肛門がん(こうもんがん)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肛門がんとは、肛門(排せつ物を体外に出す最後の出口の部分)の組織にできるがんのことです。早期に見つかって適切な治療を受けると、治る可能性が高いがんです。
重要な事実
- 肛門がんは比較的まれながんで、大腸がんなどよりかかる人の数は少ない。
- ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染がリスクを高めることが分かっている。
- 早期発見・早期治療がとても大切で、早い段階なら治る可能性が高い。
日本では肛門がんはがん全体の中でもまれな部類に入ります。しかし、最近は増加傾向にあるという報告もあります。
50歳以上、特に女性にやや多くみられますが、男性でもかかることがあります。若い人でもまれに発症するため、気になる症状があれば年齢に関係なく医療機関を受診しましょう。
症状
- 大量に出血が止まらない
- 肛門から激しい痛みが続く、または急に痛み出した
- 排便がまったくできない、便とガスも出ない
- ⚠肛門からの出血が数日続く
- ⚠しこりが大きくなっている、痛みや発熱を伴う
- ⚠いつもと違う便通が続く(便秘や下痢)
一般的な症状
- 肛門からの出血
- 肛門のかゆみ
- 肛門のしこり(触って分かるこぶのようなもの)
- 肛門の痛みや違和感
- 排便時の痛み、いきんだ感じ
- 便が細くなる、残便感
子供の症状
- 肛門がんは子どもにはほとんどみられません。ただし、子どもの肛門からの出血や痛みは、便秘や傷が原因であることが多いものの、安心のため医師に相談しましょう。
高齢者の症状
- 高齢者では痛みを感じにくかったり、症状を伝えにくかったりすることがあります。肛門からの出血、下痢や便秘が続く、体重が減るなどの変化に気づいたら、早めに受診しましょう。
原因
主な原因
- ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が肛門がんの主な原因のひとつとされています。
- 喫煙(たばこ)が関連していることも分かっています。
- 免疫力が低下している状態(長期間の免疫抑制薬使用やHIV感染など)はリスクを高める可能性があります。
リスク要因
- 性行為によるHPV感染
- 長期の喫煙
- 免疫機能が低下する状態(臓器移植後や免疫抑制薬、HIV感染など)
- 複数の性パートナーがある場合
- 過去に子宮頸がんや肛門周囲の病変があった場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 肛門の出血が繰り返したり、量が増えたりしている
- 肛門のしこりが触れて大きくなっている
- 排便時の痛みが続いて日常生活に支障をきたしている
定期受診を予約すべき場合:
- 肛門のかゆみや違和感が1週間以上続いている
- 痔だと思っていたのに症状が良くならない
- 便通の変化(便秘や下痢が続く)を感じる
診断
肛門がんは、医師が肛門の観察と触診(指で触れて確認する検査)を行い、必要に応じて組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査で確定診断します。
行われる可能性のある検査
- 肛門鏡検査(肛門を広げて中を観察)
- 直腸診(指で肛門と直腸の中を確認)
- 内視鏡検査(大腸の状態も含めて確認)
- 組織検査(生検:一部の組織を採取して調べる)
- CT・MRI検査(がんの広がりを確認するための画像検査)
診察で予想されること
検査は少し恥ずかしい、あるいは少し痛みを伴うこともありますが、短時間で終わります。医師は患者さんに十分説明した上で進めます。分からないことや不安なことがあれば気軽に質問しましょう。
治療
肛門がんの治療は、がんの大きさ、深さ、リンパ節への広がり、患者さんの年齢や体力などを考慮して、医師と患者さんが一緒に決めていきます。代表的な治療法には、手術、放射線治療、薬物療法があります。
自宅でのセルフケア
- 治療中は十分に休息をとり、無理をしない
- 治療後や手術後の傷を清潔に保ち、感染に注意する
- 便秘や下痢を防ぐため、水分を十分に取り、バランスのよい食事を心がける
- 医師に相談せずに、市販の軟膏などを勝手に使わない
医療治療
治療は大きく分けて、がんを切り取る手術と、放射線を使う放射線治療があります。進行に応じて、がん細胞を抑える薬による薬物療法(化学療法や免疫療法など)を組み合わせることもあります。具体的な治療法は病状によって異なるため、担当医の説明をよく聞いて、納得した上で選びましょう。
手術が検討される場合
早期のがんでは、がんのある部分だけを切り取る手術で済むことがあります。進行したがんでは、肛門を全部取り除き、人工肛門(ストーマ)を作る手術が必要になる場合もありますが、がんのタイプによっては放射線治療や薬物療法で手術を避けられることもあります。
この病気と共に生きる
治療後は、排便の感じ方や回数が変わることがあります。また、人工肛門(ストーマ)を造った場合は、そのお手入れに慣れるまで時間がかかることもあります。医療者や家族に相談しながら、自分に合った生活のペースを見つけていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙(たばこをやめる)
- 適度な運動を続ける
- 睡眠をしっかりとり、ストレスをためない
- 定期的に医療機関を受診し、経過をチェックする
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、食物繊維(野菜や果物、海藻類など)と水分を十分にとりましょう。ただし、治療中は下痢や便秘など食材が合わないこともあるため、無理なく、自分に合った食べ方を工夫しましょう。いきむ便秘を避けるため、軽いウォーキングなどの適度な運動も勧められます。
精神的健康と心の健康
がんと診断されると、不安や落ち込み、恐怖を感じるのは自然なことです。無理に我慢せず、家族や友人、医療者に気持ちを話しましょう。不安が強く続く場合は、心のケアの専門家(精神科医や臨床心理士)に相談することも大切です。
予防
肛門がんを完全に予防する方法はありませんが、HPV感染や喫煙などのリスクを避けることで、かかる可能性を減らすことができます。定期的に症状をチェックし、異常があれば早めに受診することが早期発見につながります。
ワクチン
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんだけでなく、肛門がん予防にも有効とされています。日本では、厚生労働省が推奨する予防接種の対象となる場合があります。接種を検討される場合は、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
肛門がんを対象にした一般的な検診はありません。気になる症状がある場合は、自己判断せずに医師の診察を受けましょう。また、肛門性交の経験がある方や免疫力が低下している方は、定期受診の際に相談することをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- がんが周囲の組織や臓器に広がる
- リンパ節に転移する
- がんが尿道や膣(女性の場合)などに広がって、排せつや排尿にトラブルが出る
- 遠くの臓器(肝臓や肺など)に転移する
長期的な見通し
肛門がんは早期に発見できた場合、治る可能性が高いがんのひとつです。近年は放射線治療や薬物療法も進歩しているため、手術を避けられる人も増えています。たとえ進行していても、治療法は複数あります。希望を持って、医師としっかり話し合いながら治療に取り組むことが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月2日
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