分娩時の赤ちゃんのけが(出生外傷)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
出生外傷とは、赤ちゃんが生まれるときに、出産の過程で体に加わる力によって起こるけがのことです。たとえば、肩や腕の神経が傷ついたり、骨にひびが入ったり、皮膚に内出血(あざ)ができたりすることがあります。多くは軽く、時間とともに自然に回復しますが、まれに治療が必要な場合もあります。
重要な事実
- 出生外傷は、大きな赤ちゃんや難産、吸引分娩・鉗子分娩(かんしぶんべん)などのときに起こることがあります。
- 多くの場合は軽いけがで、特別な治療をしなくても数日から数週間でよくなります。
- 赤ちゃんの体の神経や骨の損傷は、成長とともに改善することがほとんどです。
- 心配な症状があれば、早めに小児科医や助産師に相談することが大切です。
出生外傷は、すべての出産の中でそれほど多くありませんが、決してまれなことではありません。診断や医療の進歩により、予防や早期対応がすすんでいます。
おもに生まれたばかりの新生児です。赤ちゃんの体重が大きい、初めての出産、お産が長引く、逆子などの場合に起こりやすいとされています。
症状
- 赤ちゃんの呼吸が苦しそう、または息をしていない
- けいれん(ひきつけ)を起こしている
- 体がぐったりして反応が鈍い
- 意識がもうろうとしている
- 顔色が青白い、または真っ青になっている
- ⚠片方の腕や足をまったく動かさない
- ⚠強い腫れや内出血が広がっている
- ⚠ミルクや母乳をまったく飲めない
- ⚠触ると激しく泣くなど強い痛みのサインがある
一般的な症状
- 頭や顔の内出血(あざ)や腫れ
- 腕や手足を動かしにくそう
- 肩や首のあたりの腫れや痛み
- 片方の腕がだらんと垂れている
- 泣き声が弱い、または動きが少ない
子供の症状
- 生まれたときは気づかれず、成長してから腕の動きや力の左右差が目につくことがあります
- ハイハイや物をつかむなどの発達の遅れとして現れることがあります
- 見た目にはわからず、検診や普段の様子のなかで気づくことがあります
原因
主な原因
- 出産時に赤ちゃんの肩が産道に引っかかる(肩甲難産)ことで、腕の神経が引き伸ばされる
- 吸引分娩や鉗子分娩で頭や首に強い力がかかる
- 赤ちゃんの体が大きい、または骨盤が狭いため、通り抜けるときに圧力がかかる
- 逆子などの異常な姿勢のまま生まれる
リスク要因
- 赤ちゃんの出生体重が大きい(巨大児)
- 妊娠中のお母さんの糖尿病や高血圧
- 初めての出産や高齢出産
- お産が長引く、または急速に進む
- 計画的でない緊急の帝王切開が必要な状況
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 赤ちゃんがけいれんを起こしたり、呼吸が苦しそうな場合
- 片方の腕や手足をまったく動かさない場合
- 激しい痛みで泣き続け、なかなかおさまらない場合
定期受診を予約すべき場合:
- 出生時に医師から説明を受けたけがの経過を確認するため、指示された時期に検診を受ける
- 内出血や腫れがなかなかひかない場合
- 赤ちゃんの動きに左右差が気になりはじめた場合
診断
診断は、小児科医または新生児科医が赤ちゃんの体をやさしく調べることから始まります。生まれた直後の様子と、産院での出産経過の情報も参考にします。
行われる可能性のある検査
- 体の診察(動き、触ったときの反応、腫れやあざの確認)
- 超音波(エコー)検査で、体の中の状態を確認する
- X線(レントゲン)検査で骨の異常がないかを確認する
- 神経の損傷が疑われる場合は、筋電図やMRI(磁気共鳴画像)検査を行うことがある
診察で予想されること
診察では、赤ちゃんが泣いたり動いたりしながら行われます。痛みを伴う検査ではありませんが、赤ちゃんがリラックスできるよう配慮されます。必要に応じて、専門の医師に紹介されることもあります。
治療
治療は、けがの種類や程度によって異なります。多くの場合、時間の経過とともに自然に回復するため、くすりや手術は不要です。けがの経過を観察しながら、必要に応じてリハビリテーション(機能回復訓練)を行います。
自宅でのセルフケア
- 赤ちゃんを抱っこするときは、けがをした側の腕や肩をやさしく支える
- おむつ替えや着替えのときに、無理に腕を引っ張らないようにする
- 内出血や腫れの場所を清潔に保つ
- 保育士や家族が、赤ちゃんの心地よい姿勢を工夫してあげる
医療治療
医療機関では、赤ちゃんの状態に合わせて、理学療法や作業療法(動きをよくするための訓練)が行われます。損傷した神経の回復を助けるために、腕を特定の位置に固定する装具(そうぐ)を使うこともあります。痛みや炎症をやわらげる薬が使われることもありますが、薬の種類や使い方は医師が判断します。
手術が検討される場合
ごくまれに、神経が完全に切れてしまっている場合や、数か月たっても回復がみられない場合には、手術が検討されることがあります。これは幼い赤ちゃんにも安全な方法で行われます。
この病気と共に生きる
出生外傷のある赤ちゃんは、ふつうの育児とほとんど変わらずに育てることができます。日常の抱っこや遊びのなかで、けがをした側の手足もつかうように促してあげると、自然な回復を助けます。
生活習慣のアドバイス
- 定期的に小児科の検診を受け、運動や発達の様子を確認する
- 家の中では赤ちゃんが安全に動ける環境を整える
- 家族で赤ちゃんの成長をあたたかく見守る
- 必要なときには、地域の子育て支援サービスや理学療法を利用する
食事と運動
赤ちゃんの発達には、母乳やミルクで十分な栄養をとることが大切です。運動面では、無理をさせず、遊びながら自然に手足を動かす機会を作ってあげましょう。
精神的健康と心の健康
赤ちゃんのけがは、親にとってはとても心配なできごとです。罪悪感や不安を感じることもあるかもしれませんが、ほとんどは自然に回復するということを知ってください。心がつらいときは、医師や助産師、家族に気持ちを話すことが役立ちます。
予防
すべての出生外傷を予防することはできませんが、妊娠中の定期的な健診や、お産の状況に合わせた適切な医療ケアによって、リスクを減らせることがあります。医師や助産師は、母子の安全を第一にお産を進めます。
ワクチン
この状態に直接関係するワクチンはありませんが、赤ちゃんに推奨される予防接種は、生後早期から計画的に受けることが大切です。
検診プログラム
妊娠中の超音波(エコー)検査で、赤ちゃんの大きさや位置、羊水量などを確認することで、お産のリスクをある程度予測できます。ただし、出生外傷を完全に予測することはできません。
合併症
治療しない場合
- まれに、神経の損傷が完全に回復せず、腕の動きや筋肉の発達に影響が残ることがあります
- 長く動かさないことで関節が硬くなることがあります
- 重度のけがの場合、痛みや感覚の異常が長引く可能性があります
- しかし、きちんと医療のフォローを受けることで、多くの合併症は防げます
長期的な見通し
ほとんどの出生外傷は、赤ちゃんの自然治癒力によって数週間から数か月のあいだに改善します。たとえ回復に時間がかかっても、リハビリテーションや適切な医療のサポートを受けることで、多くのお子さんが健やかに成長していきます。希望をもって、根気よく見守っていきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月14日
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