セリアック病の食事:グルテンを含む食品を安全に避けるには
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
セリアック病は、体の免疫が小麦や大麦などに含まれる「グルテン」というタンパク質に過剰に反応してしまい、小腸(食べ物を栄養に変える器官)を傷つけてしまう病気です。グルテンを食べると、小腸の内部にある細かい突起(ビラ)がダメージを受け、栄養をうまく吸収できなくなります。
重要な事実
- セリアック病は食べ物アレルギーではなく、自分の免疫が腸を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
- 治療の中心は、グルテンを含む食品を生涯にわたって完全に避けることです。
- 適切な食事療法を続ければ、腸は回復し、多くの症状は改善します。
日本では比較的まれな疾患とされてきましたが、診断技術の向上により、以前より多くの方が見つかるようになっています。世界では100人に1人程度という報告もあり、日本でも関心が高まっています。
子どもから高齢者までどの年齢でも発症し得ます。遺伝的な要素が強く、家族にセリアック病の方がいる場合や、1型糖尿病や甲状腺の病気がある方に多いことが知られています。日本でも発症する可能性があります。
症状
- 激しい腹痛が突然起こる
- 重度の下痢で水分がとれず、ぐったりする、意識がもうろうとする
- 血便や黒い便が出る
- 呼吸が苦しい、胸の痛みがある
- ⚠数日間、食べ物や水分を一切受け付けない
- ⚠ひどい嘔吐が続く
- ⚠重度の脱水症状(尿がほとんど出ない、唇や口の中が乾く、めまい)
- ⚠強い腹痛が改善しない
一般的な症状
- 下痢や軟便が続く
- お腹の張り、ガスが多い
- 腹痛や胃の不快感
- 疲れやすい、倦怠感
- 体重減少
- 貧血(赤血球が少なくなること)
子供の症状
- 身長や体重の伸びが遅い(発育障害)
- 子どもらしい活動が少ない、不機嫌
- 吐き気や嘔吐
- おなかが膨らんで見える
- 便のにおいが強い、脂っぽい便
高齢者の症状
- 慢性的な下痢よりも、貧血や骨がもろくなる骨粗しょう症が見られやすい
- 原因のはっきりしない疲労感
- 気分の落ち込み
- 手足のしびれやバランスの問題(まれ)
原因
主な原因
- 遺伝的にセリアック病になりやすい体質(特定の遺伝子)を持っていること
- グルテンを含む食品(小麦、大麦、ライ麦など)を食べることがきっかけになること
- 免疫システムが誤って小腸の組織を攻撃することで炎症や損傷が起こること
リスク要因
- 家族にセリアック病の方がいる
- 1型糖尿病、橋本病などほかの自己免疫疾患を持っている
- ダウン症候群や特定の染色体異常がある
- セリアック病になりやすい遺伝子(HLA-DQ2またはHLA-DQ8)を持っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 下痢や腹痛がひどく、日常生活ができない
- 急に体重が減っている
- めまいや立ちくらみがする
定期受診を予約すべき場合:
- 胃腸の不調が数週間以上続く
- 貧血を指摘されたが原因がわからない
- 子どもが成長しない、体重が増えない
- 家族がセリアック病と診断された
診断
セリアック病の診断は、血液検査と小腸の内視鏡検査を組み合わせて行います。日本では厚生労働省の指針に基づき、専門医が詳しく評価します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:セリアック病に関連する抗体(トランスグルタミナーゼIgA抗体など)を調べます。
- 小腸の内視鏡検査:胃カメラの延長で小腸の組織を少し取り、顕微鏡で傷ついていないか確認します。
- 遺伝子検査:補助的に使われることがありますが、単独での診断はできません。
診察で予想されること
検査を受ける前に、医師の指示があるまでグルテンを含む食事をやめないでください。途中でやめると正確な結果が得られなくなることがあります。診断までは通常の食事を続け、専門医の指示に従って検査を受けることをおすすめします。
治療
セリアック病の治療の基本は、グルテンを完全に含まない食事(グルテンフリー食)を続けることです。これにより腸の炎症がおさまり、症状が改善し、合併症のリスクも減らせます。薬で治る病気ではないため、食事管理が何より重要です。
自宅でのセルフケア
- 小麦、大麦、ライ麦を使ったパン、パスタ、麺類、ビールなどを避ける
- 加工食品のラベルを必ず確認し、「小麦」「大麦」「ライ麦」の表示を見つけたら避ける
- 日本では「醤油(しょうゆ)」に小麦が含まれることが多いので、グルテンフリーの醤油や代用品を選ぶ
- 自宅の調理器具やまな板、トースターなどで、グルテンを含む食品と触れないよう注意する(交差汚染を防ぐ)
- 外食では、お店のスタッフに「小麦アレルギーではなく、グルテンが食べられないのです」と明確に伝える
医療治療
現在のところ、セリアック病そのものを治す薬はありません。治療は食事療法が中心です。ただし、貧血やビタミン不足などがある場合は、医師や管理栄養士の指導のもとに栄養補助食品(サプリメント)が使われることがあります。症状が重い場合や合併症がある場合は、専門医による継続的な管理があります。
手術が検討される場合
セリアック病そのものが手術の適応になることは通常ありません。ただし、まれに腸の損傷が原因で深刻な合併症(腸の狭窄など)が起こった場合には、専門医が外科的な処置を検討することがあります。
この病気と共に生きる
グルテンフリー生活は最初は難しく感じるかもしれませんが、自然にグルテンを含まない食材も多くあります。ごはん(米)、野菜、果物、肉、魚、卵、豆類などは、もともと安全な食品です。日本の食事は米が中心なので、和食のベースを上手に活用すると取り組みやすいでしょう。毎日の食事の記録や、買い物の前にラベルを確認する習慣が助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 外食や旅行の前に、グルテンフリーの選択肢を調べておく
- 家族や友人にもセリアック病のことを理解してもらい、食事のサポートを受ける
- 管理栄養士に相談して、栄養が偏らないよう日々の献立を見直す
- グルテンフリーの食品を常備し、つい食べてしまいそうな時のために予備を用意する
- 定期的に医療機関を受診し、抗体検査や栄養状態をチェックする
食事と運動
グルテンフリーの食事だけでなく、骨を丈夫にするために十分なカルシウムとビタミンDをとることが大切です。適度な運動(ウォーキングや軽い筋トレなど)は、腸の状態が改善してから始めましょう。医師と相談しながら、無理のない範囲で体を動かしてください。
精神的健康と心の健康
セリアック病と診断されると、食事の制限や生活の変化にストレスや不安を感じることがあります。特に、外食や人との付き合いの中で「食べられない」という場面が続くと、気分が落ち込むこともあります。そんな時は、無理をせず、自分のペースで慣れていくことが大切です。気持ちのつらさが続く場合は、医師やカウンセラーなどの専門家に相談してもよいでしょう。周囲に病気のことを伝えて、理解を求めるのも一つの方法です。
予防
セリアック病は遺伝的な要因と免疫の反応が関係しているため、いまのところ発症を完全に予防する方法はありません。ただし、早期に診断してグルテンフリーの食事を始めることで、合併症を予防し、健康な状態を長く保てることがわかっています。
ワクチン
セリアック病を予防するためのワクチンは現時点ではありません。
検診プログラム
家族にセリアック病の方がいる場合、症状がなくても検査を受けることがすすめられることがあります。日本では、かかりつけ医や専門医に相談し、必要に応じて血液検査を行うかを決めるのがよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 栄養失調や貧血(特に鉄分、カルシウム、ビタミンB12の不足)
- 骨粗しょう症(骨がもろくなる)
- 妊娠しにくくなる、流産しやすくなる
- ほかの自己免疫疾患(甲状腺の病気など)を併発するリスク
- まれに、腸のリンパ腫というがんが発生するリスクが高くなる
長期的な見通し
セリアック病は、グルテンを完全に避ける食事を続ければ、多くの場合、腸は回復し、症状は改善します。適切な治療を続けていれば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。診断は大変かもしれませんが、正しい知識とサポートがあれば、安心して毎日を過ごせます。あなたは一人ではありません。医療チームとともに、少しずつ前に進んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月14日
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