薬剤耐性菌について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
薬剤耐性菌(やくざいたいせいきん)とは、抗菌薬(こうきんざい、抗生物質)が効きにくくなった細菌のことです。細菌が変化して薬に負けない力を身につけることで、普通なら治る感染症が治りにくくなります。
重要な事実
- 抗菌薬の不適切な使用が、薬剤耐性菌を増やす最大の原因です。
- 手洗いやワクチンなどで感染を予防することが、耐性菌の広がりを防ぎます。
- 日本では厚生労働省が『薬剤耐性対策アクションプラン』を進めています。
- 耐性菌は誰にでも影響する可能性がありますが、正しい医療を受ければ対処できます。
薬剤耐性菌は世界中で増加しており、日本の医療現場でも注意が必要な問題です。ただし、抗菌薬を正しく使えば、耐性菌の広がりは抑えられます。
高齢者、乳幼児、免疫力が弱っている人、慢性の病気のある人、長期入院している人などは特に感染しやすく、重症化しやすいです。健康な人でも、抗菌薬を繰り返し使うことで耐性菌に感染するリスクが高まります。
症状
- 呼吸がひどく苦しい、話すこともつらい
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- けいれんが止まらない
- 顔色が青白い、唇が紫っぽい
- 冷や汗が出る、脈が速いなどショックの症状
- これらの症状がある場合は、すぐに119番に電話してください。
- ⚠抗菌薬を飲んでいるのに高熱が3日以上続く
- ⚠激しい痛みがある
- ⚠水分が取れない、尿が出にくい
- ⚠息苦しさが強くなってきた
- ⚠新しい発疹が広がる
- ⚠これらの症状がある場合は、当日中に医療機関を受診してください。
一般的な症状
- 抗菌薬が効かない細菌に感染しても、症状は普通の感染症と区別がつきにくいです。発熱、咳、のどの痛み、下痢、排尿時の痛み、傷の赤みやはれ、膿(うみ)などが出ます。
- 抗菌薬を飲み始めても症状が改善しない、または一度良くなってまた悪くなる場合は、耐性菌の可能性を考えます。
子供の症状
- 子どもでは、ぐったりする、機嫌が悪く泣き続ける、母乳やミルクを飲まない、吐き続ける、発熱が長引くなどのサインがあります。
- いつもと違う様子が見られたら注意しましょう。
高齢者の症状
- 高齢者では、急に元気がなくなる、ぼんやりする、食欲が落ちる、トイレに行く回数が変わる、転びやすくなるなどの症状が、感染症のサインになることがあります。
- 熱が高くないこともあるため、注意が必要です。
原因
主な原因
- 細菌が遺伝子の変化(突然変異)などで抗菌薬に耐える仕組みを身につけること
- 抗菌薬を必要ないときに使う、病気に合わない抗菌薬を使う、途中でやめるなど、不適切な使用によって耐性菌が選ばれて増えること
- 農業や畜産での抗菌薬の使用が、環境や食肉を通じて耐性菌の広がりに影響することがあること
リスク要因
- 最近(数か月以内)の抗菌薬の使用
- 長期間の入院や、介護施設への入所
- 免疫力を下げる病気や治療(がん治療、臓器移植後など)
- 海外で入院または医療を受けたことがある
- カテーテルや人工呼吸器などの器具を使う医療処置を受けたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 抗菌薬を飲んでも症状が悪化する
- 40度近くの高熱が続く
- 息苦しい、胸が痛い
- 意識がはっきりしない、ぼんやりする
- おしっこが止まった、激しい頭痛や嘔吐がある
- これらの場合は、緊急性があります。電話で指示をあおぐか、すぐに受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 風邪症状が2週間以上続く
- 痰や鼻水の色が濃くなり治らない
- 傷や皮膚の赤み、はれ、痛みが治まらない
- 感染症を繰り返す
- このような場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
診断
医師は、あなたの症状、体調の変化、抗菌薬の使用歴、入院歴などを丁寧に聞き、感染している可能性がある場所に合わせて検査を行います。抗菌薬の効果が悪い場合は、耐性菌かどうかを確認するための検査がすすめられます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度や白血球の数を調べます)
- 尿検査(尿路感染症の原因菌を調べます)
- 痰やのどぬぐい液の培養検査(気道の感染症で行われます)
- 傷の分泌物や膿の培養検査
- 薬剤感受性検査(どの抗菌薬が効くかを調べます)
診察で予想されること
培養検査の結果が出るまでに2~3日かかります。それまでは、医師の判断で広い範囲に効く抗菌薬を使い始めることがあります。結果が出たら、あなたの菌に最も適した薬へ変わる場合があります。薬は必ず処方通りに飲んでください。
治療
治療の目標は、感染している細菌を確実に退治し、耐性菌がさらに広がらないようにすることです。培養検査の結果をふまえて、あなたの細菌に効果が期待できる抗菌薬を選びます。原因菌や感染場所、重症度によって治療期間や方法が変わります。
自宅でのセルフケア
- 処方された抗菌薬は、医師の指示通りに、最後まで飲み切る(自己判断で止めない)
- 水分を十分に取り、体を休める
- 発熱のつらさがある場合は、医師や薬剤師に相談して解熱薬を使う
- 手洗いや咳エチケットで周りの人にうつさないよう配慮する
- 肌や傷を清潔に保つ
医療治療
抗菌薬の選択は、感受性検査の結果に基づいて行われます。効果のある抗菌薬を十分な量と期間、適切な方法で使います。重症の場合は入院して点滴治療を行うこともあります。新しい抗菌薬や複数の薬を組み合わせた治療が検討される場合もあります。すべての治療は医師の判断の下で行われます。
手術が検討される場合
感染の周りに膿がたまっている場合は、切開して膿を出す処置(排膿)が必要になることがあります。また、感染の原因になっているカテーテルや人工関節などの異物を抜去する必要がある場合もあります。
この病気と共に生きる
治療中は、薬の服用時間や体調の変化をメモに残しましょう。症状が良くなっても勝手に薬をやめると、耐性菌が再び増えて治りにくくなります。医師の指示を守ることが、生活を元に戻す近道です。
生活習慣のアドバイス
- こまめな手洗い(石けんを使い、水でよく流す)
- せきやくしゃみをするときはマスクやハンカチで口を覆う
- タオルや食器を家族と共有しないようにする
- 体調が悪い間は人混みを避ける
- 十分な睡眠と休息を心がける
食事と運動
治療中は、消化の良い食事と十分な水分で体力を維持しましょう。あせらず、医師の許可が出るまでは激しい運動を避け、散歩などの軽い運動から少しずつ再開します。
精神的健康と心の健康
抗菌薬が効かない感染症は、完治の不安や周囲にうつしてしまう心配など、精神的な負担につながります。つらいときは一人で抱え込まず、家族や友人、医師や看護師に話しましょう。強い不安や抑うつで生活に影響がある場合は、こころの健康相談窓口(各都道府県の相談ダイヤル)を利用するか、医師に相談してください。
予防
薬剤耐性菌の広がりは、人間の行動で大きく予防できます。抗菌薬を処方されたときは指示通りに使うこと、不必要に使わないことが最も大切です。また、手洗い、うがい、咳エチケット、適切な傷の手当てを習慣にすると、感染症自体を防げます。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種は、ウイルスや細菌の感染を予防し、抗菌薬を使う機会を減らす効果があります。接種が推奨されるワクチンについては、医師や自治体の案内を参考にしてください。
検診プログラム
入院や手術の際に、耐性菌を持っていないかを調べる検査が行われることがあります(保菌検査)。自分では気づかないまま耐性菌を持っている場合もあるため、医療機関ですすめられた検査は受けることをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 感染が全身に広がる敗血症(菌が血液中に入り、全身の臓器に障害が起きる)
- 肺炎の重症化や呼吸不全
- 尿路感染症から腎盂腎炎(じんうじんえん)への悪化
- 傷の感染が深部に広がり、骨や関節に感染する
- 治療に使える薬が限られることで、入院期間が長くなる
長期的な見通し
薬剤耐性菌は確かに増えていますが、日本の医療現場では、培養検査による原因菌の特定や、地域での抗菌薬使用の取り組みが進められています。新しい治療法や薬の研究も続いており、適切な医療につながれば多くの感染症は治ります。予防と正しい受診を心がけることで、あなた自身と周りの人を守ることができます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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