便失禁について:悩みを一人で抱えずに、相談とケアを
概要
便失禁(便漏れ)は、便やガスが自分の意図しないときに、肛門から漏れてしまう状態です。便意を感じてからトイレまで間に合わない場合や、気づかないうちに便が少し漏れてしまう場合もあります。恥ずかしい症状ですが、適切な対処や治療で大きく改善することができる病気です。
重要な事実
- 便失禁は「よくある症状」であり、診療や相談ができます。
- 原因は一つではなく、便秘や下痢、出産の影響、神経や筋肉の障害などが関係します。
- 多くの場合、生活の工夫やリハビリで症状がよくなります。
はい、とてもよくある症状です。日本でも海外でも、高齢者に限らず、若い人や出産を経験した女性にもみられます。うまく話せる人が少ないだけで、実際には多くの人が同じ悩みを持っています。
子どもから高齢者まで、どの年齢でも起こり得ます。特に、出産を経験した女性、高齢者、長く便秘や下痢が続いている人、肛門や骨盤の手術を受けたことがある人に多くみられます。
症状
- 便失禁に加えて、突然のおなかの激しい痛みがある
- おなかが強く張って、吐き気や繰り返す嘔吐がある
- 便に大量の血が混ざる、黒くタールのような便が出る
- 高熱を伴う
- こうした場合はすぐに119番に連絡してください
- ⚠急に便失禁が始まり、足の力が入りにくい、しびれるなどの症状がある
- ⚠意識がぼんやりしたり、言葉がうまく出ない
- ⚠おしりの強い痛みや腫れがあり、発熱もある
- ⚠便に膿が混ざっている
- ⚠とくに急な変化がある場合は、なるべく早く医師の診察を受けてください
一般的な症状
- 便意が急にきて、トイレまでがまんできない
- 下着やパンツに便が少し付いてしまう
- ガスを漏らしたときに、便も少し出てしまう
- 硬い便と下痢便の両方を漏らすことがある
- 排便したつもりがないのに、便で下着を汚してしまう
子供の症状
- 幼稚園や学校のあいだに、パンツに便が付いてしまう
- 便秘が続いたあとに、やわらかい便が漏れる
- 便のにおいを周りに気づかれてしまう
- 子どもがトイレに行くのを嫌がる、隠したりする
高齢者の症状
- トイレに行くまでに時間がかかって漏れてしまう
- 下痢便が漏れやすい
- 便秘で直腸に便がつまり、その周りを下痢のような便が漏れる
- 体を動かすのが難しく、トイレに間に合いにくい
原因
主な原因
- 出産で骨盤底筋(骨盤の底を支える筋肉)や肛門の筋肉が傷んだ
- 長い便秘によって便が直腸にたまり、その周りから軟らかい便が漏れる
- 慢性の下痢で便を抑えきれなくなる
- 痔や肛門の手術のあとに、肛門を締める力が弱くなった
- 脳卒中や脊髄の病気、糖尿病による神経の障害
- 炎症性腸疾患(腸に炎症が続く病気)や過敏性腸症候群などの腸の病気
リスク要因
- 出産経験、とくに難しい分娩や会陰切開
- 高齢による筋力低下
- 長期間の便秘や下痢
- 肛門・直腸・骨盤の手術の既往
- 肥満や運動不足
- 神経や筋肉に影響する病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 数日前から急に便失禁が現れた
- 便失禁と一緒に血便や強い腹痛がある
- 高齢のご家族で、突然失禁が始まった
定期受診を予約すべき場合:
- 数週間以上便漏れが続いている
- 外出や仕事、学校生活に支障が出ている
- 下着や衣類を汚してしまうことが増えた
- おしりの周りが赤くなったり、ただれたりして痛い
診断
まず、症状や生活の状況、出産や手術の経験などを医師が丁寧に聞きます。そのあと、おなかや肛門の状態を確認するための診察が行われます。
行われる可能性のある検査
- おなかや肛門のまわりを触って確認する診察
- 直腸診(医師が指を肛門に入れて、肛門の筋肉や直腸の状態を確かめる検査)
- 便の検査(感染や炎症の有無を調べる)
- 肛門の超音波検査やMRI(肛門の筋肉の傷みを調べる)
- 肛門内圧検査(肛門を締める力や、便を感じる感覚を測る検査)
- 大腸カメラ(大腸の中の病気を調べる検査)
診察で予想されること
診察は少し恥ずかしいかもしれませんが、医療者は慣れているので安心してください。必要であれば、検査をしながら原因を一つずつ確認します。無理のない範囲で、あなたのペースに合わせて進められます。
治療
治療は、まず便の状態を整えることから始めます。便秘や下痢が原因の場合は、それを改善するだけで症状がよくなることもあります。続いて、トイレの習慣を見直したり、肛門や骨盤底筋を鍛えるリハビリを行ったりします。
自宅でのセルフケア
- 排便日記をつけて、便通や漏れのパターンをつかむ
- 食後や朝など、便意がきそうな時間にゆっくりトイレに行く
- 漏れやすい日には、あらかじめパッドや専用の下着を使う
- おしりをやさしく洗って清潔に保ち、保湿をする
- 水分を十分にとり、便の硬くなりすぎや下痢を防ぐ
医療治療
医師の指導のもとで、便の硬さや水分量を調整する薬、腸の動きを整える薬などが使われることがあります。また、骨盤底筋のトレーニング(骨盤の底の筋肉を意識して鍛える方法)やバイオフィードバック療法(肛門の筋肉の動きをモニターで見ながら練習する方法)なども行われます。薬は必ず医師の指示に従って使ってください。
手術が検討される場合
生活の工夫やリハビリでも十分な改善が得られない場合、医師と相談しながら手術を検討することがあります。手術には、傷んだ肛門の筋肉を縫い縮める方法などがありますが、どの治療が合うかは原因や全身状態によって異なります。
この病気と共に生きる
外出時は、あらかじめトイレの場所を確認しておくと安心です。お出かけバッグに着替えやおしりふき、パッドを入れておくと、万一のときも落ち着いて対応できます。決して一人で悩まず、頼れる人に伝えておくことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 便意を感じたらすぐにトイレに行く習慣をつける
- 便意をがまんしすぎないようにする
- 食事の後や排便のリズムに合わせて、外での予定を組む
- 強い力みを避け、ゆっくりと排便する
- 睡眠や休息を十分にとり、からだの緊張をほぐす
食事と運動
食事は便の硬さに大きく影響します。水分をしっかりとり、野菜や果物、穀物などの食物繊維をバランスよく食べることで、便の状態を整えやすくなります。脂っこい食事や刺激の強いもの、カフェインのとりすぎは下痢を誘発することがあるので、自分の体の反応を観察してみましょう。適度な運動は腸の動きをよくし、骨盤底筋を鍛えるのにも役立ちます。
精神的健康と心の健康
便失禁は、恥ずかしさや不安から人と会うのを避けたり、気分が落ち込んだりすることがあります。それはとても自然な感情ですが、一人で抱え込む必要はありません。気分が沈む、生きるのがつらいと感じるときは、迷わず医療者や家族、心の相談機関に伝えてください。
予防
すべての便失禁を完全に予防することはできませんが、便秘や下痢を改善すること、日頃から骨盤底筋を意識した運動をすること、トイレの習慣を整えることで、リスクを減らすことができます。
ワクチン
便失禁を直接予防するワクチンはありません。ただし、下痢を引き起こす感染症のなかには、予防接種で防げるものもありますので、医師に相談して検討できます。
検診プログラム
便失禁だけを対象にした特別な検診はありませんが、健康診断や便潜血検査(便に血が混ざっていないかを調べる検査)は、早期発見につながる大切な機会です。定期的に受けるようにしましょう。
合併症
治療しない場合
- おしりの周りの皮膚が赤くなったり、ただれたりする(皮膚炎)
- 尿路感染症(膀胱や尿の通り道の感染)を起こしやすくなる
- 下痢が強いときは脱水や栄養不足になることがある
- 強い恥ずかしさから外出を避け、社会的に孤立してしまう
- 気分が落ち込んだり、不眠になったりする
長期的な見通し
便失禁は、原因を一つずつ見つけて治療すれば、多くの人が症状を改善できます。たとえ完全に治らなくても、うまく付き合う方法や道具を身につけることで、暮らしの質は大きく変わります。希望を持って、一歩ずつ専門家と一緒に進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年10月20日
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