薬が効きにくい腸内細菌「CPE」について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
CPE(カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌)とは、腸の中にすむ細菌のうち、強い抗菌薬を分解する酵素をもつ一群です。そのため、多くの抗菌薬が効きにくく、治療が難しくなることがあります。多くの場合は症状がなく、ただ腸の中にいる「保菌」の状態です。
重要な事実
- CPEは細菌の一種で、複数の抗菌薬が効きにくいという性質を持っています。
- 多くの人は無症状の「保菌」であり、感染症を起こすのは一部です。
- 主に病院などの医療施設で、手指や器具を介して広がるため、手洗いが最も大切です。
日本ではまれですが、入院経験がある人や抗菌薬を使った人、免疫が弱っている人では見つかることがあります。
長期入院や集中治療を受けている人、膀胱カテーテルや中心静脈カテーテルなどの医療器具を使っている人、高齢者、免疫力が低下している人が影響を受けやすいです。
症状
- 呼吸が苦しく、息がしにくい
- 意識がもうろうとする、呼びかけに応じない
- 顔色が青白い、冷や汗が出る、手足が冷たい
- けいれんが起きた
- 尿がほとんど出ない
- ⚠高熱が続く、強い悪寒がある
- ⚠感染部位の症状が急に悪化した(排尿痛、咳・痰、息苦しさなど)
- ⚠持病のある人、免疫が弱っている人に発熱や体調不良がある
- ⚠カテーテルなどの医療器具を入れている人に発熱や痛みがある
一般的な症状
- 多くの場合、症状がありません(無症状の保菌状態)
- 尿路感染症:排尿時の痛みや違和感、頻尿、残尿感、発熱
- 肺炎や呼吸器感染症:咳、痰、息苦しさ、発熱
- 血流感染症(血液の中に菌が入る重い感染症):高熱、悪寒、震え、全身の強いだるさ
子供の症状
- 元気がない、ぼんやりして反応が弱い
- 母乳やミルクを飲まない、吐く
- 呼吸が速い、ゼーゼーする
高齢者の症状
- 急に元気がなくなる
- 意識がぼんやりする、話がまとまらない(せん妄)
- 食欲が落ちる
- 体温が高い、または逆に低すぎる(発熱しないこともある)
原因
主な原因
- 腸内細菌の仲間が、カルバペネマーゼという抗菌薬を分解する酵素を作る遺伝子を獲得すること
- この酵素によって、強い抗菌薬(カルバペネム系抗菌薬)などが効かなくなる
- 菌は便や手指、医療器具、環境などを介して人から人へ移る(接触感染)
リスク要因
- 入院期間が長い、特に集中治療室に入院している
- 最近、抗菌薬を使用したことがある
- 膀胱カテーテル、中心静脈カテーテル、人工呼吸器などの医療器具を使っている
- 免疫力が低下している(がん治療中、臓器移植後など)
- 介護施設などで集団生活をしている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい症状(呼吸困難、意識の変化、けいれんなど)がある場合は、ためらわず119番で救急要請する
- 保菌または感染がわかっている人に高熱や悪寒、強いだるさが出た場合は、すぐに医療機関へ連絡する
- 感染している場所の症状が急に悪化した場合は、緊急の診察を受ける
定期受診を予約すべき場合:
- 症状がなければ、無理に受診する必要はありません。定期通院のときに相談してOKです。
- 転院・手術・旅行の前に、医療者にCPEのことを伝えましょう。
- かかりつけ医が決まっている人は、その医師に経過を相談しましょう。
診断
CPEを診断・確認するには、便、尿、血液、痰、直腸ぬぐい液などの検体をとって培養し、菌がどの抗菌薬に耐性かを調べます。さらに、カルバペネマーゼという酵素の有無や、それに関わる遺伝子を確認します。
行われる可能性のある検査
- 細菌培養検査(尿・便・血液・痰・直腸ぬぐい液など)
- 薬剤感受性試験(どの抗菌薬が効くかを調べる検査)
- カルバペネマーゼ産生の確認検査・遺伝子検査
- 感染の場所を調べるための血液検査、胸部X線、CTなどの画像検査
診察で予想されること
検体をとる検査自体は短時間で終わります。培養や耐性の結果は数日から1週間ほどかかることもあります。医療チームが結果を説明し、感染症専門医が今後の対応を一緒に考えます。
治療
CPEを腸内に持つだけの「保菌」には、抗菌薬による治療は基本的に行いません。抗菌薬を使う必要があるのは、実際に尿路感染症や肺炎、血流感染症などを起こしたときです。その場合は、感受性検査の結果をふまえて、慎重に治療します。
自宅でのセルフケア
- トイレの後や食事の前は、石けんと流水で手をしっかり洗う
- 処方された薬は、指示どおりに最後まで飲み切る
- 発熱や感染症があるときは、水分と栄養、休息を十分にとる
- 入院や通院のときは、自分がCPEを知っている場合、医療者に伝える
医療治療
感染症を起こした場合は、検体で見つかった菌に効く可能性が高い抗菌薬を、1種類または複数組み合わせて使います。重症の場合には入院して抗菌薬の点滴と全身管理を行い、効果を見ながら薬を調整します。
手術が検討される場合
膿瘍(うみのかたまり)ができている場合は、うみを出す処置や外科的な排膿が必要になることがあります。ただし、CPEの保菌そのものを取り除く手術はありません。
この病気と共に生きる
CPEを持っていても、症状がなければ日常生活や仕事、学校を制限する必要はありません。大切なのは、家族や医療者に伝えて、手洗いなどの感染対策を一緒に続けることです。
生活習慣のアドバイス
- 手洗い・手指消毒を習慣にする
- トイレの後、オムツ交換の後、ペットの世話の後は必ず手を洗う
- 血液や便、尿などの体液に触れるときは使い捨て手袋を使う
- ドアノブやベッド周りなど、手の触れる場所を清潔に保つ
食事と運動
特別に避けるべき食品はありません。栄養バランスのよい食事と十分な水分で体調を整え、体調がよければ散歩などの軽い運動も続けましょう。
精神的健康と心の健康
CPEについて知ると、「人にうつしてしまうのでは」「治療が難しいのでは」と不安になることがあります。過度に自分を責めず、不安な気持ちは医療者や家族に言葉で伝えてください。
予防
CPEの広がりは、手指衛生と医療機関での適切な感染対策によって大きく防ぐことができます。日本でも厚生労働省が薬剤耐性対策を進めており、病院では標準的な感染予防策がとられています。患者側も、面会時やトイレの後の手洗いに協力するとよいでしょう。
ワクチン
CPEを予防するワクチンは、現在ありません。
検診プログラム
入院時やリスクの高い方には、直腸ぬぐい液などで保菌の有無を調べるスクリーニング検査が行われることがあります。
合併症
治療しない場合
- 抗菌薬が効きにくいため、感染症が治りにくく長引く
- 血流感染症や敗血症など、全身の重い感染症に進むことがある
- カテーテルや人工呼吸器に関連した感染症を繰り返すことがある
- 免疫力が弱い人では、生命に関わる重症になることがある
長期的な見通し
CPEを持っていても、多くの人は無症状の保菌のまま、元気に生活できます。感染症を起こしても、適切な抗菌薬と集中治療によって回復する可能性は十分にあります。明るい見通しを持ちながら、医療チームと一緒に治療や感染対策に取り組みましょう。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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最終更新: 2026年8月14日
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