ATTR-CM(アミロイド心筋症)について
概要
ATTR-CM(えーてぃーてぃーあーる・しーえむ)は、血液の中の「トランスサイレチン」というたんぱく質が異常な形に変わり、心臓の筋肉(心筋)に溜まって硬くすることで、心臓のポンプ機能が弱くなる病気です。心不全の症状を引き起こしますが、近年は進行を遅らせる治療や症状を和らげる治療が進歩しています。
重要な事実
- 心臓の筋肉にアミロイドというたんぱく質の塊が沈着する
- 多くは高齢の方に見られ、心不全の症状として現れる
- 遺伝するタイプと、加齢に伴うタイプがある
- 早期発見と適切な治療が進行を遅らせるうえで重要
まれな病気ですが、診断方法が進歩し、以前考えられていたよりも少なくない人がいることが分かってきました。特に高齢者の心不全の中に隠れていると考えられています。
主に60歳以上の男性に多いとされますが、女性にも見られます。遺伝するタイプでは、40代や50代など比較的若い世代で症状が出ることがあります。
症状
- 突然の強い胸の痛み
- 呼吸がとても苦しく、座っていられない
- 意識を失った(失神)
- 脈が極端に不規則で、立ちくらみが続く
- ⚠むくみや息切れが急に悪化した
- ⚠1週間で2〜3kg以上の急な体重増加
- ⚠夜、横になると咳や息苦しさが出る
- ⚠ふらつきや立ちくらみが繰り返す
一般的な症状
- 息切れ(特に階段や坂道で)
- 足や足首、すねなどのむくみ
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 疲れやすさ
- 体重の急な増加(水分の体への貯留による)
原因
主な原因
- トランスサイレチンというたんぱく質が異常な形に折りたたまれ、心臓の筋肉に沈着するため
- 遺伝子の変化によるもの(家族性、遺伝性)
- 加齢などにより、正常なたんぱく質が変性して起こるもの(野生型)
リスク要因
- 高齢(特に65歳以上)
- 男性であること
- 家族にATTR-CMまたはアミロイドーシスを持つ人がいる
- 手根管症候群や脊椎管狭窄症の既往がある(関連することがある)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが安静にしても良くならない
- 胸の痛みや圧迫感がある
- 意識が遠くなるような感じがある
定期受診を予約すべき場合:
- むくみや息切れが続いている
- 疲れやすくなった
- 家族歴があるため検査を受けてみたい
診断
問診、聴診、心電図、心エコー(超音波)検査などから始め、アミロイドの存在を疑う検査を行います。確定診断には組織の一部を採って調べる生検や、心筋シンチグラフィーなどが行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(BNPやNT-proBNP、トランスサイレチン値など)
- 心エコー検査
- 心臓MRI
- 心筋シンチグラフィー(放射性医薬品を用いた画像検査)
- 生検(組織を小さく取って調べる検査)
診察で予想されること
心不全の専門医や循環器内科、遺伝カウンセラーなどが連携して診断を進めます。遺伝するタイプが疑われる場合は、ご家族にも情報が必要になるため、担当医が説明を行い、必要に応じて専門外来を紹介します。
治療
現在の治療は、症状を和らげる心不全治療と、病気の進行を遅らせる薬物治療を中心に行います。また、遺伝するタイプでは、原因となるたんぱく質の産生を抑える治療が専門施設で行われることもあります。治療方針は一人ひとりの病状に合わせて決められます。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控え、規則正しい生活を心がける
- 毎日体重を測り、急な増加に注意する
- 医師に相談せずに水分をたくさん飲みすぎない
- 禁煙する
- 睡眠を十分にとり、無理のない範囲で体を動かす
医療治療
医師の指示に基づいて、心臓の負担を減らす薬(水分を排出する利尿薬や血圧を調整する薬など)を使用することがあります。さらに、アミロイドたんぱく質の沈着を抑える新しい治療薬も専門的な判断のもとで使われます。薬の名前や種類、用量は必ず担当医が決めるため、自己判断で変更しないでください。
手術が検討される場合
重症の心不全が進んだ場合、心臓移植が検討されることがありますが、適応は体全体の状態や年齢などを含めて慎重に判断されます。手術が必要かどうかは専門チームが検討します。
この病気と共に生きる
定期的に医療機関で経過を見ながら、体重管理、塩分制限、適度な運動など、心不全の基本的な自己管理を継続することが大切です。体調の変化に注意し、症状が悪化したら早めに相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に体重を測る
- 足のむくみを確認する
- 階段や坂では無理をせず、ゆっくり休みながら動く
- ストレスをためない趣味や休息の時間を持つ
食事と運動
医師や管理栄養士の指示に沿って、塩分を控えめ(1日6g未満を目安)にし、バランスの良い食事をとりましょう。運動は、ウォーキングなど軽いものでも、心臓に負担がかからない範囲で行うことが勧められます。必ず主治医の許可を得てから始めてください。
精神的健康と心の健康
慢性の心臓病とともに暮らすことは、不安やストレスを感じることがあるかもしれません。気持ちのつらさは一人で抱え込まず、担当医や看護師に話して、地域の心の健康相談窓口(保健所や精神保健福祉センターなど)を利用することもできます。もし自分を傷つけるような気持ちが続いたら、すぐに救急(119番)や相談機関につながってください。
予防
遺伝子が原因の場合は完全に予防することはできません。しかし、早期発見・早期治療によって進行を遅らせ、生活の質を保つことが可能です。家族歴がある場合は、症状が出る前から定期的に検査を受けることで、早期に対処できます。
ワクチン
この病気自体を予防するワクチンはありません。一般的な感染症予防として、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種を医師と相談の上、検討しましょう。
検診プログラム
家族歴がある場合、症状がなくても定期的に心電図や心エコー検査を受けることが勧められます。遺伝子検査については、必ず遺伝カウンセラーへの相談を行った上で進めます。
合併症
治療しない場合
- 心不全が進行し、日常生活での動作がつらくなる
- 不整脈(特に心房細動)の出現
- 血管に血の塊ができて詰まる(深部静脈血栓症)
- 心臓突然死のリスクが上がる
長期的な見通し
近年、診断技術と治療法は大きく進歩しています。特に新しい薬が使えるようになり、病気の進行を遅らせて、これまでよりも長く穏やかに過ごせるようになってきています。心不全の管理をしっかり行うことで、日々の生活の質を保つことも可能です。診断された後も希望を持って治療を続けていきましょう。
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最終更新: 2026年10月21日
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