脾臓がない・働かない(無脾症)について
概要
無脾症とは、体の中で“脾臓(ひぞう)”という臓器がない、または働きが十分でない状態のことです。脾臓はおなかの左上にある臓器で、古くなった赤血球を処理したり、細菌やウイルスから体を守る免疫の一部を担当しています。脾臓がなくても生活はできますが、細菌による感染症にかかりやすくなるため、注意と予防が大切です。
重要な事実
- 脾臓は免疫の重要な役割を担っていますが、なくても生きることはできます。
- 無脾症の人は、特に細菌による重い感染症のリスクが高くなります。
- ワクチン接種や感染症への早めの対応で、多くの合併症は防ぐことができます。
無脾症はまれな状態です。ただし、けがや病気で脾臓を摘出する手術を受ける人は一定数います。
生まれつき脾臓がない人もいれば、事故や病気によって脾臓を摘出した人もいます。どの年齢でも起こり得ますが、特に子どもや高齢者では感染症のリスクが高まります。
症状
- 高熱(38.5度以上)が続く
- 悪寒(ふるえ)がひどい
- 呼吸が速くなる、息苦しい
- 意識がぼんやりする、呼びかけに反応がにぶい
- 急にあらわれた激しい頭痛や吐き気・嘔吐
- 皮膚に赤紫色の斑点(あざのようなもの)が広がる
- ⚠発熱がある(特に脾臓がない人では、すぐに受診してください)
- ⚠悪寒やふるえを伴う
- ⚠のどの痛みやせきがひどくなっている
- ⚠下痢や嘔吐が続く
- ⚠いつもと違う強いだるさを感じる
一般的な症状
- 無脾症そのものによる特有の症状はありません。
- 脾臓がないために、細菌による感染症にかかりやすくなります。
- 感染症にかかると、発熱、悪寒、のどの痛み、せき、下痢などの一般的な症状があらわれることがあります。
子供の症状
- 子どもでは、発熱やぐったりする様子がみられることがあります。
- 普段より元気がなく、泣き方が弱い、母乳やミルクを飲まないなどの変化があらわれることがあります。
- 風邪のような症状から急に重い感染症に進むことがあるため、注意が必要です。
高齢者の症状
- 高齢者では、発熱や倦怠感(だるさ)に加えて、意識がぼんやりする、呼吸が速くなるなどの症状があらわれることがあります。
- 肺炎や尿路感染症など、細菌による感染症にかかりやすくなります。
原因
主な原因
- 外科手術で脾臓を摘出した(例:交通事故などのけが、血液の病気、脾臓の腫瘍、脾臓の破裂など)
- 生まれつき脾臓がない(先天性無脾症)
- 脾臓の機能が低下している(機能的無脾症)。例として、鎌状赤血球症やセリアック病などが挙げられます。
リスク要因
- 脾臓摘出手術を受けたばかりの時期
- 生まれつき脾臓がない場合(特に乳幼児)
- 免疫を抑える治療を受けている
- 高齢である
- 心臓や肺の持病がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱がある場合(特に38度以上の熱)
- 悪寒、ふるえ、息苦しさがある
- いつもと違う強い倦怠感や体調不良がある
- 子どもの場合は、ぐったりしている、反応がにぶいなどの様子がみられる
定期受診を予約すべき場合:
- 脾臓を摘出した後は、退院後の経過確認や感染症予防の相談のため、定期的に受診しましょう。
- ワクチン接種のスケジュールについて、かかりつけ医に相談しましょう。
- 体調に変化がなくても、年に一度は健康チェックを受けることをおすすめします。
診断
無脾症の診断は、脾臓がない(または機能していない)ことを確認することで行われます。生まれつきの場合は出生前の超音波検査で見つかることもありますが、多くは感染症をきっかけに検査を受けて判明します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血液の塗抹標本で、脾臓がないときに現れる特徴的な赤血球の形を調べます)
- 超音波検査(おなかの写真で脾臓の有無や大きさを確認します)
- CT検査やMRI検査(脾臓の状態を詳しく調べます)
- 脾臓の機能を調べる特殊な検査(必要に応じて行われます)
診察で予想されること
診断のためには、まず医師が問診と身体診察を行います。脾臓摘出の手術歴があれば、無脾症と診断されることが多いです。生まれつきの場合は、感染症を繰り返すことをきっかけに検査が行われることもあります。診断後は、感染症予防の計画を立てるために、定期的な通院が必要になります。
治療
無脾症を治す治療法はありませんが、感染症のリスクを下げるための予防策が治療の中心になります。大切なのは、ワクチン接種、感染症の早期発見、そして感染症にかかったときにすぐに医療機関で対応してもらうことです。
自宅でのセルフケア
- 体温をこまめに測り、発熱に早めに気づくようにしましょう。
- 高熱や悪寒などの感染症のサインが現れたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
- 抗生物質を処方された場合は、医師の指示に従って最後まで飲み切りましょう。
- けがや虫刺され、動物に咬まれた場合は、すぐに傷口をきれいにし、医師に相談しましょう。
- 予防接種の記録を手帳などにまとめて、医療機関で提示できるようにしておきましょう。
- 「脾臓がない」ことを伝えるためのカードや医療用のブレスレットを携帯するとよいでしょう。
医療治療
治療の中心は感染症予防です。脾臓がない人は、細菌による感染症を防ぐために、肺炎球菌や髄膜炎菌などのワクチン接種が推奨されます。また、特にリスクが高い人には、長期間の抗生物質の内服(予防内服)が検討されることがあります。感染症にかかった場合には、すぐに点滴や経口の抗生物質による治療が行われます。これらの治療は医師の判断で個別に計画されるもので、自己判断で薬を使うことは避けてください。
手術が検討される場合
無脾症そのものに対する手術はありません。ただし、脾臓が破裂した場合や脾臓の病気がある場合には、脾臓を摘出する手術(脾摘)が行われます。手術後に無脾症になる場合は、術前から感染症予防の計画が必要です。
この病気と共に生きる
無脾症と診断されたら、日常生活では感染症のサインに敏感になることが大切です。発熱や悪寒を感じたら、早めに医療機関を受診する習慣をつけましょう。また、予防接種のスケジュールを守り、旅行や歯科治療などでリスクが高まる場面では、事前に医師に相談することが推奨されます。
生活習慣のアドバイス
- 手洗いやうがいをこまめに行う。
- バランスのよい食事と十分な睡眠で免疫力を保つ。
- 流行性の感染症がはやっている時期は、人混みを避けるなどの工夫をする。
- 傷ができたらすぐに洗って消毒する。
- ペットや動物に咬まれないように注意する。
- マダニや蚊などの虫刺されに注意する。
- 医療機関を受診するときは、必ず「脾臓がないこと」を伝える。
食事と運動
特別な食事制限はありません。ただし、感染症に負けない体を作るために、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけましょう。適度な運動は免疫力を高める効果が期待できますが、無理はせず、自分の体調に合わせて行ってください。
精神的健康と心の健康
無脾症と診断されると、感染症のリスクに対する不安や、日常生活でのとまどいを感じることがあるかもしれません。そうした気持ちは自然なものです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に相談したり、同じ状態の人とつながることも助けになります。心配が続く場合は、心の健康の専門家に相談することも選択肢の一つです。
予防
無脾症そのものを予防することはできませんが、大切なのは「感染症」を予防することです。感染症を予防することで、重い合併症のリスクを大きく下げることができます。
ワクチン
免疫の機能が低下しているため、予防接種は特に重要です。肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ、新型コロナウイルスなどのワクチンが推奨されます。接種の時期や種類は医師と相談して決める必要があり、脾臓を摘出する前または後でスケジュールが変わることがあります。
検診プログラム
脾臓の機能を定期的にチェックする必要があるかどうかは、原因によって異なります。脾臓を摘出した場合は、定期的な健康診断に加えて、かかりつけ医と相談の上でフォローアップ計画を立てましょう。
合併症
治療しない場合
- 脾臓がない場合、重い細菌感染症を起こすリスクが高くなります。特に「脾摘後重症感染症(OPSI)」と呼ばれる状態は、急激に進行して命にかかわることがあります。
- 感染症を繰り返すと、日常の生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
- 肺炎や髄膜炎(脳や脊髄を包む膜の炎症)などの重い感染症を発症するリスクが高まります。
長期的な見通し
無脾症は生涯にわたって注意が必要な状態ですが、ワクチン接種、抗生物質の予防内服、そして感染症への早期対応により、重い合併症は多く防げます。多くの人は、適切な医療とセルフケアを行いながら、普段とほぼ変わらない生活を送っています。最新の医療の助けを借りながら、自分に合った予防計画を続けていけば、不安は減っていきます。
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最終更新: 2026年10月21日
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