がんと低栄養(えいよう不足)
概要
がんという病気やその治療が原因で、体に必要な栄養が十分に取れなくなり、体重が減ったり、体力が落ちたりする状態を「がんと低栄養」といいます。低栄養とは、エネルギーやたんぱく質などの栄養が足りていない状態のことです。がんの影響で食欲がなくなったり、食べてもうまく消化・吸収できなくなったりすることがあります。
重要な事実
- がんの治療中は、栄養を保つことが治療の効果や体力の維持に大切です。
- 低栄養は、体の抵抗力を弱め、治療の日程に影響することがあります。
- 栄養のことは、ひとりで悩まず、医師や管理栄養士に相談することができます。
はい、がんの患者さんでは低栄養はかなりよくあることです。特に胃や腸などの消化器のがんや、治療が長引く場合に多いとされています。厚生労働省の資料でも、がんの治療中は栄養管理が大切であるとされています。
がんの患者さん全員に起こるわけではありませんが、特に胃がん・大腸がん・食道がんなどの消化器のながん、頭や首の放射線治療を受けている方、年齢が高い方、治療が繰り返し行われる方に影響しやすいと言われています。
症状
- 次のような症状がある場合は、ためらわずに救急(119番)を呼んでください。
- 意識がもうろうとしたり、呼びかけに答えなくなったりした
- 呼吸が苦しそうになる(ふだんと異なる)
- 激しい腹痛が続き、おう吐が止まらない
- 水分さえも受け付けず、体がぐったりしている
- ⚠体重が数日で急に減った
- ⚠何も食べられない日が続く
- ⚠高熱(38度以上)がある
- ⚠おう吐や下痢が続き、尿が減っている
一般的な症状
- 体重が減る
- 食欲がない、食事が進まない
- 体がだるい・疲れやすい
- 筋肉が減って、力が入らない
- むくみが見られることがある(たんぱく質不足で)
子供の症状
- 体重が増えにくい、または減る
- 身長・体重の伸びが悪い
- 食欲がなく、遊びや活動にも元気がない
- 顔色が悪い、元気がない
高齢者の症状
- 筋肉がやせて歩くのが遅くなる
- 寝たきりの状態になりやすい
- 食欲が落ち、食べる量が急に減る
- 口の渇きや飲み込みにくさも見られることがある
原因
主な原因
- がんそのものが体内の栄養を消費し、食欲や味覚を変化させる
- 抗がん剤や放射線治療、手術などの副作用で食欲が落ちる
- がんの位置によって、食べ物が通りにくくなったり、消化・吸収が悪くなったりする
- つらい症状や精神的なストレスで食べられなくなる
リスク要因
- 胃がん、大腸がん、食道がんなどの消化器のがん
- 頭頸部(頭や首)への放射線治療
- がんが見つかったときから体重減少がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急な体重減少(例:1週間で2kg以上)
- 水分や食事を全く受け付けない状態が2日以上続く
- おう吐や下痢が激しく、体がふらつく
定期受診を予約すべき場合:
- ゆっくりではあるが、体重が減り続けている
- 食欲が1か月以上戻らない
- 食べるとおなかが張る、痛むなど、食事に関わる症状がある
診断
医師や管理栄養士が、食事の内容・体重の変化・体の症状・血液検査の結果などを合わせて、栄養状態を総合的に評価します。がん治療の一環として行われることが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 体重や筋肉量の測定
- 食事の内容と量についての聞き取り
- 血液検査(アルブミンなど、たんぱく質の栄養状態を反映する項目)
- 必要に応じて体の筋肉量を測る検査
診察で予想されること
まずはあなたの状態と症状をていねいにうかがうことから始まります。いきなり難しい検査や入院になることはほとんどありません。今の生活に取り入れやすい方法を、一緒に組み立てることができます。
治療
低栄養への対応は、がん治療を行っているチーム(医師・看護師・管理栄養士など)が中心になります。体の状態や食事の量に合わせて、食事の工夫や栄養補助食品、必要に応じて点滴や栄養チューブを使う方法が検討されます。無理なく続けられることを大切にします。
自宅でのセルフケア
- 一度にたくさん食べず、少ない量でも回数を分けて食べる(例:1日5〜6回)
- 具だくさんのスープや、たんぱく質を含むおかずを最初に食べる
- むせや飲み込みづらさがある時は、水分にとろみをつける工夫を管理栄養士に相談する
- 食事を楽しくするため、味付けや香りを変えてみる
- 食間に栄養補助飲料などを取り入れる(医師や管理栄養士のすすめに従って)
医療治療
栄養を補うために、経管栄養(鼻や胃に細いチューブを入れて栄養を送る方法)や中心静脈栄養(大きな血管にカテーテルを入れて栄養を補う方法)が使われることがあります。また、食欲に関わる薬が使われる場合もありますが、医師の診察に基づいて慎重に判断されます。市販の薬や健康食品を自分で追加しないようにしてください。
手術が検討される場合
がんの手術後は、消化管の働きや食べる量が一時的に低下することがあります。退院後の食事についても、管理栄養士と相談しながら、少しずつ進めていくことが大切です。
この病気と共に生きる
無理のない範囲で生活リズムを整え、食事を楽しめる工夫をしましょう。「食べにくい」「飲み込みにくい」といった悩みは、家族や医療者に伝えることが支えになります。
生活習慣のアドバイス
- 医師に相談した上で、軽い体操や歩行など負担の少ない運動を続ける
- 口の中を清潔に保つ(歯みがきやうがい)
- ウイルス感染を防ぐため、手洗い・うがいを習慣にする
- 体重や食事量を記録して、変化に気づけるようにする
食事と運動
食事は「何を食べるか」だけでなく「食べることを楽しむか」も大切です。管理栄養士と一緒に、家族も協力できる簡単な工夫を見つけましょう。運動は食欲の維持にも役立ちますが、体力に合った範囲で行ってください。息苦しさや強い疲れが出たら中止し、医師に相談しましょう。
精神的健康と心の健康
がんと低栄養への不安が続くと、気分の落ち込みが強くなることがあります。つらい気持ちを抱え込まず、かかりつけ医、看護師、または地域の精神保健サービスに相談してください。もし命に関わる危険を感じたり、自分や他人を傷つける考えが浮かんだ場合は、すぐに救急(119番)を利用してください。
予防
がんの低栄養を完全に防ぐことは、病気の種類や進行度によって難しい面もあります。しかし、治療前から栄養状態を整えておくことで、体重減少や体力低下を緩やかにし、治療を続けやすくすることができると考えられています。
検診プログラム
がん治療を始める前の栄養状態のチェック(栄養スクリーニング)が勧められることがあります。体重や血液検査などで簡単に評価できるため、主治医に相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる
- 筋肉量が減り、筋力が低下する
- 治療の副作用が強く出たり、治療の計画が遅れたりする
- 骨が弱くなり、骨折しやすくなる
- 生活の質が大きく低下する
長期的な見通し
低栄養は、医療チームのサポートで改善できることが多いです。がんと向き合いながら食事を整えることは大変かもしれませんが、早めに相談して対策を始めれば、治療の継続や毎日の生活の質を保つことにつながります。一人ひとりに合わせた支援がありますので、あきらめずに医療者に話してください。
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最終更新: 2026年10月20日
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