アトピー性皮膚炎(アトピー肌)について知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が弱くなり、乾燥や強いかゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返す病気です。免疫の反応が過敏になっていることも関係しています。
重要な事実
- 皮膚のバリア機能の低下が大きな原因の一つで、乾燥や刺激がきっかけとなります。
- 強いかゆみを伴う湿疹が、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら続きます。
- 毎日の保湿スキンケアと、医師の指導による治療で症状をうまくコントロールできます。
とてもありふれた病気で、日本では子どもの5〜10%、成人の2〜3%くらいにみられます。
乳幼児に多く、成長とともに改善することもありますが、大人になっても続く方もいます。ぜんそくや花粉症などアレルギー体質の方に合併しやすいことが知られています。
症状
- 皮膚の広い範囲が急に赤く腫れ、熱を持つ
- 呼吸が苦しくなる、唇や顔が腫れるなどアレルギー反応を疑う症状がある
- 全身に急速に広がる赤み・水ぶくれがあり、発熱や強い痛みを伴う
- ⚠湿疹が急に広がり、強い痛みや膿、発熱を伴う(細菌感染の疑い)
- ⚠顔や目の周りに湿疹が広がっている
- ⚠かゆみが非常に強く、日常生活や睡眠がとれないほどつらい
一般的な症状
- 強いかゆみを伴う赤い湿疹
- 皮膚の乾燥や粉吹き
- かさぶたやジュクジュクしたただれ
- ひっかき傷
- 皮膚が厚くゴワゴワする(苔癬化)
- 夜間のかゆみで眠れないことがある
子供の症状
- 顔や頭、ひじやひざの内側、首などにできやすい
- ひっかくと悪化し、皮膚がただれたり、とびひ(伝染性膿痂疹)を起こすこともある
- かいていたずら、夜泣きや不機嫌など睡眠への影響もみられる
高齢者の症状
- 全身に乾燥と強いかゆみがみられる
- 長年の刺激で皮膚が厚く硬くなっていることが多い
- かゆみによる睡眠不足や、見た目の悩みから気分が落ち込むこともある
原因
主な原因
- 皮膚のバリア機能の低下(肌の保湿成分が減り、乾燥しやすくなる)
- 免疫系が過敏にはたらき、炎症やかゆみを起こす
- 乾燥や汗、衣類の摩擦、ダニやホコリ、ストレスなどが悪化のきっかけになる
- 遺伝的にアレルギー体質や皮膚のバリア機能の弱さを受け継ぐことがある
リスク要因
- 家族にアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患(ぜんそく・花粉症など)がある
- 乳幼児期は皮膚のバリア機能が未熟で発症しやすい
- 乾燥した環境や肌に刺激の強い衣類・入浴方法などの日常習慣
- ストレスや睡眠不足、疲労の蓄積
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 症状が急に悪化して全身に広がる
- 痛みや膿があり、感染が疑われる
- かゆみが強く眠れない、集中できないなど日常に支障が出ている
定期受診を予約すべき場合:
- 自分でできる保湿やスキンケアを続けてもよくならない
- 湿疹を繰り返したり長引いたりする
- 乳幼児や高齢者の皮膚が荒れて気になる
診断
アトピー性皮膚炎の診断は、主に医師の診察と問診で行われます。皮膚の状態を確認し、症状の経過やかゆみの様子、家族のアレルギー歴などを詳しく聞かれます。必要に応じて血液検査などを行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 皮膚の視診・触診(どの部位に、どんな湿疹があるか確認する)
- 問診(症状の始まり、経過、かゆみの強さ、生活環境など)
- 血液検査(アレルゲン特異的IgE抗体検査など)
- 細菌培養検査(感染が疑われるときに患部の分泌物を調べる)
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で、患部を見せて質問に答えるだけで特別な準備は必要ありません。日頃のお手入れや使っている保湿剤・化粧品などを伝えると、より適切なアドバイスがもらえます。
治療
治療の基本は、皮膚を清潔に保ちしっかり保湿しながら、炎症やかゆみを抑えることです。医師の指導のもと、外用薬による治療と日々のスキンケアを組み合わせて行います。自己判断で治療を中断せず、長い目で症状と付き合うことが大切です。
自宅でのセルフケア
- ぬるめのお湯でやさしく洗い、こすらずタオルで押さえるように拭く
- 入浴後3分以内を目安に保湿剤を全身に塗る
- 爪を短く切り、引っかき傷を作らないようにする
- かゆいときは冷やしたり、手掌で押さえたりして引っかきを避ける
- 刺激の少ない素材(綿など)の衣類を選び、汗をかいたらこまめにケアする
- 室内の温度や湿度を適切に保ち、乾燥を防ぐ
医療治療
医療機関では、炎症を抑える外用薬、細菌やウイルス感染を治療する外用薬、かゆみを抑える内服薬などが、症状や部位・重症度に合わせて処方されます。重症の場合には、光線療法(紫外線治療)や免疫の働きを調整する薬による治療が行われることもあります。必ず医師の指示に従って使用し、不明な点は薬局の薬剤師にも相談しましょう。
手術が検討される場合
一般に、アトピー性皮膚炎は手術で治療する病気ではありません。
この病気と共に生きる
毎日のスキンケアが治療の中心です。朝晩の保湿を習慣にし、肌を清潔に保つことで、かゆみや湿疹の悪化を防ぎやすくなります。症状はその日の体調や気温、ストレスによって変化します。自分の状態をよく観察し、悪化のきっかけを把握しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 入浴後はすぐに保湿ケアを行う
- 爪を短く切り、皮膚をひっかかない工夫をする
- 部屋の湿度を40〜60%くらいに保つ
- 汗をかいたらそのままにせず、やさしく拭き取る
- 刺激の少ない寝間着や下着を選ぶ
- ストレスをためない時間をつくり、睡眠をしっかりとる
食事と運動
特別な食事制限は原則必要ありませんが、アレルギーがはっきりしている食品がある場合のみ、医師の指導のもとで除去を検討します。運動は健康に役立つ一方、汗や摩擦が刺激になることもあるため、運動後はシャワーで汗を流し、保湿を忘れずに行いましょう。
精神的健康と心の健康
見た目やかゆみによる睡眠不足が続くと、気分の落ち込みや不安が強くなることがあります。つらさを一人で抱え込まず、医療者や家族、友人に相談してください。もし「自分を傷つけたい」という気持ちが浮かんだり、強い不安で眠れない日が続いたりするときは、ためらわず精神保健の専門家や自治体の相談窓口に連絡してください。緊急の場合は119番に通報しましょう。
予防
完全に予防することは難しいですが、乳幼児期からの保湿スキンケアや、乾燥・刺激・ストレスなどの悪化因子を避けることで、発症や悪化のリスクを減らせる可能性があります。
ワクチン
アトピー性皮膚炎そのものを予防するワクチンはありません。ただし、かぜや感染症が皮膚の状態に影響することがあるため、予防接種は体調のよいときに医師と相談して受けるようにしましょう。
検診プログラム
皮膚の状態は目で確認できるため、特別なスクリーニング検査はありません。気になる症状があれば早めに皮膚科を受診することが、早期の対応と重症化予防につながります。
合併症
治療しない場合
- 細菌感染を起こしてとびひ(伝染性膿痂疹)になる
- 単純ヘルペスウイルス感染など皮膚の感染症を合併することがある
- 引っかき傷による色素沈着(あと)やケロイド
- 睡眠不足による日中の眠気・集中力低下
- 見た目やつらい症状が続くことで、心の健康に影響が出る
- まれに全身の皮膚が赤く腫れる重症型(紅皮症)になることもある
長期的な見通し
アトピー性皮膚炎は完全に「治る」ことを目指すより、症状とうまく付き合いながらコントロールしていく病気です。正しい治療と生活の工夫を続ければ、多くの方は日常生活への影響を小さくできます。乳幼児期に発症した場合は成長とともに良くなることも少なくありません。希望を持って、かかりつけ医と一緒に長期戦略を立てていきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月13日
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