妊娠中の飲酒について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中にアルコールを飲むと、おなかの赤ちゃんの脳や体の発達に影響が出ることがあります。これを「胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)」と呼びます。最も重い形は「胎児性アルコール症候群(FAS)」です。アルコールは胎盤を通って赤ちゃんに届くため、妊娠中は「安全な量」というものはありません。
重要な事実
- 妊娠中の飲酒は、少量でも赤ちゃんの脳や神経の発達に影響する可能性があります。
- 妊娠中はアルコールをまったく飲まないことが最も安全です。
- 妊娠前に飲酒をやめることで、赤ちゃんへの影響を防ぐことができます。
日本では、妊娠中の飲酒がすべてのケースでゼロになるには至っていません。特に、妊娠に気づかないまま飲酒を続けてしまうケースや、胎児性アルコールスペクトラム障害が見過ごされているケースがあると考えられています。厚生労働省の調査でも、妊娠中の飲酒を完全に避けることの大切さが呼びかけられています。
妊娠中の女性と、そのおなかの中の赤ちゃんに影響します。特に妊娠初期の脳や心臓などが作られる時期が最も敏感です。飲酒量が多いほど、また頻繁に飲むほど、赤ちゃんへの影響が大きくなる可能性があります。
症状
- 妊娠中に大量の出血がある
- 激しい腹痛や腰の痛みがある
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 息が苦しく、呼吸が速い
- けいれんが起きている
- ⚠アルコールを急にやめたときに手の震え、ひどい不安、幻覚、錯乱などの離脱症状が現れた
- ⚠おなかの張りや赤ちゃんの動きの変化を感じる
- ⚠妊娠中に飲酒をしてしまい、どうしていいかわからず強い不安がある
一般的な症状
- 妊娠中に飲酒したお母さんから生まれた赤ちゃんに、成長の遅れがみられることがあります。
- 顔の特徴(目と目の間が離れている、鼻の下が長い、上唇が薄いなど)がみられることがあります。
- 中枢神経系の問題(運動の発達の遅れ、学習の困難、注意力の問題、記憶力の問題など)が起こることがあります。
子供の症状
- 生まれたときの身長や体重が小さい
- 哺乳や睡眠の問題がみられる
- 話し始めるのが遅い、言葉の発達がゆっくり
- じっとしていられない、衝動的な行動
- 友達との関係を築くのが難しい
- 目や耳の異常がみられる
原因
主な原因
- 妊娠中の飲酒が唯一の原因です。アルコールは胎盤を通過し、赤ちゃんの血液に入ります。
- 赤ちゃんの肝臓はまだ未熟なため、アルコールをうまく分解できず、脳や体の発達に悪影響を及ぼします。
リスク要因
- 妊娠に気づかずに飲酒をしていた
- 大量飲酒(一度に5杯以上)や頻繁な飲酒をしている
- アルコール依存症がある
- 周囲に飲酒をすすめられる環境がある
- 以前に妊娠中の飲酒で影響が出たことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中に飲酒をしていて、アルコールをやめようとすると強い不安や震えなどがある場合
- 妊娠中に出血や激しい腹痛がある場合は、すぐに救急を受診または119番に連絡してください
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中または妊娠の可能性がある場合、できるだけ早く医師に飲酒のことを伝えて相談する
- 妊娠初期の健診で、飲酒の有無を正直に伝える
- 飲酒をやめたいけれど自分では難しい場合は、産婦人科医や地域の保健師に相談する
診断
胎児性アルコールスペクトラム障害は、妊娠中の飲酒の状況と子どもの発達や体の特徴から診断されます。医師は、妊婦健診や小児科で、飲酒についての質問をしたうえで、子どもの成長を観察します。
行われる可能性のある検査
- 医師による問診・面接(飲酒の状況、妊娠中の過ごし方)
- 子どもの身体診察(顔の特徴、成長曲線、神経発達のチェック)
- 発達評価(心理検査や言語・行動の観察)
- 必要に応じて、脳の画像検査や血液検査を行うこともあります
診察で予想されること
診断は特別な検査だけで決まるものではありません。医師や保健師との面談で、妊娠中のことを安心して話してください。飲酒のことを隠さずに伝えることで、より正確な評価と支援につながります。専門の医療機関や療育センターに紹介されることもありますが、決して「責められる」ことはありません。
治療
胎児性アルコールスペクトラム障害を根本から治す薬や方法はありません。しかし、赤ちゃんの成長や発達に合わせて、早い段階から適切な支援を受けることで、困難を軽くすることができます。妊娠中の飲酒を完全にやめることが、最善の「治療」でもあります。
自宅でのセルフケア
- 妊娠中はアルコールを一滴も飲まないようにしましょう。
- 妊娠を計画している場合も、妊娠前から禁酒を始めましょう。
- パートナーや家族も一緒に禁酒に協力し、飲酒の機会を減らしましょう。
- 飲酒への渇望がある場合は、保健師や専門外来に相談しましょう。
- 妊婦健診や子育て支援制度を積極的に利用しましょう。
医療治療
飲酒による子どもの症状は、一人ひとり異なります。そのため、発達支援プログラム、言語療法、作業療法、行動の工夫や心理的支援などが、医師や専門家のチームによって提供されます。薬物治療が必要な場合も、症状に合わせて医師が慎重に選択し、根本的な治療ではなくサポートのために使うことがあります。必ず主治医の指導に従ってください。
手術が検討される場合
胎児性アルコールスペクトラム障害による心臓の異常や、その他の体の構造に問題がある場合に、手術が必要になることがあります。ただし、これはまれであり、担当医が詳しく説明します。
この病気と共に生きる
妊娠中に飲酒をしたことがあっても、今から赤ちゃんに愛情を注ぎ、一貫した生活リズムを整えることで、子どもの発達を支えられます。大切なのは「今からの支援」です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と生活リズムを保ちましょう。
- ストレスをためず、パートナーや家族に家事や育児を頼むなどして無理をしないようにしましょう。
- 飲酒の代わりに、ノンアルコール飲料やお茶を楽しむ工夫をしましょう。
- 地域の子育てサポートや療育センターを積極的に利用しましょう。
食事と運動
バランスのよい食事と、医師に相談しながらの適度な運動(散歩やマタニティヨガなど)は、心身の健康に役立ちます。特に妊娠中は禁酒を徹底し、葉酸や鉄分を含む食品を意識しましょう。
精神的健康と心の健康
妊娠中の飲酒を後悔し、罪悪感や不安を強く感じるお母さんも少なくありません。そうした感情は自然なものですが、一人で抱え込む必要はありません。専門家や同じ経験を持つ親の会で話すことで、気持ちが楽になることがあります。
予防
妊娠中の飲酒による障害は、100%予防が可能です。妊娠を計画している時点から飲酒を完全にやめることが、最も確実な方法です。妊娠中は「安全な飲酒量」はないため、一切のアルコールを避けることが推奨されています。
検診プログラム
妊婦健診では、飲酒についての質問があります。これは赤ちゃんを守るための大切なスクリーニングです。正直に答えることで、必要な支援や情報を得られます。
合併症
治療しない場合
- 子どもの発達や学習に遅れが生じることがあります。
- 行動の問題や社会的なスキルの困難が続くことがあります。
- 成人になっても、自立や仕事の継続に支援が必要になる場合があります。
- 飲酒をやめずに妊娠を続けると、赤ちゃんへの影響がより重くなる可能性があります。
長期的な見通し
たとえ妊娠中に飲酒をしていたとしても、飲酒をやめて適切な支援を受ければ、多くの子どもは健やかに成長できます。影響の程度は人によって異なり、重い障害が必ず起きるわけではありません。大切なのは、今からできる最善の選択をして、専門家と一緒に子どもを支えることです。あきらめないで、一歩ずつ前に進みましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
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