまくいかず、「ポルフィリン」という物質が体にたまってしまう、まれな遺伝性の病気です。このポルフィリンが神経に影響すると、激しい腹痛や吐き気、しびれ、精神症状などが突然起こることがあります。発作と落ち着いている時期がくり返されるのが特徴です。
重要な事実
- 遺伝子の変化で起こる病気ですが、原因となる遺伝子を持っていても発作を起こす人は一部です。
- 発作の引き金には、特定の薬、飲酒、食事を抜くこと、ストレス、感染症、女性ホルモンの変化などがあります。
- 代表的な症状は、原因がわかりにくい激しい腹痛と、吐き気・便秘・尿の色の変化です。
- 発作は多くの場合、早めの治療で回復しますが、神経症状が強いときは救急対応が必要です。
- 引き金を避ける工夫と専門医のフォローで、発作を減らしながら生活することができます。
とてもまれな病気です。正確な患者数ははっきりしませんが、日本では一般の診療で出会うことはほとんどありません。まれな病気のため、診断に至るまでに時間がかかることもあります。
どの年代でも起こり得ますが、20~40代の女性に多くみられます。家族にAIPの患者がいる場合は、遺伝子を受け継いでいる可能性があります。
症状
- 激しい腹痛に加えて、けいれんや意識障害がある
- 呼吸が苦しい、または呼吸が弱くなっている
- 手足のまひが急速に進む、動かせない
- 幻覚がひどい、自分を傷つける恐れがある
- これらの症状がある場合は、ためらわず119番へ連絡してください
- ⚠我慢できるが、強い腹痛や吐き気が続いている
- ⚠尿の色が赤茶色に変わっている
- ⚠しびれや脱力を感じるが、歩けないほどではない
- ⚠これまでにAIPの診断を受けたことがあり、発作を疑う症状が出た
一般的な症状
- おなか全体が強く痛む(数時間から数日続く)
- 吐き気、嘔吐、便秘
- 尿が赤茶色・赤黒く見えることがある
- 手足のしびれ、脱力感
- 動悸、脈が速い、血圧が高くなる
- 不安、イライラ、不眠、混乱などの精神症状
- 発熱や感染症をきっかけに症状が悪化することがある
子供の症状
- 子どもでは典型的な腹痛だけでなく、ぐずる、元気がない、食欲がないといった変化として現れることもあります。
- 尿の色が濃い・赤茶色に見える場合は注意が必要です。
- 強い腹痛に加えて、ぐったりする、意識がもうろうとするなどがあれば、早めに医師に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢者では、便秘や尿の色の変化、意識のぼんやりなどが「年のせい」と見逃されやすいことがあります。
- 急に元気がなくなる、混乱する、脱力があるといった変化があれば、早めに受診しましょう。
- 持病の薬をきっかけに発作が起こることもあるため、複数の薬を飲んでいる人は注意が必要です。
原因
主な原因
- AIPは、親から受け継いだ遺伝子の変化によって起こります。
- 遺伝子の変化により、ヘムを作る過程で働く特定の酵素(化学反応を助けるタンパク質)の働きが弱くなります。
- 酵素の働きが弱いと、ポルフィリンという物質が体にたまりやすくなり、この物質が神経を刺激して発作を起こします。
- 遺伝子を受け継いでいても、日常生活で引き金となる要因が重ならなければ、発作を起こさないこともあります。
リスク要因
- 家族に急性ポルフィリン症の患者がいる
- 20~40代の女性(月経周期に合わせて発作が起こりやすい)
- 食事を抜く、絶食、無理なダイエット
- 特定の薬の使用(市販薬・サプリメントも含む)
- 感染症や手術、ストレスなど体に負担がかかる状況
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に激しい腹痛や吐き気が続き、尿の色が濃い、赤茶色に見える
- 手足のしびれ・脱力・けいれんなどの神経症状がある
- 意識がぼんやりする、混乱して話がまとまらない
- 夜間や休日でもためらわずに救急外来や119番を利用してください
定期受診を予約すべき場合:
- 原因がはっきりしない腹痛を何度も繰り返している
- 家族にポルフィリン症の人がいる
- 特定の薬を飲んだ後に、腹痛や吐き気、神経症状が出たことがある
診断
AIPは、症状があるとき(発作中)の尿検査で、ポルホビリノーゲンという物質が増えていないかを調べることで診断の手がかりが得られます。異常が見られた場合は、血液検査や遺伝子検査で確定診断します。発作が治まると検査値が正常になることがあるため、症状があるときに検査することが大切です。かかりつけ医から、ポルフィリン症に詳しい専門医がいる医療機関を紹介してもらうこともあります。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(発作中にポルフィリン代謝物を測定する)
- 血液検査(赤血球や白血球の中の酵素の働きを調べる)
- 遺伝子検査(原因となる遺伝子の変化を確認する)
- 画像検査(ほかの病気がないかを確認するために行うことがある)
診察で予想されること
AIPはまれな病気のため、繰り返す腹痛があっても、胃腸の病気や婦人科の病気を先に調べられることがあります。診断まで時間がかかることもありますが、自分の症状や家族歴を正確に伝えることが早道になります。
治療
急性発作の治療は、症状の程度によっては入院して行います。落ち着いている時期は、発作を予防するための生活管理と、引き金となる薬や飲酒などを避けることが中心になります。
自宅でのセルフケア
- 食事を抜かず、規則正しく1日3回食べる
- アルコールは避ける
- 新しい薬(市販薬・サプリメントを含む)を始める前に、必ず医師または薬剤師にAIPであることを伝える
- 睡眠を大切にし、過度なストレスをためない
- 主治医と一緒に「受診の目安」と「緊急時の連絡先」を決めておく
医療治療
発作の治療は、入院の上で行う水分と糖分を補う点滴、痛みや吐き気を和らげる治療、体内にたまったポルフィリンを減らして神経の症状を改善するための特別な治療などがあります。治療薬の選択は、AIPに詳しい医師が患者さんの状態に合わせて行います。必ず医療機関で受けてください。
手術が検討される場合
この病気自体に対する手術は通常ありません。ただし、胆石など、AIPに伴って見つかった病気の手術が必要になることがあります。その場合は、麻酔や手術前後の薬が発作を引き起こす可能性があるため、ポルフィリン症に詳しい医師が手術チームと連携して計画を立てます。
この病気と共に生きる
AIPは、発作のない時期は多くの人がふだん通りの生活を送れます。大切なのは、自分の体のサインを知り、引き金を避ける習慣を身につけることです。発作が起こっても、早めに対処すれば回復しやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 主治医と一緒に緊急時の受診の目安を決めておく
- 市販薬や新しい薬を買うときは、AIPであることを伝える
- お薬手帳や病気の説明資料を常に携帯する
- 旅行や入院のときは、AIPであることを医療者に必ず伝えられる準備をする
- 睡眠不足やストレスをためないようにする
食事と運動
食事は抜かず、1日3回、ごはん・パン・麺類などの炭水化物を十分にとるようにしましょう。無理なダイエットや絶食は避けます。運動は、医師と相談した上で、激しすぎなければ無理のない範囲で続けてよいとされています。体調がすぐれないときは休むことが大切です。
精神的健康と心の健康
激しい発作を繰り返すと、「また発作が起きるのでは」という不安や、周囲に理解されない孤独感を感じることがあります。気持ちのつらさは医療的なサポートの対象です。気分の落ち込みが続いたり、自分を傷つけたいという気持ちがわいたりした場合は、一人で抱え込まず、すぐに主治医や精神科医療機関、自治体のこころの健康相談窓口に連絡してください。夜間や休日などで緊急の場合は、119番や最寄りの救急外来に相談してください。
予防
遺伝子の変化そのものは予防できませんが、発作(急性増悪)の多くは引き金を避けることで予防できます。食事を抜かない、アルコールを避ける、安易に薬を使わない、ストレスをためないことが基本です。
ワクチン
感染症は発作の引き金になることがあるため、定期的な予防接種については主治医と相談しましょう。接種を受ける際は、AIPであることを医師に伝えてください。
検診プログラム
家族にAIPの患者がいる場合は、症状がなくても遺伝子検査や酵素検査を受けられるかどうか、遺伝カウンセリングや専門医に相談できます。検査を受けるかどうかは、十分な情報を得て、自分の意思で決めることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 重症の神経症状(けいれん、意識障害、呼吸のまひ)を起こすことがあります。
- 長く続く吐き気や便秘のために、食事がとれず、脱水や栄養不足になりやすいです。
- 高血圧や腎臓の障害など、長期的な健康問題を引き起こすことがあります。
- 長期的に肝臓の変化(まれに肝臓のがん)のリスクが高まるという報告があります。
長期的な見通し
AIPは長く付き合っていく病気ですが、発作の多くは予防でき、適切な治療と生活管理によって、仕事や家庭生活など多くの場面で普通に近い生活を送ることができます。年齢とともに発作が減ってくることもあります。専門医のフォローを受けながら、無理なく続けていきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
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