健忘(記憶障害)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
健忘(記憶障害)とは、新しいことを覚えられなかったり、昔のことを思い出せなかったりする状態のことです。原因はストレスや睡眠不足のような身近なものから、脳のけがや病気までさまざまです。記憶障害は病気そのものではなく、体や心のトラブルが表に出たサインであることも多いです。
重要な事実
- 記憶障害は一つの病気ではなく、さまざまな原因による「症状」です。
- 原因によっては、治療や生活の工夫で改善・回復することがあります。
- 突然おこる記憶障害は、脳卒中などの緊急のサインであることがあるため、すぐに119番が必要です。
記憶のことで困る人は少なくありません。だれでも物忘れをすることがありますが、それが日常生活に影響する場合は医療機関への相談がすすめられます。
どの年齢の人にも起こり得ます。高齢者では認知症(脳の働きが低下する病気)による記憶障害が増えますが、けが・ストレス・感染症・薬の影響などによって若い人にも起こることがあります。
症状
- 突然、顔や手足の力が入らない・麻痺(まひ)がある
- 急にろれつが回らない、言葉が出ない
- 突然強い頭痛がある
- 意識を失った・呼びかけに反応しない
- けいれんがある
- 頭を強く打ったあとに混乱や吐き気がある
- ⚠急に記憶を失った
- ⚠家族や身近な人の顔がわからなくなった
- ⚠混乱が急にひどくなった
- ⚠ふだんと違う奇妙な行動がある
- ⚠発熱と首の痛み、強い頭痛をともなう意識の変化がある
一般的な症状
- 最近聞いたことや約束を忘れる
- 同じ質問や話を何度もくり返す
- 物を置いた場所を忘れる
- 人の名前や顔が思い出せない
- 時間や場所、自分がどこにいるかがわからなくなる
- 記憶が急にぽっかり抜けてしまう
子供の症状
- うっかり忘れるのは子どもによくあることですが、それまでできていたことが急にできなくなる場合は注意が必要です。
- 頭をぶつけたあとに吐いたり、ぼんやりしたりする場合はすぐに救急車を呼ぶ必要があります。
- 強いストレスやつらい経験のあとに記憶が抜けることもあり、その場合は心の専門家の相談が役立ちます。
高齢者の症状
- 加齢による物忘れはありますが、これは必ずしも認知症ではありません。
- 最近のできごとを忘れる、料理や金銭管理が難しい、道に迷うなど、生活に支障が出てきたら受診の目安です。
- 高齢者の記憶障害は、うつ病や甲状腺の問題、薬の影響など、治療できる原因で起こることもあります。
原因
主な原因
- 脳卒中や頭部のけがによる脳の損傷
- ストレス、心的外傷、強い心理的ショック
- 睡眠不足や疲労、過度の飲酒
- うつ病や不安障害などの精神的な病気
- 脳の感染症(髄膜炎や脳炎など)
- 認知症(アルツハイマー病など)
- 特定の薬の副作用や複数の薬の飲み合わせ
- 甲状腺の病気やビタミン不足などの体の病気
リスク要因
- 高齢である
- 頭部にけがをした経験がある
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症など脳卒中のリスクがある
- 過度の飲酒をする
- 睡眠障害がある
- うつ状態や強いストレスを抱えている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に記憶を失った、または急に混乱がおこった
- 頭を打ったあとに記憶が飛んだ
- 言葉が出ない、体が動かないなどの脳卒中のサインがある
- けいれんや意識の低下をともなう
定期受診を予約すべき場合:
- 物忘れが増えて日常生活や仕事に支障が出ている
- 家族から「同じことを何度も聞く」と指摘される
- 薬を飲み忘れたり、食事を食べ忘れたりすることがある
- 気分の落ち込みや不安が続いている
診断
医師はまず、いつからどんな場面で記憶に問題が出たかを、本人と家族などから詳しく聞きます。そのあと、簡単な質問で記憶や注意力を確認したり、手や足の動きを調べたりします。必要に応じて血液検査や脳の画像検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 問診(本人と家族からの話)
- 記憶・注意力などを確認する認知機能のチェック
- 脳卒中や認知症などが疑われるときのMRI・CT検査
- 原因として考えられる体の病気を調べる血液検査
診察で予想されること
受診すると、記憶障害の原因を探すためにいくつかの検査や質問を受けます。すべての検査が一度に必要なわけではなく、症状に合わせて行われます。検査結果が出るまでは、「何かの病気かもしれない」と不安になることもあるでしょう。医師と話し合いながら、次の一歩を決めていくことが大切です。
治療
記憶障害の治療は原因によって異なります。うつ病や甲状腺の病気が原因なら、その治療により症状がよくなることがあります。認知症が原因なら進行をゆるやかにすること、脳のけがや脳卒中ならリハビリテーションが中心になります。記憶障害そのものより、まず原因を見つけて向き合うことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 予定や大切なことをメモに残し、いつも見える場所に置く
- 毎日の睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 過度の飲酒を避ける
- 服薬している人は、お薬手帳(くすりてちょう)を活用して薬の種類を管理する
- 無理をせず、家族や友人に記憶のことで困っていることを伝える
医療治療
原因となる病気の治療や、薬の見直し、心理的なサポートなどが行われます。うつ病や不安がある場合には、医師の指導のもとで治療がすすめられます。記憶障害そのものを治すというより、背景にある脳や心の状態を整え、生活のしづらさを減らすことを目指します。薬の種類や量は必ず医師と相談して決めてください。
手術が検討される場合
記憶障害の原因が脳の出血・硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ、脳のまくの下に血がたまる状態)や脳腫瘍(のうしゅよう)による場合には、脳神経外科の医師による手術が必要になることがあります。ただし、多くの記憶障害は手術ではなく、原因の治療やリハビリテーション、生活のサポートで対応します。
この病気と共に生きる
記憶障害があると、毎日の予定や家事、人間関係で困ることがあります。小さな工夫を積み重ねることで、安心して暮らせることが増えます。物の置き場所を決める、カレンダーに予定を書く、財布や鍵は同じ場所に置くなどの工夫が役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを保つ
- ウォーキングなど、無理のない範囲で体を動かす
- 人と会話する、趣味を楽しむなど、心が元気になる活動をもつ
- アルコールを控え、禁煙を考える
- 夜は明るい画面を避けて、しっかり眠る時間を確保する
食事と運動
バランスのよい食事をとることは、脳と体の健康の基本です。野菜や果物、魚などをふだんの食事に取り入れ、食べすぎ・のみすぎに注意しましょう。運動は血のめぐりをよくし、ストレスの軽減にもつながります。かかりつけ医に運動の目安を聞いてから始めると安心です。
精神的健康と心の健康
物忘れが増えると「自分はだめになった」と感じ、落ち込んだり不安になったりすることがあります。その気持ちは自然なものです。ひとりで抱え込まず、家族や友人、医師に話すことが大切です。記憶のことで失敗しても、自分を責めず、できることに目を向けましょう。
予防
すべての記憶障害を予防することはできません。しかし、頭部のけがを防ぐ工夫や、脳卒中のリスク(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)を管理することは、記憶障害の予防につながります。また、十分な睡眠、バランスのよい食事、適度な運動、人との交流などの健康的な生活習慣は、脳の働きを保つ助けになります。
ワクチン
日常生活を健康的に保つための公的なワクチン(高齢者の肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど)は、かかりつけ医と相談して受けることがすすめられます。ただし、これらが記憶障害を直接予防するわけではありません。
検診プログラム
特定の記憶障害のスクリーニング検査が、健康診断の一部として行われることはあまり多くありません。記憶力の低下が気になり始めたら、ぜひ早めにかかりつけ医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 日常生活での失敗や事故(火の消し忘れ、交通まちがいなど)につながることがある
- 食事を忘れたり、薬をのみ忘れたりして体調をくずすことがある
- 仕事や家事、人間関係に支障が出て、社会から孤立してしまうことがある
- うつ症状が悪化したり、不安が強くなったりすることがある
長期的な見通し
記憶障害の経過は原因によって大きく異なります。ストレスや薬、うつ病、睡眠の問題が原因の場合は、適切な対応で改善することが十分期待できます。認知症による記憶障害でも、薬やリハビリ、生活の工夫、周りの人の理解によって、その人らしい生活を続けられることが多くあります。思いやりのある支援と適切な医療があれば、希望はあります。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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