ブルセラ症(マルタ熱)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ブルセラ症は、動物から人にうつる細菌の感染症です。この病気をおこす菌は「ブルセラ菌」とよばれます。感染した牛、ヤギ、ヒツジ、豚などの動物の体液や血液、また殺菌されていない乳製品から感染することがあります。特徴的な症状は、長く続く発熱、大量の汗、強いだるさ、関節の痛みなどです。
重要な事実
- 牛、ヤギ、ヒツジ、豚などの家畜が主な感染源です。
- 殺菌されていない牛乳やチーズから感染することがあります。
- 日本ではまれですが、海外の流行地域では今でも見られます。
日本ではほとんど報告されないまれな病気です。ただし、地中海沿岸、中東、中央アジア、中南米などでは今でも多く見られます。海外旅行へ行った後に長引く発熱やだるさがあると、この病気を考えることがあります。
畜産業にたずさわる人、獣医師、食肉加工場で働く人など、動物と頻繁に接する職業の人に多く見られます。また、流行地域で殺菌されていない牛乳やチーズを食べた人もかかることがあります。
症状
- 呼吸が苦しい、胸の痛みがある
- 突然の激しい頭痛と吐きけ、首の後ろが硬くなる
- 意識がもうろうとして呼びかけに反応しない
- けいれんが起きる
- ⚠高熱が3日以上続く
- ⚠水分がとれず、ぐったりしている
- ⚠関節が赤くはれたり、強い痛みが動けなくなるほどある
- ⚠下痢やおなかの痛みが続き、回復しない
一般的な症状
- 急に高熱が出る(特に夕方から夜にかけて上がることが多い)
- 汗をたくさんかく(特に夜間に強い)
- 強い疲れ・だるさ
- 関節や筋肉の痛み(ひざ、腰、背中など)
- 食欲がなくなる、体重が減る
子供の症状
- 熱が出て、ぐずったり不機嫌になったりする
- 疲れやすく、元気がなくなる
- ひざや足など関節の痛みを訴える
- おなかの痛み、吐き気、下痢をともなうこともある
高齢者の症状
- 高熱とは限らず、微熱が続くこともある
- ものすごく疲れて、寝て過ごす時間が増える
- 意識がぼんやりする、混乱する
- 腰や背中の痛みが強く、動きにくくなる
原因
主な原因
- ブルセラ菌という細菌に感染して発症します。この菌は、感染した動物の血液、尿、乳汁、肉、内臓の中にいます。
- 感染した動物の体液や組織に、傷のある肌や目の粘膜、口などを通して触れることで感染します。
- 殺菌されていない牛乳や羊乳、生乳から作ったチーズを飲んだり食べたりすることで感染します。
リスク要因
- 酪農、畜産、食肉加工、屠畜場などの仕事
- 獣医師や動物の検査をおこなう仕事
- 地中海沿岸、中東、中央アジア、中南米など流行地域への旅行
- 殺菌されていない乳製品を口にすること
- 動物の狩猟や解体、野生動物との接触
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱が続き、自分で水分をとれないほどぐったりしている
- 呼吸が苦しい、胸が痛い、意識がぼんやりする
- 激しい頭痛、首のこわばり、嘔吐がある
定期受診を予約すべき場合:
- 動物(家畜や野生動物)や生乳製品にふれた後に、発熱やだるさ、関節痛が続いている
- 流行地域への旅行から帰ってきてから原因不明の発熱がつづく
- 数週間以上、理由のわからない疲労感や関節痛がある
診断
医師はまず、症状に加えて「動物との接触」や「海外渡航歴」、「牛乳やチーズを食べたかどうか」をくわしく尋ねます。そのうえで、血液の検査をおこなって診断します。
行われる可能性のある検査
- 血液培養検査(血液の中にブルセラ菌がいるかを直接調べる)
- 抗体検査(体の中でブルセラ菌と戦った免疫の目印を調べる)
- PCR検査(微量の菌の遺伝子を検出する正確な検査)
- 必要に応じて、骨や関節、心臓の状態を確認する画像検査(レントゲン、超音波、MRIなど)
診察で予想されること
菌に感染してから症状が出るまでの期間は、通常2~4週間(1~8週間の幅があります)。血液の結果がそろうまで数日から数週間かかることがあります。また、検査結果が出る前でも、症状や接触の履歴から医師が治療を始めることもあります。
治療
ブルセラ症の治療は抗生物質(抗菌薬)が基本です。ブルセラ菌は体の奥に長くとどまりやすいため、短期間の治療では効果が不十分で、数週間以上(多くの場合6週間ほど)にわたって薬を飲み続ける必要があります。医師の指示どおりに最後まで飲み切ることが最も大切です。
自宅でのセルフケア
- 十分な水分をとり、安静にして休養をしっかりとる
- 熱が高いときは体を冷やし、汗をかいたら着替えをこまめにする
- 食欲がないときは、ゼリーやスープなど食べやすいものを少しずつとる
- 疲れが強い間は無理をせず、体の声を大切にする
医療治療
治療は、医師が処方する抗生物質を数種類組み合わせて使う『併用療法』が一般的です。症状が重い場合や、菌が臓器に広がっている場合は、入院して点滴による抗生物質治療をおこなうこともあります。治療中は再発していないか、血液検査などで経過を確認します。
手術が検討される場合
通常、手術は必要ありません。ただし、菌が骨や背骨に膿瘍(うみのかたまり)を作った場合や、心臓の内部の感染にまで広がってしまった場合など、ごくまれに手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
ブルセラ症の治療は数週間から数ヶ月にわたります。抗生物質を決められた時間に飲み続け、自己判断でやめないことが再発を防ぐために非常に大切です。定期的に医師の診察を受け、疲労や痛みが強い間は休むことを優先しましょう。
生活習慣のアドバイス
- ふだんより長く眠るなど、休息を多めにとる
- アルコールは肝臓に負担をかけるため、治療中は控える
- 動物やその製品を扱う仕事をする場合は、手袋やマスクなどの防護を続ける
- 発熱や関節痛など再発のサインに気づいたら、早めに医師へ連絡する
食事と運動
食欲がなくても、体力を回復するために栄養バランスのよい食事を心がけましょう。熱が下がり、体調が戻ってきたら、短い時間の散歩など軽い運動から始めます。無理な運動はかえって疲労を悪化させるため、主治医に相談しながら進めてください。
精神的健康と心の健康
病気の期間が長いと、「いつまで続くのだろう」「また再発するのでは」という不安やストレスを感じることがあります。これは自然なことです。気持ちを一人で抱え込まず、家族や友人、医師に話しましょう。
予防
はい、予防できます。特に流行地域では、殺菌されていない牛乳や羊乳、生乳から作ったチーズを飲んだり食べたりしないことが最も重要です。動物やその死体、血液、内臓を扱うときは、手袋やゴーグル、防護服を着用し、作業後は必ず手を洗いましょう。
ワクチン
現在、ヒトのブルセラ症に対して使えるワクチンはありません。家畜にはワクチンが使われることがありますが、人への接種は行われていません。「菌にふれない」「殺菌された食品を選ぶ」が予防の基本です。
検診プログラム
日本では健康診断でブルセラ症の検査はふつう行われません。ただし、畜産や食肉加工の職場では、必要に応じて健康管理や検査が行われることがあります。心配な場合は、「動物との接触があります」「海外へ行きました」と医師に伝えることが早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 関節炎(特にひざや腰、背骨の関節が痛み、腫れる)
- 心内膜炎(心臓の内側や弁に感染が広がり、重い症状になる)
- 肝臓や脾臓に膿瘍(うみのかたまり)ができる
- 髄膜炎(脳や脊髄を包む膜に炎症が起きる)
- 症状が長引く慢性ブルセラ症(疲労や関節痛、気分の落ち込みが続く)
長期的な見通し
ブルセラ症は、医師の処方する抗生物質を正しく飲み切れば、多くの人が数ヶ月以内に回復します。ただし、治療を途中でやめると再発することがあります。心内膜炎など重い合併症はまれで、その場合には入院しての治療が必要ですが、適切な医療があれば治せる病気です。あきらめずに医師と一緒に治療を続けることが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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