骨転移(こつてんい)について
概要
骨転移とは、体のどこかにあるがん(悪性腫瘍)の一部が血液の流れに乗って骨に運ばれ、骨の中で育ち始めることです。がんが骨にできたのではなく、ほかのがんが骨まで広がった状態です。骨は腰、背中、太もも、肋骨などに起こりやすく、痛みや骨の弱りを引き起こすことがあります。
重要な事実
- 骨転移は、がんの進行した方に起こりうる状態です。
- 多くは、乳がん・肺がん・前立腺がんなどから広がります。
- 治療により、痛みを和らげ生活の質を保つことができます。
日本では、がんと診断された方のうち、進行期のがんで骨転移を経験する方は少なくありません。特に、乳がん・肺がん・前立腺がんなどで多く見られますが、治療法の進歩により、以前よりも長く安定して暮らせる方が増えています。
骨転移は、すでにがんの診断を受けている方に起こります。がんの種類にもよりますが、特に進行したがんや、ある種のがん(乳がん・肺がん・前立腺がん・腎がん・甲状腺がんなど)で多いとされています。年齢や性別は、元のがんの種類と関係します。
症状
- 急に足や腰が動かせなくなった、または立てなくなった
- 突然の強い背中の痛みと、足のしびれや感覚がない
- 排尿・排便ができなくなった(尿や便が出ない、または漏れてしまう)
- 意識がぼんやりして呼びかけに反応が鈍い
- ⚠数日続く強い骨の痛みがあり、普段の痛み止めが効かない
- ⚠骨が折れたかもしれない腫れや痛みがある
- ⚠足に力が入りにくい、しびれが続く
- ⚠がん治療中の方で、新しい腰や背中の痛みが出た
一般的な症状
- 骨の痛み(特に夜間や動いたときに強くなる)
- 骨の一部がぽきっと折れる(骨折)
- 足や背中がしびれる、力が入らない
- 背中や腰が痛くて歩きにくい
- 痛み止めが効きにくい慢性的な痛み
- 体がだるい、食欲がわかない、のどが渇きやすい(血液中のカルシウムが高くなったとき)
子供の症状
- 小児では骨転移はまれです。お子さんに骨のがん(骨肉腫など)がある場合は症状が似ることがありますが、血縁のがんとは区別が難しいため、かかりつけの小児科医やがん治療チームに相談することが大切です。
高齢者の症状
- 高齢の方では、骨の痛みを歳のせいと思い込むことがありますが、すでにがんの治療中であれば新しい痛みは注意が必要です。転びやすさや骨折のしやすさも大切なサインです。また、高齢の方では血液中のカルシウムが高くなると、ぼんやりしたり、意識がはっきりしないこともあります。
原因
主な原因
- がん細胞が血液の流れに乗って骨へ運ばれ、骨の中で増えることで起こります。どんな場所のがんでも骨に転移する可能性はありますが、乳がん・肺がん・前立腺がん・腎がん・甲状腺がん・多発性骨髄腫などで多いです。
リスク要因
- がんの進行期(すでにほかの臓器に転移している)
- がんの治療が終わっていない、または再発した
- がんの種類(上記のホルモンや血液の流れの影響を受けやすいがん)
- 免疫力が低下している状態
- 喫煙や過度な飲酒など、がんの進行を促す生活習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に足が動かない、背中や腰に強い痛みがある
- 排尿や排便がしにくい、または漏れる
- がん治療中で、新しい痛みやしびれがある
定期受診を予約すべき場合:
- がんの診断を受けた方で、定期的に骨の検査やフォローアップが決められている方
- 骨の痛みを感じるが、まだがんの治療中ではない方
診断
骨転移は、まず問診と診察があり、その後に画像検査を行います。医師は痛みの場所やがんの治療歴を確認し、必要な検査をすすめます。診断には、骨への広がりを確かめるための検査と、場合によっては骨の一部を採取する生検(せいけん)が行われることがあります。
行われる可能性のある検査
- X線検査(レントゲン):骨の形を確認します。
- 骨シンチグラフィ:放射性の薬を使って全身の骨を見る検査です。
- MRI検査:骨の中の病変や、脊髄への圧迫を詳しく調べます。
- CT検査:体の断面を撮り、転移の場所を詳しく調べます。
- PET検査:がん細胞の活動の程度を確認できます。
- 血液検査:カルシウムやがんのマーカーなどを確認します。
- 生検(組織検査):骨の一部を採取して顕微鏡で調べる場合があります。
診察で予想されること
検査は痛みを伴うものもありますが、検査の説明や麻酔の工夫などが行われます。結果がわかるまで少し時間がかかることがあります。診断後は、どのような治療が適しているかを、あなたのがんの種類や体の状態に合わせて医師と話し合います。がんの専門医療機関では、放射線科医や整形外科医など多くの専門家が連携して治療にあたります。
治療
骨転移の治療は、痛みを和らげて生活の質を保つこと、骨を強くして折れにくくすること、そして元のがん自体の進行を抑えることを目的とします。治療は、がんの種類や転移の場所、進行度によって異なります。薬を使う治療、放射線治療、手術、そして骨の強度を高める治療などがあります。どの治療を選ぶかは、担当医と相談して決めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 痛みがあるときは無理をせず、からだを休める。痛みが強いときは医師に相談する。
- 転倒を防ぐように家の中の整理整頓や手すりの設置を検討する。
- 骨を弱らせないために、禁煙や節酒を心掛ける。
- 骨の痛みが続く場合は、自然に任せずに医療機関に相談する。
医療治療
治療には、痛みを和らげる鎮痛薬や、骨の破壊を抑える薬、骨を強くする薬が使われることがあります(ただし、どの薬を使うかは医師の処方が必要です)。また、転移した骨に放射線をあてて痛みをやわらげる方法や、骨が折れそうな場合や脊髄を圧迫している場合は手術で骨を固定することもあります。さらに、元のがんのタイプに合わせて、ホルモン療法、薬物療法(抗がん剤を含む)、免疫療法などが行われることもあります。
手術が検討される場合
骨が折れている場合や、そのままにすると折れそうで日常生活に支障がある場合、または脊髄を圧迫して麻痺の危険がある場合に、手術で骨を固定したり、病変を取り除いたりすることがあります。手術が必要かどうかは、転移の場所や全身状態をふまえて医師が判断します。
この病気と共に生きる
骨転移の治療中は、痛みや疲れの波があるかもしれません。無理をせず、自分のペースで過ごすことが大切です。また、定期的な通院や画像検査を続けて、骨の状態を観察していきます。痛みが強いときは我慢せずに、医師や看護師に伝えてください。
生活習慣のアドバイス
- 痛みが穏やかな日は、軽いストレッチや散歩など、体を動かしすぎない範囲の活動をする。
- からだをひねる動作や重いものを持ち上げることを避ける。
- バランスのよい食事を心掛け、特にたんぱく質やカルシウムを十分にとる。
- 睡眠をしっかりとり、疲れがたまらないようにする。
食事と運動
骨を支える筋肉を維持するためには、医師や理学療法士の指導のもとで、安全な範囲の運動が役立ちます。食事では、乳製品・小魚・大豆製品・緑黄色野菜を取り入れてカルシウムを意識的にとるとよいでしょう。ただし、治療薬によって食事制限があることもあるため、必ず医師や栄養士に確認してください。
精神的健康と心の健康
骨転移と聞くと、不安や悲しみを感じるのは自然なことです。先のことを心配しすぎて気分が落ち込む方もいます。気持ちを抑え込まず、家族や友人、または医療者に話すことが助けになることがあります。がん相談支援センターなどの専門サポートも利用できます。
予防
がんそのものを完全に予防することはできませんが、がんの早期発見と治療が、骨転移を含む転移を防ぐいちばんの方法です。がん治療中の方は、定期的な検査や骨を健康に保つ生活(バランスのよい食事、適度な運動、禁煙)が勧められます。骨転移がすでにある場合でも、転倒や骨折を避けることで、進行による不自由を防ぐことができます。
検診プログラム
がんの診断を受けた後の定期検査では、骨シンチグラフィやCTなどで骨転移がないかをチェックすることがあります。また、高カルシウム血症の兆候を確認するための血液検査も行われます。かかりつけ医の指示に従って、定期的に受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 骨が弱くなって、日常生活の中で骨折が起こりやすくなる
- 背骨に転移があると、脊髄が圧迫されて歩行困難や麻痺が起こることがある
- 血液中のカルシウムが高くなり、吐き気・食欲不振・意識障害などが起こる(高カルシウム血症)
- 痛みが強くなって、夜眠れなくなったり、動けなくなったりする
長期的な見通し
骨転移は進行したがんで起こりますが、近年の治療の進歩によって、多くの方で痛みを抑えながら長く安定して過ごせるようになってきています。骨転移そのものを治すことは難しくても、がん全体の治療と組み合わせることで、生活の質を保ち、命に関わる危険を避けながら、大切な時間を過ごせる可能性があります。診断後も希望を持って、医療者と一緒に治療を続けていくことが大切です。
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最終更新: 2026年8月14日
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