アルツハイマー型認知症 徘徊(さまよい歩き)から家族を守るには
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞がゆっくりと減り、記憶力や判断力が衰える病気です。その症状のひとつに「徘徊(はいかい)」があります。これは、本人の意思とは関係なく、外へ出てしまったり、家の中を歩き回ったりすることです。本人に悪意はなく、不安や混乱、退屈などが原因で起こることが多いです。
重要な事実
- 徘徊は「問題行動」ではなく、本人が何かを伝えようとしているサインと考えることが大切です
- 安全な環境づくりと周囲の理解で、徘徊による事故を大きく減らせます
- 無理に止めようとすると、本人の不安が強まることがあります
- 早めに医療や地域の支援につながることが、家族の負担を軽くします
アルツハイマー型認知症の人にみられる行動のひとつで、決して珍しいことではありません。在宅で暮らす認知症の人のおよそ半数が、どこかの時期に徘徊のような行動を経験するともいわれています。
アルツハイマー型認知症は、65歳以上の高齢者に多くみられます。ただし、50歳前後から発症する「若年性認知症」もあり、本人だけでなく、家族や介護する人の生活にも影響をおよぼします。
症状
- 徘徊している人が見つかっても、意識がない、呼吸がおかしい、けいれんが止まらない場合は、すぐに119番(救急車)を呼んでください
- 外で転倒して頭を打ち、出血が止まらない、手足が動かないなどの大けががある場合は、119番を呼んでください
- 行方不明になった場合は、すぐに110番(警察)へ連絡してください。地域の見守りネットワークや役所にも同時に協力を求めましょう
- ⚠急にひどく混乱して、今までと様子がまったく違う
- ⚠熱があり、水分が取れず、ぐったりしている
- ⚠転んで頭を打ったが、時間がたってから嘔吐(おうと)や頭痛がある
- ⚠夜間に何度も外へ出ようとして、家族だけでは危険を守れない
- ⚠暴言や暴力があり、本人や家族の安全が心配になる
一般的な症状
- 同じ話を何度も繰り返す
- 日付や時間、場所がわからなくなる
- 自宅にいると落ち着かず、「家に帰る」と言って外へ出ようとする
- 外出先で道に迷う
- 夜中に目を覚まして歩き回る
- 荷物をまとめたり、身支度をして出かける準備をしたりする
子供の症状
- アルツハイマー型認知症による徘徊は、子どもには通常みられません。
- 子どもの落ち着かない行動や夜中の目覚めには、別の理由があることが多いです。気になる場合は、かかりつけの小児科で相談しましょう。
高齢者の症状
- 「今、ここがどこか」がわからなくなり、不安から外へ出てしまう
- 昼間よりも夕方や夜に混乱が強くなることがある
- 慣れた場所でも道に迷いやすくなる
- 家の中を目的もなく歩き回ったり、引き出しを開けたりする
- 急に強い不安や興奮が現れ、家族の言うことを受け入れにくくなる
原因
主な原因
- 脳の神経細胞が減少し、脳が小さくなる
- アミロイドβやタウと呼ばれる異常なたんぱく質が脳の中にたまる
- 神経細胞同士のつながりが失われ、情報がうまく伝わらなくなる
- アルツハイマー型認知症の正確な原因はまだ研究中の部分が多い
リスク要因
- 加齢(年齢を重ねる)
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病
- 過去の頭部のけが
- 運動不足
- 社会参加の機会が減る
- 睡眠の障害
- 家族や親族にアルツハイマー型認知症の人がいる(遺伝的な要素が関係する場合がある)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 徘徊によって事故やけがをした
- 急に状態が悪化し、家族だけでは安全を守れない
- 暴言・暴力などがあり、周囲の人がけがをしそうなとき
定期受診を予約すべき場合:
- 最近、忘れっぽさが目立つようになった
- 夜中に歩き回るようになった
- 近所で道に迷ったことがある
- すでに認知症と診断されている人は、症状の変化をかかりつけ医に伝える
- 薬の種類や量が合っているか確認したい
診断
かかりつけ医やもの忘れ外来、認知症専門外来で、本人と家族から生活の様子や症状を聞き取り、いくつかの検査を行って総合的に診断します。
行われる可能性のある検査
- 記憶力や判断力を確認する簡単な質問や課題
- 本人からだけでなく、家族からの情報を聞く問診
- 他の病気をみつけるための血液検査
- 脳の萎縮や異常を確認するためのCTやMRIなどの画像検査
診察で予想されること
検査は一度に終わらず、数回に分けて行われることもあります。無理に答えようとしないで、本人のペースを大切にしてくれます。診断がつくことで、今後の見守り方や利用できる支援が具体的に見えてきます。
治療
アルツハイマー型認知症を根本的に治す薬や方法はまだありません。しかし、症状をやわらげる薬や、生活の工夫、家族や地域のサポートによって、本人らしい暮らしを続けることはできます。徘徊は「危険だから止める」のではなく、「どうして歩きたくなるのか」に目を向けることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 自宅の玄関や窓に、本人が気づきにくい安全対策を工夫する(施錠の位置を変える、センサー音を付けるなど)
- 迷子になってもすぐにわかるよう、服に名前と連絡先を付ける
- GPSなどで位置を見守るサービスも利用を検討する
- 本人が「家に帰る」と言ったら、「そうですね」と気持ちを受け止めてから、一緒に散歩やお茶などの別の行動に切り替える
- 夜は部屋を明るくしすぎない、日中の活動を増やして眠れるようにする
- 近所の人、警察、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに事前に知らせておく
医療治療
医師は、症状の進行をゆるやかにすることを目的とした薬や、不安、不眠、興奮などを和らげる薬を、その人の状態に合わせて処方することがあります。薬の選択や量は、症状や体の状態によって一人ひとり異なります。名前や量を自分で決めず、必ず医師の指示に従ってください。薬局では、他の薬との飲み合わせについても確認してもらいましょう。
手術が検討される場合
アルツハイマー型認知症そのものを手術で治すことはできません。けがや別の病気で手術が必要な場合は、麻酔による意識の混乱や術後のせん妄(せんもう)に注意が必要です。事前に認知症の専門医と外科の医師が連絡を取れるよう、かかりつけ医に相談してください。
この病気と共に生きる
毎日の生活のリズムを一定にし、食事、入浴、睡眠の時間を整えましょう。徘徊が始まったときは、否定したり叱ったりせず、「何か不安なことがあるのかな」と気持ちを認めるようにします。本人が落ち着ける場所や好きな活動を見つけると、無理に止めずにすむことが増えます。
生活習慣のアドバイス
- 無理のない時間に一緒に散歩をする
- 音楽を聴く、簡単な家事や手仕事を頼むなど、本人が夢中になれる活動を取り入れる
- 日中はカーテンを開けて日光を浴び、昼夜の区別をつける
- 家族や友人と過ごす時間をつくる
- 介護する側にも休息や趣味の時間が必要です
食事と運動
栄養バランスのよい食事を3食とり、水分もこまめに補給しましょう。塩分や糖分の取りすぎに注意し、お酒の飲みすぎは控えます。運動は激しいものでなくて大丈夫です。散歩や軽い体操を続けることで、眠りの質を整え、気分を安定させる効果が期待できます。
精神的健康と心の健康
認知症の介護は、肉体的にも精神的にも負担が大きいものです。特に徘徊が続くと「いつ外に飛び出すか」という不安で、家族が眠れなくなったり、追い詰められたりすることもあります。わたし一人で頑張らなくてはとため込まず、つらい気持ちを家族や専門家に話してください。
予防
アルツハイマー型認知症を確実に予防する方法はまだありません。ただし、厚生労働省は、バランスのよい食事、適度な運動、社会参加、生活習慣病の管理といった健康的な生活習慣が、認知症の発症リスクを下げる可能性があるとしています。
ワクチン
現在、アルツハイマー型認知症を予防するための一般的なワクチンはありません。
検診プログラム
気になる症状がある人は、健康診断を待たずに医療機関で相談しましょう。もの忘れを専門に診る外来もあります。
合併症
治療しない場合
- 外出先で道に迷い、交通事故にあう
- 夏の暑さや冬の寒さの中で、熱中症や低体温症になる
- 転倒して骨折する
- 水分や食事を十分にとれず、脱水や栄養障害になる
- 家族の介護負担が増え、家族の体調や気分を崩す
長期的な見通し
認知症と診断されても、その人らしい生活を続けることは十分にできます。安全な環境づくり、周囲の理解、適切な医療や介護サービスがあれば、徘徊による事故もずいぶん減らせます。介護する人も一人で抱え込まず、早めに助けを求めてください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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