膀胱がん(ぼうこうがん)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
膀胱は、おしっこ(尿)をためる袋のような臓器です。膀胱がんは、この膀胱の内側の表面にできるがんのことです。多くは、膀胱の内側を覆う粘膜から発生します。初期の段階で見つかることが多く、進行が比較的ゆっくりのがんとされています。
重要な事実
- 痛みのない血尿が最も多い初期症状です。
- たばこを吸う人は、吸わない人に比べて膀胱がんになるリスクが約2〜3倍高くなります。
- 50歳以上の人に多く見られます。
- 早期に見つかれば、治る可能性が高いがんです。
- 治療後も再発しやすいため、定期検査がとても大切です。
日本では、年間に約2万人以上が膀胱がんと診断されています。決して珍しいがんではありませんが、がん全体の中では比較的少ない部類に入ります。
50歳以上の人に多く、特に男性は女性の約3倍の確率で発症します。喫煙歴のある人や、化学物質を扱う仕事に長く従事していた人はリスクが高くなります。
症状
- 尿に大量の血が混じり、血のかたまり(血餅)が出る。
- おしっこがまったく出ない。
- 下腹部が強く張り、がまんできないほどの痛みがある。
- 顔色が青白く、めまいや動悸がするほど出血している。
- ⚠一度でも尿に血が混じった(肉眼でわかる場合)。
- ⚠排尿時に強い痛みがある。
- ⚠尿の出が悪くなったり、尿の回数が急に増えたりした。
一般的な症状
- 尿に血が混じる(血尿)— 痛みを伴わず、見た目でわかる場合もあります。
- 尿の回数が多い、急に尿がしたくなることがある。
- 排尿時に痛みや違和感がある。
- 残尿感がある(尿が出たあともまだ残っている感じ)。
- 腰や骨盤のあたりが痛む(がんが進行した場合)。
子供の症状
- 子どもに膀胱がんができることはほとんどありません。血尿や排尿の症状がある場合は、膀胱がん以外の原因(尿路感染症など)がないかを医師が調べます。
高齢者の症状
- 高齢者では、血尿に気づかないことがあります。頻尿や排尿の変化を加齢によるものと決めつけず、一度は医療機関に相談することが大切です。
原因
主な原因
- 膀胱がんの正確な原因はまだわかっていませんが、膀胱の内側の細胞にある遺伝子が変化することで発生すると考えられています。長い年月をかけて、たばこの煙や化学物質などが膀胱の粘膜に刺激を与え、細胞を変化させると見られています。
リスク要因
- 喫煙(最大の危険因子)
- 化学工場・染料・ゴム・塗料などで扱われる化学物質(芳香族アミン)への曝露
- 慢性の膀胱炎や尿路の感染を繰り返す
- 骨盤への放射線治療を受けたことがある
- 特定の病気の治療で使われる薬の影響
- 家族に膀胱がんを患った人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に血が混じる(一度だけでも)
- 排尿時に我慢できないほどの痛みがある
- 尿が出ない、またはほとんど出ない
定期受診を予約すべき場合:
- 血尿が一度あり、その後消えた場合でも、念のため受診する。
- 頻尿や残尿感など、排尿の変化が続く。
- 健診の尿検査で潜血を指摘された。
診断
膀胱がんの診断では、まず尿検査を行い、血液やがん細胞が尿に混じっていないかを調べます。必要に応じて、膀胱の中を直接観察する膀胱内視鏡検査や、画像検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 尿検査 — 尿に血液や異常な細胞がないかを調べます。
- 膀胱内視鏡検査 — 尿道から細いカメラを入れて、膀胱の中を直接観察します。
- 画像検査 — 超音波検査やCT検査で、膀胱の壁の厚みやがんの広がりを調べます。
- 組織検査 — 異常な部分があれば、細い器具で一部を取り出して顕微鏡で調べます。最終的な診断はこの検査で確定します。
診察で予想されること
尿検査や画像検査は外来で行われます。膀胱内視鏡検査は数分で終わり、痛みはありますががまんできる程度です。検査前に尿をためてもらうことがあります。
治療
治療は、がんの進行度(ステージ)や悪性度、年齢・全身の状態によって異なります。早期の膀胱がんでは、膀胱を残しながらがんだけを取り除く治療が優先されます。進行したがんでは、手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(喫煙は再発のリスクを高めます)
- 水分を十分にとり、尿の色や量の変化に気をつける
- 医師が処方した薬は指示どおりに使用する
- 治療後も定期的に受診し、尿検査や内視鏡検査を受ける
医療治療
膀胱がんの治療には、手術のほかに、抗がん剤による薬物療法、放射線治療、免疫の働きを高める治療、膀胱の中に直接薬を入れる膀胱内注入療法などがあります。どの治療が適しているかは、がんの性質や進行度によって変わります。担当医とよく相談して決めましょう。
手術が検討される場合
がんが膀胱の粘膜だけにとどまっている場合は、尿道から内視鏡を入れてがんを取り除く手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術)が行われます。がんが膀胱の筋肉にまで進んでいる場合は、膀胱をすべて摘出する手術が必要になることがあります。その際は、尿の通り道を別に作る手術(尿路変向術)もあわせて行われます。
この病気と共に生きる
治療後は、再発を見つけるために定期的な通院と検査が欠かせません。膀胱を摘出した場合は、ストーマ(おなかに作る新しい排尿口)や尿をためる袋のケアが必要になりますが、看護師などの支援を受けながら日常生活に慣れていくことができます。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける
- 水分を十分に摂取する(1日1.5〜2リットルが目安)
- 疲れをためず、十分な睡眠と休養をとる
- 尿の色、量、回数を記録し、変化を早めに気づく
食事と運動
特別に制限された食事はありません。バランスのよい食事をとり、野菜や果物を積極的に食べ、塩分を控えめにしましょう。体力に合わせて、散歩などの軽い運動を続けることもおすすめです。
精神的健康と心の健康
がんの診断や治療のあとは、不安や落ち込みを感じることもあります。それは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話しましょう。必要に応じて、専門の心理士に相談することもできます。
予防
膀胱がんを完全に予防することはできませんが、リスクを大きく減らすことは可能です。何よりも重要なのは禁煙です。化学物質を取り扱う職場では、保護具の着用や換気を徹底しましょう。
ワクチン
膀胱がんを予防できるワクチンは、現在のところありません。
検診プログラム
膀胱がんを対象にした一般的な検診はありません。ただし、健康診断の尿検査で潜血を指摘された場合や、血尿を一度でも感じた場合は、早めに医療機関を受診してください。
合併症
治療しない場合
- がんが膀胱の壁の深くに入り込み、周囲の臓器(前立腺、子宮、直腸など)へ広がる
- リンパ節や肺、肝臓、骨など離れた臓器に転移する
- 尿の流れが悪くなり、腎臓に水がたまって機能が低下する(水腎症)
- がんからの出血や感染症を繰り返し、貧血や全身の衰弱をきたす
長期的な見通し
膀胱がんは、早期に発見されれば治る可能性が高いがんです。膀胱の粘膜にとどまっている場合は、内視鏡的な治療で多くが治ります。進行していても、近年は新しい治療法も増え、良好な状態を長く維持できるケースが増えています。希望を持って治療に取り組むことが大切です。
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最終更新: 2026年7月31日
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