失語症(しつごしょう)について知ろう
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
失語症とは、脳の一部が傷ついたことで、言葉の使い方や理解に障害が出る状態です。しゃべる、聞いてわかる、読む、書く、といったことが難しくなります。これは「知能の問題」ではなく、あくまで言葉の機能が損なわれる病気です。
重要な事実
- 多くは脳卒中(脳梗塞や脳出血)が原因で起こります
- 失語症があっても、本人の知性や感情は今までどおりです
- 言語聴覚士によるリハビリテーション(訓練)が回復に役立ちます
- 時間とともに症状が改善することが少なくありません
- 周囲の理解と優しいコミュニケーションがとても大切です
失語症は誰にでも起こる可能性がありますが、とくに脳卒中を経験した方の約3割に何らかの失語症症状が出ると言われています。あまりなじみがありませんが、決してまれな病気ではありません。
年齢を問わず起こりえますが、脳卒中の多い中高年以降に多く見られます。脳卒中以外にも、けがや脳腫瘍などで脳が傷つくと、若い人や子どもでも起こることがあります。
症状
- 突然、言葉が話せなくなる
- 突然、相手の言っていることが理解できなくなる
- ろれつが回らない、言葉がでてこない
- 顔の片側のまひ、片方の手・足の力が入らない
- 激しい頭痛とともに言葉の障害がある
- 意識がもうろうとしている
- これらの症状があるときは、すぐに救急車を呼んでください(119番)
- ⚠頭をぶつけたあとに、言葉の症状が現れた
- ⚠数時間から数日かけて、だんだん言葉が出にくくなっている
- ⚠失語症の症状が新しく増えたり、悪化したりしている
- ⚠これらの場合は、当日中に医療機関を受診してください
一般的な症状
- 言葉が思い出せず、うまく話せない
- 話そうとしても、言葉がでてこない、またはとぎれとぎれになる
- 「テレビ」を「ベレビ」など、音を間違えることがある
- 聞いているのに、相手の話の意味がわからない
- 簡単な文を読んだり書いたりすることが難しい
- たどたどしい話し方になったり、無意識のことば(ひとりごと)が出たりする
子供の症状
- 子どもでは、ことばの遅れやことばの誤りが見られることがあります
- 指示が通らない、授業の内容が理解できないなど、学習面の困難として気づかれることがあります
- 頭を打ったあとに突然、言葉の変化が現れたら注意が必要です
高齢者の症状
- 高齢者では、脳卒中後に急に話し方がおかしくなったり、会話がかみ合わなくなったりします
- 混乱や認知症と見誤られることもありますが、失語症は「わからない」のではなく「言葉がつながらない」状態です
- 日によって症状の出方が変わることもあります
原因
主な原因
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血など)が最も多い原因です
- 頭部の外傷(交通事故、転倒など)による脳の損傷
- 脳腫瘍(のうしゅよう)が言葉を司る部分を圧迫する
- 脳炎や髄膜炎などの感染症が脳に影響を及ぼす
- 一過性脳虚血発作(TIA)のように、一時的に脳の血流が減る場合
リスク要因
- 高血圧(こうけつあつ)
- 糖尿病(とうにょうびょう)
- 脂質異常症(ししついじょうしょう)
- 喫煙(タバコを吸うこと)
- 心房細動など心臓の病気
- 運動不足や肥満
- 高齢であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然、言葉の障害が始まった場合は、救急車を呼んでください(119番)
- 数時間で症状が悪化する場合も、救急受診が必要です
- 頭をぶつけて症状が出た場合は、その日のうちに受診してください
定期受診を予約すべき場合:
- 言葉がうまく出てこないことが、日々続く場合
- 家族から見て、明らかに以前より話し方がおかしいと感じる場合
- ゆっくりなら話せるが、簡単な言葉を理解するのが難しいと感じる場合
- 脳卒中後など、気になる症状がある場合は、早めに主治医や専門医に相談してください
診断
失語症は、医学的診察と言語療法士による言語の評価を組み合わせて診断されます。まずは、脳卒中や脳のけがなど、原因となる病気がないかを調べ、そのあと、話す・聞く・読む・書く力を専門的な検査で確認します。
行われる可能性のある検査
- 脳の画像検査(CT・MRI): 脳の損傷している場所を確認します
- 言語機能検査: 呼称(ことばを思い出す)、復唱、理解、読み書きなどの力を評価します
- 神経学的診察: 手足の動きや感覚、反射などもあわせて確認します
- 血液検査: 脳卒中の原因となりうる病気を調べるために行うことがあります
診察で予想されること
診断は、神経内科やリハビリテーション科の医師と言語聴覚士が協力して行います。問診と検査には数時間から1日程度かかることがあります。画像検査で原因を調べるので、じっとしている必要がある検査もありますが、痛みはありません。診断後は、リハビリテーションの方針を一緒に決めていきます。
治療
失語症の治療は、大きく分けて「原因となる病気の治療」と「言葉のリハビリテーション」の二本立てです。原因が脳卒中や外傷なら、その治療・再発予防が最優先されます。言葉の回復には、言語聴覚士による訓練が中心となり、本人だけでなく家族も参加して進められることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 無理に話そうとせず、リラックスして伝えようとする
- 絵カードや文字盤、スマートフォンのアプリなどを使って伝える方法も試してみる
- 家族や友人には、ゆっくり話してもらい、うなずいてもらうだけで安心できる
- 一人で悩み込まず、話しやすい環境をつくる
- 毎日短時間でも、言葉の練習を続ける
医療治療
失語症に特化した薬はありませんが、原因となっている脳卒中や脳腫瘍などに対する治療がまず行われます。たとえば、脳卒中の再発を防ぐ薬や、血圧・血糖をコントロールする薬が処方されることがあります。これらの薬は医師の指示に従って使用してください。言語の回復を助ける「言語聴覚療法」という専門的なリハビリテーションも、医療機関や施設で受けることができます。
手術が検討される場合
失語症そのものに対する手術はありません。ただし、原因となる病気(脳の出血や腫瘍など)に対して手術が必要な場合があります。この場合は、脳神経外科の医師が適切かどうかを判断します。
この病気と共に生きる
失語症があっても、自分らしい生活を続けることができます。伝える手段を工夫し、まわりの人に理解を求めながら、できることから少しずつ取り組むことが大切です。焦らず、回復には時間がかかることを受け入れ、本人のペースを尊重しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と休息をとる
- 血圧や血糖を管理する(医師の指示に従う)
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
- 家族や友人との時間を大切にする
- 絵や音楽、趣味など、言葉以外の表現を楽しむ
食事と運動
脳卒中の再発予防のために、バランスのよい食事を心がけ、塩分をとりすぎないようにしましょう。野菜や魚を中心とした日本の食事は一般的に良いと言われます。運動は医師の許可がある範囲で、散歩や軽い体操などの有酸素運動を週に数回行うことがおすすめです。言語機能の回復には全身の健康も関係します。
精神的健康と心の健康
言葉がうまく伝わらないと、相手に理解してもらえず、孤独感やいらだち、抑うつ(気持ちが落ち込むこと)を感じることがあります。そうした気持ちは自然な反応です。無理をせず、家族や専門家にその気持ちを話すことが大切です。うつ状態が続く場合は、医師や心理士に相談しましょう。
予防
失語症そのものを完全に予防する方法はありませんが、原因となる脳卒中を予防することで、失語症のリスクを大きく減らすことができます。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病をきちんと治療し、喫煙をやめ、バランスのよい食事と適度な運動を心がけましょう。
ワクチン
失語症に直接関係するワクチンはありませんが、感染症が脳に影響を及ぼすことを避けるため、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど、基礎疾患のある方に推奨される予防接種を検討してもよいでしょう。接種については医師に相談してください。
検診プログラム
失語症のための特別な検診はありません。脳卒中は「突然の症状」で始まることが多いため、日頃から血圧や体調をチェックし、異常を感じたらすぐに受診することが、重症化を防ぐ一番の方法です。
合併症
治療しない場合
- コミュニケーションが難しく、家庭や社会生活の中で孤独感が強まることがあります
- うつ状態や不安が生じることがあります
- 日常生活の意思決定や、金銭管理・薬の管理などが困難になる場合があります
- 適切なリハビリを受けられないと、回復に時間がかかることがあります
長期的な見通し
失語症の経過は人によってさまざまですが、多くの方は発症から数か月以内に大きな改善が見られます。リハビリを早く始めるほど、回復の可能性は高いと言われています。たとえ完全な回復が難しくても、言葉以外の方法でコミュニケーションを取る力を身につけることで、日常生活や社会参加は十分可能です。希望を持って、一歩ずつ進んでいきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月2日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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