虫垂切除術(盲腸の手術)について
概要
虫垂切除術は、おなかの右下にある虫垂(ちゅうすい)という小さな袋状の臓器を、手術で取り除く治療法です。虫垂が炎症を起こして腫れることを虫垂炎(盲腸とも呼ばれます)といい、このままにしておくと破れる危険があるため、多くの場合手術が必要になります。
重要な事実
- 虫垂は大腸の一部にある小さな臓器ですが、なくても日常生活にほとんど支障はありません。
- 虫垂炎は、早く見つけて手術をすれば、多くの人が問題なく回復します。
- 手術後は数日で退院できることが多く、数週間で元の生活に戻れる人がほとんどです。
虫垂炎は日本でもよくある病気のひとつで、10人に1人ほどが一生のうちに経験すると言われています。痛みなどの症状がある場合は、早めに受診することが大切です。
10代から30代に特に多く、男性にやや多い傾向があります。ただし、乳幼児や高齢者を含め、どの年齢でも起こる可能性があります。
症状
- がまんできないほど急で強いおなかの痛みがある
- おなか全体が硬く張り、激しく痛む
- 冷や汗が出る、意識がもうろうとする
- 何度も吐いて水分もとれない
- ⚠右下腹部の痛みが続く、またはだんだん強くなる
- ⚠発熱と吐き気があり、おなかの痛みをともなう
- ⚠痛みが数時間続いておさまらない
一般的な症状
- みぞおちやおへそのあたりの痛みが、時間とともに右下腹部へ移動する
- 食欲がなくなる
- 吐き気や嘔吐がある
- 37度から38度くらいの熱が出る
- 下痢や便秘をともなうことがある
子供の症状
- 痛みの場所をうまく言えず、おなか全体を痛がる
- 吐く、熱が出る、ぐったりしている
- おなかを触られるのを嫌がる
高齢者の症状
- 痛みが弱く、はっきりした症状が出ないことがある
- おなかが張る、だるい、食欲がないなど、いつもと違う様子
- 発熱が軽いこともある
原因
主な原因
- 虫垂の入り口が、便のかけらや細菌のかたまりなどでふさがると、その中で細菌が増えて炎症が起こると考えられています。
- 風邪や胃腸炎のあとに起こることがありますが、はっきりした原因がわからない場合も多いです。
リスク要因
- 10代から30代の年齢
- 男性であること(やや発症が多い)
- 家族に虫垂炎を経験した人がいる
- 便秘になりやすいこと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 右下腹部の痛みが続く、またはどんどん強くなる場合
- 痛みと一緒に熱や吐き気があり、食事がとれない場合
- 立ったり歩いたりするのがつらい場合
定期受診を予約すべき場合:
- おなかの痛みや吐き気はあるが、急を要する様子ではない場合でも、早めに受診しましょう
診断
医師が問診とおなかの診察を行い、必要に応じて血液検査や画像検査を組み合わせて診断します。診察では、医師がおなかを押して痛みの場所や程度を確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度を調べます)
- 尿検査(他の病気を除外します)
- 超音波(エコー)検査
- CT検査
- 腹部X線検査(必要に応じて)
診察で予想されること
検査は外来で行えることが多く、結果によってはそのまま入院や手術の説明があります。「盲腸かも?」と思ったら、食事や水分をとらずに早めに受診してください。
治療
虫垂炎の治療の中心は、炎症を起こした虫垂を取り除く手術(虫垂切除術)です。軽症の場合には抗菌薬による治療を選ぶこともありますが、再発の可能性があるため、多くの場合は手術が検討されます。治療方針は必ず医師と相談して決めましょう。
自宅でのセルフケア
- 手術後は、医師や看護師の指示に従って、安静と傷のケアをしましょう。
- 抜糸や傷の状態の確認まで、決められた通院を守りましょう。
- 傷の痛みや腫れ、発熱などの異常を感じたら、ためらわずに医療機関へ連絡しましょう。
医療治療
軽症の虫垂炎では、抗菌薬(抗生物質)を使った治療が行われることがあります。ただし、この治療で治ったように見えても、あとで再発することがあります。抗菌薬を使う場合でも、医師が患者さんの状態に合わせて薬の種類や期間を決めるため、自己判断はせず、必ず指示に従いましょう。
手術が検討される場合
虫垂切除術は、全身麻酔で行われ、おなかを大きく切る開腹手術と、腹腔鏡という細い鏡を使う腹腔鏡手術があります。多くの場合は腹腔鏡手術が選ばれ、体への負担が少なく回復が早いことが利点です。症状が重く、虫垂が破れそうな場合は、緊急で手術が必要になることもあります。
この病気と共に生きる
手術後は、入院中に痛みや吐き気をコントロールしながら、早めに歩くことがすすめられます。退院後は、1~2週間は激しい運動や重い物を持つのを避け、仕事や学校は医師の許可が出てから再開しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙をする
- バランスの良い食事と十分な水分を心がける
- 便秘にならないよう、適度な運動と食物繊維を意識する
- 十分な睡眠をとる
食事と運動
術後は、腸の回復に合わせて食事が再開されます。最初は水分から始め、消化の良いものを少しずつ食べて、おなかの調子を見ながら食事量を戻していきます。運動は、まずウォーキングなどの軽い動きから始め、医師に確認しながら少しずつ強度を上げましょう。
精神的健康と心の健康
手術や入院に不安を感じることは自然なことです。家族や友人に気持ちを聞いてもらったり、病院のスタッフ(看護師や医療ソーシャルワーカーなど)に相談してください。もしも強い落ち込みや「自分を傷つけたい」という気持ちが続く場合は、ひとりで抱え込まず、すぐに医療機関に相談しましょう。命の危険がある場合は、ためらわずに119番に電話してください。
予防
虫垂炎の明確な予防法はまだわかっていません。しかし、バランスの良い食事や便秘の予防を心がけて、おなかを良い状態に保つことは役立つと考えられています。
ワクチン
虫垂炎を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
虫垂炎に特化した定期検診はありません。おなかの痛みや違和感が続く場合は、早めに受診することが何より大切です。
合併症
治療しない場合
- 虫垂が破れて、おなかの中に細菌が広がる腹膜炎を起こすことがあります。
- さらに進むと、細菌が血液に入って全身に広がる敗血症という命に関わる状態になることがあります。
- 手術が遅れると、合併症のリスクが高くなります。
長期的な見通し
早期に適切な手術を受ければ、虫垂炎の予後はとても良好です。虫垂がなくても、生活に支障はほとんどありません。手術後は、ほとんどの人が元の生活に戻り、心配なく過ごしています。不安なことは、手術前にしっかり医師に相談して納得したうえで治療に臨みましょう。
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最終更新: 2026年10月21日
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