妊娠中の息切れ
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中に息を吸うとき、空気が足りないように感じたり、呼吸が浅くなったりすることをいいます。妊娠すると、ホルモンの影響で呼吸が速くなることがあり、また大きくなった子宮が肺を押すため、息切れを感じやすくなります。多くの場合は正常な変化ですが、病気が原因で起こることもあります。
重要な事実
- 妊娠中に息切れを感じることは、多くの妊婦さんにあります。
- 妊娠初期から感じることは、ホルモンの働きによるものです。
- 妊娠後期になると、おなかが大きくなって肺が圧迫され、さらに息切れが目立ちます。
- 急に強くなる息切れは、医師の診察を受ける必要があります。
はい、とても一般的な症状です。特に妊娠後期(妊娠7〜10か月)に多くの女性が経験します。
妊娠中の女性なら誰でもなる可能性があります。双子や三つ子などの多胎妊娠の場合、おなかがより大きくなるため息切れを起こしやすいです。また、妊娠前から喘息(ぜんそく)や心臓病がある方は、症状が強く出ることがあります。
症状
- 突然の強い息切れ
- 胸の痛みや圧迫感
- 唇や顔が青白くなる
- 血の混ざった痰(たん)が出る
- 意識がもうろうとする
- これらの症状がある場合は、ためらわず119番に電話してください。
- ⚠安静にしていても息切れが続く
- ⚠息切れが日ごとに悪化する
- ⚠咳や発熱を伴う
- ⚠足のむくみや痛みがある
- ⚠動悸(どうき)が激しい
一般的な症状
- 動いたときに息が切れる
- 横になると息苦しい
- 深呼吸をしようとしても十分に吸えない感じがする
- 会話中に息が上がる
子供の症状
- このテーマは妊娠中の女性のものであるため、小児の症状は該当しません。
高齢者の症状
- このテーマは妊娠中の女性のものであるため、高齢者の症状は該当しません。
原因
主な原因
- 妊娠ホルモン(プロゲステロン)が呼吸中枢を刺激して、呼吸が深くなったり速くなったりするため
- 大きくなった子宮が横隔膜(おなかと胸の間にある呼吸を助ける筋肉)を押し上げ、肺が広がりにくくなるため
- 妊娠中は血液の量が増え、心臓や肺に負担がかかるため
- 貧血(血液中の赤血球が不足し、酸素を運ぶ力が低下すること)により、体が酸素不足を感じやすくなるため
リスク要因
- 喘息(ぜんそく)などの呼吸器の病気
- 心臓や血管の病気
- 多胎妊娠(双子など)
- 妊娠前から肥満がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に息が苦しくなった
- 胸が痛い
- 唇の色が青い
- 妊娠後期に突然息切れが強くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠健診のときに、息切れの症状を伝える
- 息切れが気になるが、どのタイミングで受診すればよいか分からない場合は、かかりつけの産婦人科に電話で相談する
診断
まず医師が症状について詳しく聞きます。妊娠経過や持病の有無も確認します。その上で、必要に応じて身体の診察や検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状や経過の聞き取り)
- 聴診器による心臓と肺の音の確認
- 血中酸素濃度(SpO2)の測定
- 血液検査(貧血や炎症の有無など)
- 心電図(心臓のリズムを調べる検査)
- 胸部X線検査(必要な場合に、おなかを守りながら行う)
診察で予想されること
診察の結果、正常な妊娠経過によるものであれば、特別な治療はせずに経過を見ます。何か原因となる病気が見つかれば、妊娠中でも安全な方法で治療が始まります。検査や治療について不安なことがあれば、遠慮なく医師に質問しましょう。
治療
妊娠中の息切れの治療は、原因によって異なります。妊娠による正常な変化であれば、特別な治療は必要ありません。日常生活の工夫や姿勢の改善で症状が和らぐこともあります。喘息や貧血などの病気が見つかった場合は、その病気の治療を優先します。
自宅でのセルフケア
- 動作はゆっくりと、こまめに休憩をとる
- 座るときは背筋を伸ばして胸を開く
- 寝るときは左側を下にすると呼吸が楽になることがある
- 締め付けの強い服や下着を避ける
- 呼吸を整えるために、口をすぼめてゆっくり吐く練習をする
医療治療
病気が原因の場合は、妊娠中でも安全に使える薬があります。ただし、薬の種類や量は必ず医師が判断します。自己判断で薬を使ったり止めたりせず、医師の指示に従ってください。重症の場合には、入院して酸素投与や点滴などの治療を行うこともあります。
手術が検討される場合
妊娠中の息切れそのものに対して手術が必要になることはほとんどありません。ただし、まれに肺の血管が血栓で詰まる肺血栓塞栓症などの緊急の病気が見つかった場合、専門的な治療が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
息切れがあっても、自分に合ったペースで過ごせば日常生活を続けることができます。家事や仕事は、周りに助けを求めながら無理をしないことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と休息をとる
- たばこは吸わない(周りの人にも吸わないよう協力をお願いする)
- ストレスをためないように、好きな音楽を聴くなどリラックスする時間をつくる
- 急に立ち上がったり、急な温度変化の場所を行き来したりしない
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、貧血予防のため、鉄分を多く含む食品(赤身の肉、レバー、小松菜など)を適量とりましょう。運動は、医師の許可を得てから、散歩やマタニティヨガなどの軽いものを行ってください。運動中は無理をせず、息苦しくなったらすぐに休みます。
精神的健康と心の健康
息苦しさが続くと「赤ちゃんに酸素が届いていないのでは」と不安になることもありますが、その不安がさらに息苦しさを強くすることもあります。そんなときは、ゆっくり呼吸をして気持ちを落ち着け、信頼できる人に話しましょう。不安が強い場合は、医療機関に相談することも良い方法です。
予防
妊娠による息切れを完全に防ぐことはできませんが、急に動かない、姿勢に気をつけることで楽になることがあります。また、妊娠前から喘息や心臓病がある場合は、妊娠前にしっかり治療しておくことで、妊娠中の重症化を防ぐことができます。
ワクチン
妊娠中は、インフルエンザなどにかかると呼吸器の症状が重くなることがあります。妊娠中の予防接種は、医師と相談した上で、推奨されるものを受けるようにしてください。
検診プログラム
妊婦健診では、貧血や妊娠高血圧症候群を早期に見つけるために、定期的に血液検査や血圧測定が行われます。これらの検査を受けることで、息切れの原因になる病気を早く発見することができます。
合併症
治療しない場合
- 原因となる病気(喘息、貧血、心臓病など)が悪化すると、お母さんの体に負担がかかる
- 重症の場合、赤ちゃんに十分な酸素が届かなくなる可能性がある
- まれに、肺の血管が血栓で詰まる肺血栓塞栓症という命に関わる病気が隠れていることがある
長期的な見通し
妊娠中の息切れの多くは、出産後に自然になくなります。おなかが大きくなって起こる息切れは、赤ちゃんが元気に育っている証拠でもあります。適切な健診を受け、気になる症状があれば早めに相談することで、多くの方は安心して妊娠期間を過ごせます。たとえ病気が原因でも、妊娠中に安全な治療法が選ばれ、母子ともに良好な経過が期待できます。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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