自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)とは?
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)は、体を守るはずの免疫システムが過剰に働き、リンパ球(白血球の一種)が異常に増えすぎたり、自分の正常な細胞を攻撃してしまったりする、とてもまれな病気です。リンパ節や脾臓(ひぞう)が腫れたり、貧血や血小板の減少などが起こることがあります。
重要な事実
- 免疫の調整機能に異常があり、リンパ球が過剰に増える病気です。
- リンパ節・脾臓・肝臓が腫れることがよくあります。
- 自分の血液細胞を攻撃する自己免疫性血球減少症を合併することがあります。
- 多くは遺伝子の変異が原因で、小児期に発症することが多いです。
- 非常にまれな病気で、国内の患者数は限られています。
非常にまれな病気です。正確な患者数はわかっていませんが、日本では数百人以下と考えられています。
主に10歳未満の子どもに発症しますが、成人になってから診断される場合もあります。性別による発症率の大きな差はありません。
症状
- 意識がもうろうとする
- 呼吸が苦しい・息ができない
- 突然の激しい腹痛
- 大量の出血が止まらない
- ひどい頭痛やけいれん
- ⚠高熱が続く
- ⚠感染症の兆候(悪寒、せき、のどの痛みなど)が強まる
- ⚠急に貧血が進み、強いめまいや動悸がある
- ⚠あざや出血が急に増える
一般的な症状
- 首・わきの下・足の付け根などのリンパ節が腫れる
- 脾臓が腫れておなかが張る
- 肝臓が腫れる
- 貧血による疲れやすさ・めまい・顔色の悪さ
- 血小板減少による皮下出血・あざができやすい・鼻血
- 感染症にかかりやすい
子供の症状
- おなかが張って母乳や食事が進みにくい
- 成長や発育が遅れる
- 繰り返す感染症にかかりやすい
- 貧血や出血傾向が見られる
高齢者の症状
- リンパ節の腫れが慢性に続く
- 自己免疫性の貧血や血小板減少がみられる
- 無症状で健康診断で脾臓の腫れを指摘されることもある
原因
主な原因
- 遺伝子の変異により、リンパ球の寿命が異常に長くなり過剰に増えること
- 免疫システムの調整機能(アポトーシス:古い細胞を排除する仕組み)がうまく働かないこと
- 原因となる遺伝子変異が特定できない場合もあります。
リスク要因
- 家族にALPSまたは類縁の病気を持つ人がいる
- 特定の遺伝子(FAS遺伝子など)の変異を持つ
- 自己免疫疾患の家族歴がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさや胸の痛みがある
- 意識がもうろうとする
- 激しい腹痛が続く
- 止血できないような出血がある
定期受診を予約すべき場合:
- リンパ節の腫れが数週間以上続く
- 原因不明の疲れやすさや顔色の悪さがある
- 血液検査で溶血性貧血や血小板減少を指摘された
- 子どものおなかの張りや発育の遅れが気になる
診断
診断は、血液検査・免疫学的検査・遺伝子検査などの結果を総合的に判断して行います。まれな病気のため、小児科・血液内科・免疫内科などの専門医による評価が望ましいです。また、厚生労働省の指定難病に該当する場合があるため、診断後は専門医療機関への相談も検討されます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:リンパ球数、赤血球・血小板数、自己抗体、免疫グロブリン値など
- リンパ節の生検(組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査)
- 遺伝子検査(FAS遺伝子など関連遺伝子の変異を調べる)
- 超音波(エコー)やCTなどの画像検査で、脾臓や肝臓・リンパ節の腫れを確認
診察で予想されること
診断が確定するまでに数週間から数か月かかることがあります。血液検査や遺伝子検査のために、専門の医療機関への紹介が必要になることもあります。医師は症状や検査結果を丁寧に説明してくれますので、不安な点は遠慮なく質問しましょう。
治療
治療は、症状の程度や合併症によって異なります。軽症で症状がない場合は経過観察のみの場合もあります。症状がある場合や自己免疫性の血球減少が強い場合は、薬による治療や脾臓摘出などの外科的治療が検討されます。国立成育医療研究センターなどの専門施設での管理が推奨されることがあります。
自宅でのセルフケア
- 感染症予防のため、手洗い・うがいを徹底する
- 十分な休養をとり、疲れをためない
- 人混みを避け、感染源との接触を減らす
- 体調の変化(発熱、あざ、出血など)を記録して医療者に伝える
医療治療
症状に応じて、免疫の働きを調整する薬、副腎皮質ステロイド薬、免疫グロブリンの静脈注射などが用いられることがあります。また、免疫抑制薬が使われることもありますが、具体的な薬剤名や用量は医師が個別に判断します。治療中は感染症の予防とモニタリングが重要です。
手術が検討される場合
脾臓が過剰に働き、貧血や血小板減少がコントロールできない場合や、脾臓が大きくなりすぎて痛みや日常生活への支障がある場合に、脾臓摘出術(脾臓を摘出する手術)が検討されることがあります。ただし、脾臓を摘出すると感染症のリスクが高まるため、手術前の予防接種や手術後のケアを慎重に行う必要があります。
この病気と共に生きる
定期的な通院と血液検査で病気の状態をチェックすることが大切です。感染症の兆候(発熱、咳、のどの痛みなど)に早めに気づき、医師に相談してください。また、学校や職場でも無理をせず、体調に合わせて生活リズムを整えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠
- 感染症予防のために手洗い・うがいを習慣にする
- 体調がすぐれないときは無理をしない
- 医師と相談して、予防接種の計画を立てる
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、感染症予防のためにも栄養バランスのよい食事を心がけましょう。運動は体調の良いときに行う程度で問題ありませんが、脾臓が腫れている場合は激しい接触スポーツを避けるなど、医師の指示に従ってください。
精神的健康と心の健康
まれな病気であるため、不安や孤立感を感じることもあるかもしれません。特に子育て中の親御さんは、お子さんの将来が心配になることもあるでしょう。そうした気持ちを一人で抱え込まず、医師やカウンセラー、患者会などに相談してください。
予防
遺伝子の変異が関与する病気のため、発症を予防する方法はありません。ただし、経過をしっかり観察し、感染症や自己免疫性血球減少などの合併症を早く見つけて対処することで、重症化を防ぐことができます。
ワクチン
予防接種は感染症を防ぐ上で重要ですが、生ワクチンは免疫の状態によって接種できないことがあります。すべての予防接種について、必ず主治医と相談してから受けてください。
検診プログラム
家族にALPSの患者がいる場合や、遺伝子変異がわかっている場合は、遺伝カウンセリングや定期的な血液検査が検討されることがあります。ただし、どのような検査や経過観察が必要かは専門医と相談して決めることをお勧めします。
合併症
治療しない場合
- 進行性の貧血・血小板減少・好中球減少による重症感染症
- 脾臓の過剰な働きによる脾臓破裂(まれ)
- リンパ腫などの血液のがんのリスクが上昇することがある
- がんや感染症を見逃す可能性がある
長期的な見通し
多くの患者さんは、適切な治療と定期的な管理によって健やかな日常生活を送ることができます。感染症の予防と早期対応、自己免疫性の血球減少症のコントロールが重要なカギとなります。専門医と一緒に長期的な計画を立て、希望を持って治療に取り組んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月13日
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