細菌性腟症と骨盤内炎症性疾患(PID)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
細菌性腟症(さいきんせいちつしょう)は、腟の中の細菌のバランスが崩れて、悪い細菌が増えすぎた状態です。骨盤内炎症性疾患(PID)は、細菌が子宮や卵巣などにまで上がって起こる炎症です。
重要な事実
- 細菌性腟症は性感染症とは違いますが、ある種の性感染症にかかりやすくなる可能性があります。
- PIDは、放置すると不妊や子宮外妊娠の原因になることがあります。
- どちらも、早めに医師の診察を受けて治療することで、多くは改善します。
細菌性腟症は、妊娠可能年齢の女性の約20〜30%に見られる、とても一般的な状態です。PIDは先進国では少なくなっていますが、特に15〜25歳の女性で診断されることがあります。
主に性的に活動的な女性に影響します。特に新しいパートナーがいたり、複数のパートナーがいる場合に多く見られます。男性にはPIDは起きません。細菌性腟症も女性だけの状態です。
症状
- 突然の強い下腹部痛で動けなくなる
- 意識がもうろうとする
- 高熱(目安として38度以上)に加えて、冷や汗や吐き気がある
- 性器からの大量出血
- ⚠下腹部の痛みが続く、または悪くなる
- ⚠発熱がある
- ⚠異臭のあるおりものや性器からの出血がある
- ⚠排尿や性交のときに痛みが強い
一般的な症状
- おりものがいつもより多くなる(白っぽい、サラサラした感じ)
- 生臭いようなにおいがする(特に性交後や生理後に強く感じる)
- 腟のまわりにかゆみや軽い刺激がある(細菌性腟症の場合)
- 下腹部の痛み(PIDの場合)
- 発熱や悪寒(PIDの場合)
- 性交時や排尿時の痛み(PIDの場合)
子供の症状
- 小児では多くありませんが、腹痛や発熱、おりものの変化などがあった場合は、早めに小児科や婦人科を受診してください。
高齢者の症状
- 閉経後の女性では、PIDの典型的な症状が現れにくいことがあります。腹痛や発熱はもちろん、なんとなく体調が悪い、おりものの変化に気づいたら、婦人科で相談しましょう。
原因
主な原因
- 細菌性腟症は、腟内の乳酸菌(善玉菌)が減り、他の細菌が増えすぎることによって起こります。原因ははっきりとしていませんが、性交渉、過度の洗浄(腟洗浄)、喫煙などが関係します。
- PIDは、腟や子宮頸管にいた細菌が子宮内膜、子宮の壁、卵巣などに広がることで起こります。原因菌の多くはクラミジアや淋菌などの性感染症の原因菌です。
リスク要因
- 新しい性交渉の相手がいる
- 複数の性交渉の相手がいる
- 過去に性感染症にかかったことがある
- 腟洗浄(デオドラントや洗浄液での腟内洗浄)
- 子宮内避妊具(IUD)を装着している(PIDのリスクがわずかに上昇)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 下腹部の痛みが強い、または痛みで普段通りに動けない
- 発熱がある
- 性器からの異常な出血がある
定期受診を予約すべき場合:
- おりものの量やにおいに変化がある
- 性交痛や排尿時の痛みがある
- 気になることがあれば、心配しすぎかなと思っても受診して
診断
婦人科または一般診療で、問診と内診、おりものの検査を行います。症状を詳しく伝えることが大切です。
行われる可能性のある検査
- おりものの色や量、ニオイを確認する内診
- おりもののpH(酸性度)を測る検査
- 顕微鏡で細菌のバランスを見る検査
- 子宮頸管から検体を取るクラミジア・淋菌検査
- 必要に応じて血液検査や超音波(エコー)検査
診察で予想されること
診察台での内診は、少し緊張するかもしれませんが、数分で終わります。結果は、その場でわかるものと、数日かかるものがあります。もし痛みが強い場合は、医師にそのことを伝えてください。
治療
治療の中心は、抗菌薬(抗生物質)です。細菌性腟症は、飲み薬や腟用の薬で治療します。PIDは、医師の判断で点滴や入院が必要になることもあります。性感染症が原因の場合は、パートナーも一緒に検査や治療を受けることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 医師から指示された分の薬は、症状が消えても飲み切る
- 治療中は性交渉を控える(または医師の指示に従う)
- 体を温めて安静にする(PIDの場合)
- 腟洗浄をしない(細菌性腟症の場合)
医療治療
抗菌薬は、原因となる菌の種類や重症度に合わせて医師が選びます。腟用のクリームや坐薬、または飲み薬があります。PIDでは、最初は注射で抗菌薬を使い、状態に応じて飲み薬に変えることもあります。妊娠中の方や授乳中の方は、そのことを必ず医師に伝えてください。
手術が検討される場合
PIDでは、卵巣や卵管に膿のたまった塊(膿瘍)ができた場合や、薬で改善しない場合、まれに手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
治療が終わって症状が消えた後も、再発を防ぐために、しばらくは定期的に通院し、経過を見てもらいましょう。再発のサイン(においや痛み)に気づいたら、早めに相談してください。
生活習慣のアドバイス
- おりものの変化を毎日チェックして記録すると、受診時に役立ちます
- 通気性の良い下着を選び、清潔に保つ
- 喫煙している場合は、禁煙を検討する
- ストレスをためないように、自分なりのリラックス方法を見つける
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスの良い食事、十分な水分、無理のない範囲の運動が免疫力を保つのに役立ちます。骨盤の血流を良くするために、軽いウォーキングなどから始めてみましょう。
精神的健康と心の健康
婦人科の症状について話すのは恥ずかしいと感じたり、不安になったりするのは自然なことです。特にPIDは繰り返すと将来の妊よう性(妊娠しやすさ)にも影響する可能性があるため、心配や悲しみを感じることもあるでしょう。
予防
完全に防ぐ方法はありませんが、リスクを減らすことはできます。性交渉の際はコンドームを正しく使うこと、性感染症の定期検査を受けること、腟洗浄をしないことで、細菌性腟症とPIDのリスクを下げられます。
ワクチン
PIDの原因となるクラミジアや淋菌を予防するワクチンはありません。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは子宮頸がんを予防しますが、これらには効果がないため、定期の検査とコンドーム使用が大切です。
検診プログラム
日本では、自治体や保健所で性感染症の無料または低額の検査が受けられることがあります。特に新しいパートナーができた場合や、不安がある場合は、症状がなくても検査を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- PIDが繰り返したり長引くと、子宮や卵管に癒着が起こり、不妊症の原因になることがあります
- 子宮外妊娠(受精卵が子宮以外に着床する)のリスクが高まります
- 慢性の骨盤痛や性交痛が続くことがあります
- まれに、膿瘍(膿の固まり)が破裂して緊急手術が必要になることがあります
長期的な見通し
早期に発見し、医師の指示どおりに治療を終えれば、多くの場合、症状はすっかりよくなります。後遺症を心配しすぎる必要はありませんが、再発を防ぐために定期検診を続け、気になる症状が現れたら早めに受診しましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月14日
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