ビオチン欠乏症(ビタミンB7の不足)
概要
ビオチン欠乏症は、体に必要なビタミンであるビオチン(ビタミンB7、ビタミンHとも呼ばれます)が足りなくなる状態です。ビオチンは、食べ物からエネルギーを作るときや、髪・皮膚・爪の健康、神経の働きを助ける役割があります。不足すると、皮膚の荒れや抜け毛、手足のしびれなどが現れることがあります。
重要な事実
- ビオチンは水に溶けるビタミンで、食事からとるほかに腸内の細菌も少し作っています。
- ふつうにバランスのよい食事をしていれば、不足することはめったにありません。
- 原因が見つかれば、ビオチンを補うことで多くの症状は改善します。
とてもまれな状態です。日常の食事で不足する心配はほとんどありません。
長期間の点滴栄養を受けている人、腸の吸収が悪い病気のある人、生の卵白を大量に食べ続けている人、生まれつきビオチンの代謝に問題がある人(ビオチニダーゼ欠損症)、乳幼児などに起こることがあります。
症状
- けいれんが止まらない、または何度も繰り返す
- 意識がない、呼びかけへの反応が乏しい
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- 赤ちゃんや子どもがぐったりして反応が弱い
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
- ⚠手足のしびれや歩きにくさが急に出た
- ⚠急に抜け毛が増え、皮疹が広がっている
- ⚠けいれんを一度でも起こした
- ⚠赤ちゃんの哺乳力が落ちている、元気がない
一般的な症状
- 抜け毛(髪が薄くなる)
- 目のまわり・鼻のまわり・口のまわりの赤い湿疹やかさつき
- 口角炎(口の端が切れる)や舌の炎症
- 皮膚の乾燥、かゆみ
- 手足のしびれや感覚の異常
- 疲れやすい、だるい
- 気分の落ち込み、やる気が出ない
- 食欲がなくなる
子供の症状
- 顔や体に出る湿疹
- 髪が薄くなる、抜け毛
- けいれん(ひきつけ)
- 筋力が弱く、首のすわりや動きの発達が遅れる
- ぐったりしている、元気がない
- 哺乳(ミルクを飲む量)が減る
高齢者の症状
- 皮膚の乾燥とかゆみが続く
- 抜け毛や髪のハリの低下
- 食欲低下や体重の減少
- 手足のしびれ、ふらつき
- 気分の落ち込み、眠りにくさ
- 疲れやすさ
原因
主な原因
- 長期間にわたる生の卵白の大量摂取(卵白のたんぱく質がビオチンと結びつき、吸収を妨げます)
- 腸の吸収不良(慢性の下痢、炎症性腸疾患、腸の手術後など)
- 長期間の点滴栄養でビオチンが十分に含まれていない場合
- 生まれつきの代謝の異常(ビオチニダーゼ欠損症など)
- 一部の薬(抗てんかん薬など)の長期間の使用
- 妊娠・授乳中で必要量が増えているとき
リスク要因
- 生の卵白をほぼ毎日のように大量に食べる習慣
- 偏った食事、極端なダイエット
- アルコールの飲みすぎ、喫煙
- 長期間の点滴栄養
- 消化管の手術歴や慢性の消化器疾患
- 妊娠・授乳中
- 生まれつきの酵素の働きの低下(家族歴がある場合)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれん、意識の変化、呼吸の苦しさがあるときは119番へ
- 急な手足のしびれや歩きにくさ、急な脱毛や皮疹の広がりは、その日のうちに医療機関へ
定期受診を予約すべき場合:
- 抜け毛や皮膚の荒れが数週間以上続く
- 食事が偏っている、生の卵白を大量にとっている自覚がある
- 長期間の点滴栄養や薬の使用がある
- 家族に生まれつきの代謝異常の人がいる
- 赤ちゃんの湿疹や哺乳の減りが気になる
診断
まず問診で、食事の内容、飲んでいる薬、病歴、ご家族の病歴を確認します。そのうえで診察と血液・尿の検査を行い、ビオチンが足りているかを調べます。必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらいます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血中のビオチン濃度など)
- 尿検査(ビオチンや代謝物の量を調べる)
- 酵素の働きを調べる検査(生まれつきの代謝異常が疑われる場合)
- 栄養状態や貧血などをみる一般の血液検査
- 皮膚の症状の観察
診察で予想されること
採血と尿の検査が中心で、痛みは軽いものがほとんどです。結果が出るまで数日から数週間かかることがあります。検査の前に、サプリメントを飲んでいる場合は必ず医師に伝えてください。
治療
治療の中心は、不足の原因を取り除き、足りないビオチンを補うことです。多くは数週間から数か月で症状が改善していきます。
自宅でのセルフケア
- バランスのよい食事を心がける
- 生の卵白を大量に食べる習慣を見直す(加熱した卵はふつうに食べられます)
- サプリメントを使う前に医師や薬剤師に相談する
- 症状の変化を記録して通院時に伝える
- 飲酒は控えめにする
医療治療
医師の判断でビオチンを補う治療が行われます。補充の量や期間は、症状や原因、検査の結果をもとに医師が決めます。あわせて、吸収不良などの原因となっている病気の治療や、点滴栄養の内容の見直しも行われます。
手術が検討される場合
ビオチン欠乏症そのものに対する手術はありません。原因となる別の病気が見つかった場合に、その治療として手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
症状の記録をつけ、決められた通院を続けることが大切です。皮膚や髪の変化は少しずつ改善することが多いので、焦らずに見守りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙をこころがける
- お酒は適量までにする
- 睡眠をしっかりとる
- ストレスをためこまないようにする
- 市販のサプリを自己判断で増やさない
食事と運動
ビオチンは卵黄、レバー、ナッツ類、大豆製品、きのこ、アボカド、鮭などに多く含まれます。卵白の成分は加熱するとビオチンを妨げる働きが弱まるため、卵は火を通して食べるのが安心です。運動はふだんどおりで問題ありませんが、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
ビオチンが不足すると、気分の落ち込みや不安、いらいらが出ることがあります。これは体の状態からくるもので、あなたの性格の問題ではありません。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えこまず、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してください。緊急の場合は119番へ連絡してください。
予防
多くは、偏りのない食事を続けることで予防できます。長期間の点滴栄養や特定の薬を使っている人は、主治医にビオチンを含む栄養状態について確認してみましょう。生の卵白を大量に食べ続ける習慣がある場合は、加熱した卵に切り替えることも助けになります。
検診プログラム
生まれつきのビオチニダーゼ欠損症は、新生児期の検査で見つかることがあります(対象となる検査は地域によって異なります)。ご家族に同じ状態の人がいる場合や、赤ちゃんの様子が気になる場合は、小児科医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 皮膚の荒れや抜け毛が長く続く
- 手足のしびれなど神経の症状が進むことがある
- 気分の落ち込みや眠りにくさが続く
- 乳幼児では発達の遅れやけいれんにつながることがある
長期的な見通し
ビオチン欠乏症は、原因が分かって適切に補充できれば、多くの症状は改善し、ふだんの生活に戻ることができます。早めに気づいて相談することが安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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