腎臓に水のうができる遺伝性の病気 常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD)
概要
多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)は、腎臓に「のう胞(水のう)」がたくさんできる遺伝性の病気です。のう胞とは、体液がたまった袋のようなものです。この袋が増えると腎臓が大きくなり、腎臓の働きが少しずつ低下していきます。ADPKDは「常染色体顕性多発性嚢胞腎」という正式な名前で、親から子へ受け継がれやすいタイプです。
重要な事実
- 腎臓に液体で満たされたのう胞が複数できる病気です
- 多くは家族内で受け継がれる遺伝性の病気です
- のう胞が増えると腎臓の働きに影響をおよぼすことがあります
- 高血圧や血尿、腰やわき腹の痛みなどを起こすことがあります
- 早期に見つけて定期的に診察を受け、腎臓を大切にする生活を続けることが大切です
日本では約4,000人から10,000人に1人の割合で見られるとされており、遺伝性の腎臓病のなかでは比較的多い病気です。
子どもにも大人にも影響する病気ですが、症状が現れ始めるのは30代から50代に多いとされています。遺伝子を受け継いだ場合、どの年代でものう胞は見つかりますが、症状の出方や進み方には個人差があります。
症状
- 突然、腰やわき腹に激しい痛みが起こる
- 急に大量の血尿が出る、または血の塊が出る
- 胸の痛みや息苦しさがある
- 話しづらい、体の片側が動かない、ひどい頭痛がある(脳動脈瘤の可能性があります)
- 意識がもうろうとする
- ⚠発熱に加えて腰や背中の強い痛みがある
- ⚠尿が出にくい、まったく出ない
- ⚠何日も続く血尿がある
- ⚠激しい痛みで動けないほどつらい
一般的な症状
- 高血圧(血圧が高くなる)
- 腰やわき腹の痛み、重だるさ
- 血尿(尿に血液が混じる)
- 尿路感染症や腎盂腎炎(膀胱炎や腎臓の感染症)を繰り返す
- 腎臓結石
- のどが渇く、尿の量が多い
- おなかが張る、みぞおちが圧迫される感じ
子供の症状
- 小児では症状が出ないことがほとんどです
- 時々、血圧が高い、尿にタンパクや血液が出る、尿路感染症を繰り返すことがあります
- のう胞はあっても腎臓の働きは元気なままの場合が多いです
高齢者の症状
- のう胞が増えて腎臓が大きくなると、腹痛や背中の痛みが続くことがあります
- 腎臓の機能が低下し、むくみ、だるさ、貧血、食欲低下などが現れることがあります
- 尿の濃縮力が弱まるため、のどが渇きやすく、夜中にトイレへ行く回数が増えることがあります
原因
主な原因
- PKD1またはPKD2という遺伝子に変化があると発症します
- この病気は「常染色体顕性遺伝」という形で親から子どもに受け継がれます。親のどちらかがこの病気の場合、子どもは50%の確率で遺伝子を受け継ぎます
- 親に病気がなくても、まれに新しい遺伝子の変化で発症することもあります
リスク要因
- 家族(親や兄弟姉妹、祖父母など)に多発性嚢胞腎の人がいる
- 年齢を重ねることでのう胞が大きく・数が増えやすくなる
- 高血圧があると腎臓の障害が進みやすくなる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急な激しい腰や腹部の痛みがある
- 血尿が続く、または急に大量の血尿が出る
- 高熱と背中の痛みが一緒にある
- 呼吸が苦しい、胸が痛む
- 突然の強い頭痛、めまい、しびれなどがある
定期受診を予約すべき場合:
- 家族にこの病気の人がいる
- 健康診断で腎臓ののう胞や血尿、タンパク尿を指摘された
- 血圧が高いと言われた
- 腰や背中がなんとなく重だるい感じが続く
診断
問診で家族歴を確認し、画像検査で腎臓の大きさやのう胞の数・形を調べます。のう胞が両方の腎臓に複数あり、家族にも同じ病気の人がいる場合は診断を進めます。
行われる可能性のある検査
- 腹部超音波(エコー)検査:おなかの上から超音波を当てて、腎臓ののう胞を確認します
- CT検査やMRI検査:のう胞の数や大きさ、腎臓の形を詳しく調べます
- 血液検査:腎臓の働き(腎機能)を確認します
- 尿検査:血尿やタンパク尿の有無を確認します
- 遺伝子検査:症状や家族歴から診断が難しいときに、保険診療内で行うことがあります
診察で予想されること
診断のためには腎臓内科や泌尿器科を受診することが一般的です。検査は痛みを伴わないものが多く、通院で受けられます。診断後は、腎臓の働きを保つために、定期的な検査と生活習慣の見直しを医師と一緒にすすめていくことになります。
治療
現在のところ、この病気を完全に治す治療法はありませんが、進行を遅らせ、症状をやわらげるための治療はあります。腎臓の働きをできるだけ長く保つことが治療の大きな目標です。
自宅でのセルフケア
- 血圧を家庭でこまめに測る
- 塩分をとりすぎない
- 十分な水分をとる(ただし腎機能が低下している場合は医師の指示に従う)
- 肥満を避け、適度な運動を続ける
- 喫煙をやめる
- 鎮痛薬などを使うときは、必ず医師や薬剤師に相談する
医療治療
高血圧をコントロールするための薬や、のう胞の成長を遅らせる可能性のある薬が使用されることがあります。また、のう胞の感染や出血、結石などに対しては、痛みを和らげる治療や感染症の治療が行われます。どの治療が適しているかは、年齢、腎機能、のう胞の状態、他の病気の有無によって異なります。処方された薬は必ず医師の指示どおりに使用してください。
手術が検討される場合
のう胞が非常に大きくて強い痛みや圧迫感がある場合、またはのう胞に感染や出血を繰り返す場合には、のう胞に針を刺して液体を抜く処置や、腹腔鏡を使った開窓術(のう胞の壁を切り開く手術)が行われることがあります。腎不全が進んだ場合には、透析や腎移植という治療が必要になることもありますが、これらは医師とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
普段の生活では、血圧と腎臓の働きを気にかけることがいちばん大切です。決まった時間に薬を飲み、定期的に検査を受けましょう。特に、突然の強い痛みや血尿には注意が必要です。異常を感じたら早めに医療機関に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 塩分は1日6g未満を目安に、加工食品や外食を控えめにする
- 水分はのどが渇く前に、こまめに補給する(腎機能が低下している場合は医師の指示に従う)
- 適度な運動(ウォーキングなど)を週に数回行う
- 高血圧や糖尿病がある場合は、きちんと治療を続ける
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
食事と運動
塩分を控えめにしたバランスのよい食事が基本です。腎機能が低下してくると、カリウムやリンの調整が必要になることもあるため、栄養士や医師のアドバイスを受けましょう。運動は、激しい接触スポーツは腎臓を傷つける恐れがあるため避け、ウォーキングや軽い体操など、体に負担のかからないものを選びましょう。
精神的健康と心の健康
遺伝性の病気であることや、将来の腎機能への不安から、気持ちが落ち込んだり、家族に申し訳なく感じたりすることがあります。これは自然な気持ちです。ひとりで抱え込まず、家族や医療者、カウンセラーに話すことが大切です。
予防
この病気自体を予防することはできません。ただし、高血圧をきちんと治療し、塩分を控え、規則正しい生活を送ることで、腎臓の働きの低下を遅らせることができる可能性があります。早期発見と早期からの対策が大切です。
ワクチン
感染症は腎臓に負担をかけるため、インフルエンザや肺炎などの予防接種は、かかりつけ医と相談のうえ受けることをおすすめします。
検診プログラム
家族に多発性嚢胞腎の人がいる場合、症状がなくても腎臓の超音波検査などを受けることができます。親族への遺伝の影響についても、遺伝カウンセリングで専門家に相談することができます。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の働きが徐々に低下し、やがて腎不全になることがある
- 高血圧が続くと、心臓や脳の血管に負担がかかる
- のう胞の感染や出血を繰り返すと、痛みや発熱の原因になる
- まれに脳動脈瘤(脳の血管にできるこぶ)が破裂して、くも膜下出血を起こすことがある
長期的な見通し
この病気の進行速度には個人差が大きく、多くの人は長い間、腎臓の働きを保つことができています。近年は治療の選択肢が広がり、高血圧の管理や食事療法、薬物治療を組み合わせることで、進行をよりゆっくりにすることが期待できます。腎不全に至った場合も、透析や腎移植によって社会生活を続けている人はたくさんいます。希望を持って、医師と一緒に長い目で病気に向き合っていきましょう。
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この記事で使用した情報源には、以下に示す参考文献が含まれます。
最終更新: 2026年10月20日
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