動物や人に咬まれたとき(咬傷)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
動物に咬まれた傷や、人の歯による傷のことを「咬傷」といいます。皮膚が破れると、口の中の細菌が傷口から入り、感染症を起こすことがあります。きちんと手当てをすれば、多くは軽症で治ります。
重要な事実
- 咬傷は、犬や猫などの動物だけでなく、人に咬まれてできることもあります。
- 感染を防ぐためには、早めに傷口をよく洗うことがとても大切です。
- 動物から破傷風や狂犬病、人からB型・C型肝炎などがうつる可能性があるため、医師の診察が必要な場合があります。
- 正しい知識と予防方法で、咬傷の多くは回避できます。
犬や猫などの咬傷は、日本でも日常的なけがの一つとして報告されている身近な事故です。特に子どもや動物と触れ合う機会の多い人に多く見られます。
年齢を問わず誰にでも起こりますが、小さな子どもは動物に近づきすぎたり、動物が驚くような行動をしたりしやすいため、顔や頭を咬まれることが多い傾向があります。高齢者は皮膚が弱く、感染のリスクが高まります。
症状
- 傷口から大量に出血している、止血できない
- 咬まれた後、息苦しい、意識がもうろうとしている
- 傷口が深く、骨や腱が見える、または筋肉が飛び出している
- 手足が動かない、しびれる、感覚がない
- 野生の動物や、異常な行動をする動物に咬まれた(狂犬病の疑い)
- 傷口から赤みや腫れが急速に広がっている、または高熱や寒気がある
- ⚠皮膚を破る咬傷(どんなものでも)
- ⚠咬まれた場所が手、足の関節、顔、首など特に感染しやすい部位
- ⚠破傷風の予防接種から10年以上経過している、または接種歴が不明
- ⚠動物に咬まれた場合(特に犬、猫、野生動物)
- ⚠人に咬まれ、皮膚に傷がついた場合
- ⚠傷口が汚れていたり、異物が入っている場合
- ⚠免疫力が低下する病気や薬を使用している場合
一般的な症状
- 咬まれた部分の痛み
- 出血や傷口の腫れ
- 皮膚が赤くなる、温かくなる
- 傷口から膿(うみ)が出る
- 熱がある、体がだるい(感染症のサイン)
子供の症状
- 痛みを強く訴え、泣き続けることがあります。
- 小さな子は顔やすねなど、見える場所を咬まれやすい傾向があります。
- 傷口がなかなか治らない、腫れが強い場合は注意が必要です。
- 怖がりすぎて、噛んだ人や動物のことをうまく話せないこともあります。
高齢者の症状
- 皮膚が薄く、傷が深くなりやすいため重症化しやすいです。
- 感染が起きても、赤みや腫れなど典型的なサインが出にくいことがあります。
- 持病(糖尿病など)があると、傷の治りが遅くなることがあります。
- 高齢者は破傷風の予防接種が切れていることも多く、確認が必要です。
原因
主な原因
- 犬や猫などのペットに咬まれる
- 野生の動物(アライグマ、コウモリ、イノシシなど)に咬まれる
- 仕事やレジャーで動物と接する機会に咬まれる
- けんかや事故などで、人に咬まれる
- 自身が興奮した状態で、自分の手や腕を咬んでしまう(自傷行為)
リスク要因
- 子どもの無防備な行動(噛みつく動物に顔を近づけるなど)
- 動物を飼育している、または動物と頻繁に触れる職業
- 高齢者や皮膚の弱い人
- 糖尿病など免疫力を低下させる持病がある人
- 破傷風ワクチンが更新されていない人
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚を破る咬傷は、原則として医療機関を受診してください。
- 咬まれた場所が手、顔、首、足などの関節部にある場合は、すぐに受診しましょう。
- 動物に咬まれた場合、特に野生動物や予防接種をしていないペットの場合は、受診が必要です。
- 人に咬まれた場合も、感染症のリスクがあるため、医療機関での確認をおすすめします。
- 破傷風の予防接種が10年以上前の場合は、48時間以内に医療機関で対応してもらいましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- 小さなかすり傷で、出血が止まり、汚れがはっきりしていて、すぐに水で洗った場合でも、感染の有無を確認するために翌日までには受診しましょう。
- ペットに咬まれて軽い傷のような場合でも、動物由来の感染症の可能性があるため、医療機関で相談することをおすすめします。
診断
医師はまず、傷の状態を詳しく診察し、いつ、どんな動物に咬まれたのか、動物の予防接種状況(狂犬病や破傷風など)や、自分の予防接種歴について質問します。傷の深さや異物の有無、神経や腱の損傷がないかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 必要に応じて、傷口の細菌を調べる培養検査を行います。
- 深い傷や骨や関節の損傷が疑われる場合は、X線(レントゲン)検査を行うことがあります。
- 血液検査で感染の程度を調べることもあります。
- 動物の種類や状況に応じて、狂犬病や破傷風などの感染症のリスクを評価します。
診察で予想されること
診察では、まず傷口をきれいに洗浄し、消毒します。そのあと、医師が感染予防のために抗生物質(抗菌薬)を処方するかどうか判断します。破傷風ワクチンの追加接種が必要な場合は、その場で説明があります。診察後は、傷の手当ての方法や注意すべき症状について説明を受けます。
治療
咬傷の治療は、「傷をきれいにする」「感染を防ぐ」「傷をきちんと治す」ことが柱です。軽度の傷は、洗浄して保護するだけでよくなることもありますが、感染のリスクがある場合は、抗生物質やワクチンなどの医療処置が必要になります。
自宅でのセルフケア
- まず、流水で傷口をよく洗い流しましょう。可能であれば、石けんを使って10分以上かけてやさしく洗うと、細菌やウイルスを洗い流せます。
- 止血が必要な場合は、清潔な布やガーゼで傷口を圧迫して止血しましょう。
- 乾燥させた後、清潔なガーゼや絆創膏で覆い、汚れが入らないようにしましょう。
- 様子を見るときは、赤み、腫れ、熱感、痛みの増悪、膿が出るなどの感染の兆候に注意してください。
医療治療
医師は、感染リスクを評価し、抗菌薬(抗生物質)を処方する場合があります。また、破傷風ワクチンの追加接種や、動物の状況に応じて狂犬病ワクチンなどの予防接種を行うことがあります。傷が深い場合や感染が強い場合は、傷口の洗浄や切除が必要になることもあります。すべて医師が個々の状況に応じて判断します。
手術が検討される場合
深い傷で骨や腱、神経などに損傷がある場合や、異物が残っている場合は、手術による洗浄や修復が必要になることがあります。また、重度の感染で組織が壊死(えし)した場合は、外科的な処置が必要になる場合があります。
この病気と共に生きる
治療を受けた後は、医師から指示された傷の手当てを正しく行ってください。傷を濡らさないようにし、包帯やガーゼが汚れたら早めに交換しましょう。腫れや痛みが続く場合は、無理をせずに医療機関に相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 傷を清潔に保ち、アルコールを控えるなど、感染を防ぐ生活を心がけましょう。
- 手はよく洗い、ほかの人に感染を広げないようにしましょう。特に人に咬まれた傷は、B型肝炎やC型肝炎などを媒介する可能性があります。
- ペットを飼っている場合は、ペットの予防接種を定期的に受けさせ、動物と安全に付き合うルールを守りましょう。
食事と運動
傷の治りを良くするために、バランスの良い食事を心がけましょう。特にたんぱく質やビタミンCを多く含む食品(肉、魚、卵、大豆、野菜、果物など)は、肌の修復を助けます。激しい運動は血行を促進し、腫れや出血を悪化させることがあるため、しばらくは控えめにし、体調を整えましょう。
精神的健康と心の健康
特に動物に襲われた体験や、人に咬まれたことで強い恐怖心や不安、不快感が残ることがあります。これは自然な反応です。時間が経っても気持ちのつらさが続く場合は、我慢せずに医療機関や相談機関で話してください。あなたは悪くありません。
予防
咬傷の多くは事故を避けることで防げます。子どもには、動物の体に触るときのマナーを教え、動物が食事中や寝ているときは近づけないようにしましょう。不慣れな動物にはむやみに近づかない、手を出さないことが大切です。
ワクチン
破傷風ワクチンは定期的に更新することが推奨されています。また、動物に咬まれた場合は、狂犬病ワクチンの接種が検討されることがあります。これらのワクチンについては、かかりつけ医や自治体の健康相談で確認してください。
合併症
治療しない場合
- 傷口が細菌に感染して、赤く腫れ、膿が出る蜂窩織炎(ほうかしきえん)などを起こすことがあります。
- 感染が深部に広がると、骨や関節の感染症(骨髄炎、化膿性関節炎)を引き起こすことがあります。
- まれに、細菌が血液を通じて全身に広がり、敗血症という重い状態になることがあり、命に関わることもあります。
- 破傷風にかかると、筋肉がけいれんし、呼吸が困難になることがあります。
- 狂犬病は発症すると極めて重篤で、多くの場合命を落とします。動物に咬まれた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
- 人に咬まれて血液を介してうつる病気(B型肝炎やC型肝炎など)に感染する可能性があります。
長期的な見通し
多くの咬傷は、適切な手当てと医療的なケアを受ければ、綺麗に治ります。感染症のリスクは、早期に正しい治療を行うことで大きく減らせます。もし何か気になる症状があっても、早めに医師に相談すれば、ほとんどの合併症は予防できるので、どうか安心してください。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
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