脳性まひ(脳性麻痺)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳性まひとは、生まれる前や生まれるとき、または生まれて間もない時期に、脳に何らかの損傷が起こることで、体の動きや姿勢、筋肉のこわばりなどに影響が出る状態の総称です。損傷自体が進行することはなく、症状の重さや現れ方は人によって大きく異なります。
重要な事実
- 脳性まひは、親の育て方や行動が原因で起こるものではありません。
- 脳の損傷は進行しませんが、日常生活の工夫やリハビリで症状に合わせて対応することができます。
- 早期から適切な支援を受けることで、より豊かな生活を送ることが可能です。
日本ではおおよそ1,000人に1〜2人の割合で見られる、比較的まれな状態です。
脳性まひは、男の子にも女の子にも見られ、早産や低出生体重などに関係して起こることがあります。乳幼児期に気づかれることが多く、年齢や障害の程度によって必要な支援はさまざまです。
症状
- けいれんが止まらず、意識が戻らない
- 呼吸が浅い、苦しそう、呼吸が止まる
- 激しい頭痛やめまい、意識のもうろう
- 頭を強く打った、または転倒してぐったりしている
- ⚠急に動きが悪くなり、手足に力が入らない
- ⚠高い熱が出て、けいれんの様子が普段と違う
- ⚠飲み込みが急に難しくなり、食事や水分が摂れない
- ⚠骨折や関節の痛みを強く訴える
- ⚠突然、視野がかける、片目が見えにくくなる
一般的な症状
- 体の動きや姿勢の発達が遅れる(ねがえり、おすわり、はいはい、歩行など)
- 筋肉が固くこわばる(痙性)
- 筋肉が柔らかすぎる、またはふらふらする
- 手足の動きがぎこちない、震える
- 話すことや飲み込むことに困難がある
- 平衡感覚が弱い、姿勢を保ちにくい
子供の症状
- 生後数か月で頭をうまく支えられない
- おもちゃを握ったり、手を動かしたりすることが難しい
- 左右の動きのバランスが悪い(片側だけ使う)
- からだが反り返りやすい、またはぐにゃぐにゃと軟らかい
- 離乳食や哺乳の際にむせやすい
高齢者の症状
- 加齢とともに疲れや痛みを感じやすくなる
- 関節や筋肉が硬くなり、動きの範囲が狭まる
- 転びやすくなる、姿勢の変化が起こりやすくなる
- 骨粗しょう症や関節の変形を生じることがある
- 呼吸機能や嚥下機能に変化が現れることがある
原因
主な原因
- 出生前(胎児期)の脳への損傷: 妊娠中の感染症、おなかの中で脳に十分な酸素が届かない、脳の出血
- 出生時の損傷: 難産や仮死状態などで脳に損傷を受ける
- 出生後早期の損傷: 脳炎、髄膜炎、頭部外傷(乳幼児期の事故など)
リスク要因
- 早産(予定日よりかなり早く生まれる)
- 低出生体重
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)
- 妊娠中のお母さんの感染症(風疹、サイトメガロウイルスなど)
- 新生児期の重症な黄疸
- 出産時の合併症や仮死
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれんが続く、または意識障害がある場合
- 呼吸が苦しい、顔色や唇が青い場合
- 突然、体の動きが麻痺したように悪くなった場合
- 頭を強く打った後、いつもと様子が違う場合
定期受診を予約すべき場合:
- 子どもが年齢に合った運動能力(首のすわり、おすわり、歩行など)に達しない
- 手足のこわばりや左右差を感じる
- 姿勢の変化や食事・呼吸の様子が気になる
- 大人になってから、痛みや疲れ、生活のしづらさについて相談したい
診断
脳性まひの診断は、主に診察(からだの動きや筋肉の張りを観察)と、発達の経過、出生前後の病歴などをもとに行われます。脳の損傷の場所や程度を確認するために画像検査が行われることもありますが、診断には時間がかかることがあります。
行われる可能性のある検査
- 脳のMRI検査またはCT検査
- 聴力・視力の評価
- 発達や運動機能の専門的評価
- てんかんや代謝の病気を確認するための血液検査
- 必要に応じて、神経学的検査
診察で予想されること
診断を受けたら、担当医から詳しい説明を受けることができます。その際、現在の症状や今後の見通し、リハビリのプランなどが話し合われます。無理に結論を急がず、医療チームと一緒に家族にとって最善の選択肢を探していくことが大切です。
治療
脳性まひの治療は、症状を完全に取り除くことではなく、一人ひとりの生活のしやすさを高めることが目標です。理学療法、作業療法、言語聴覚療法などのリハビリを中心に、医師や専門家がチームで支援します。
自宅でのセルフケア
- 正しい姿勢を保つための座り方や寝る姿勢の工夫
- 関節や筋肉をやわらかくするための日々のストレッチ
- 生活しやすいように家の中の環境を調整する(手すり、床の段差をなくす、道具の工夫)
- 無理をしすぎず、休憩をこまめにとる
- 家族や支援者とコミュニケーションをしっかりとる
医療治療
けいれんを抑える薬や、筋肉のこわばりをやわらげる薬、筋肉の緊張を緩和するための注射などが、医師の判断で使われることがあります。どの薬や治療法が合うかは個人差が大きく、服用にあたっては必ず医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
筋肉や骨、関節の変形が日常生活に大きく影響している場合、腱の延長や骨切りなどの手術が検討されることがあります。手術はあくまで選択肢の一つであり、リハビリや装具などで効果が不十分な場合に、医師と十分に相談したうえで決められます。
この病気と共に生きる
毎日の生活では、着替え、食事、移動などに時間がかかることがあります。あせらず、本人のペースを大切にしましょう。できることは自分で行い、必要な場面では家族や支援者の助けを借りるというバランスが安心につながります。
生活習慣のアドバイス
- 体を動かすことを楽しむ(ウォーキング、水泳、バランスボールなど)
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 好きな趣味や人との交流を続ける
- 定期的に医療機関やリハビリスタッフのチェックを受ける
食事と運動
骨や筋肉を健康に保つため、バランスのよい食事を心がけましょう。特にカルシウムやビタミンDを含む食品は骨を丈夫にします。運動は、理学療法士などの指導を受けながら、自分のペースで安全に行うことが大切です。
精神的健康と心の健康
脳性まひのある子どもを持つ親や本人自身が、ストレスや不安、時には気分の落ち込みを経験することがあります。そうした感情は自然なものです。一人で抱え込まず、医療者、学校の相談室、地域の支援センターなどに話を聞いてもらうことで、気持ちが楽になることがあります。もしつらい気持ちが続く場合は、医師や臨床心理士に相談してください。
予防
脳性まひのすべてを予防することはできません。しかし、妊娠中のお母さんが規則正しい生活や感染症予防に努めること、赤ちゃんの頭部をぶつけたりしないように注意することなどで、一部のリスクを減らせる可能性があります。
ワクチン
風疹や髄膜炎など、脳に影響を及ぼす可能性のある感染症を予防するために、日本で推奨されている予防接種をスケジュールどおりに受けることが大切です。妊娠を考えている女性や赤ちゃんの周りの人も、風疹の抗体検査などを行うと安心です。
検診プログラム
脳性まひを早期に見つけるための特別なスクリーニング検査はありません。しかし、定期的な乳幼児健診や発達の観察を通して、気になる動きや発達の遅れを早めに把握することができます。
合併症
治療しない場合
- 筋肉や関節が固くなる拘縮(こうしゅく)が進む
- 骨盤のゆがみや股関節の脱臼、背骨の側わんが起こりやすくなる
- 嚥下(飲み込み)の障害による栄養不足や誤嚥性肺炎
- てんかん発作がコントロールされないまま続く
- コミュニケーションの困難から学習や社会参加の機会が狭まることがある
長期的な見通し
脳性まひは進行する病気ではありません。早期からのリハビリや適切な福祉サービス、周囲の理解によって、多くの方が充実した生活を送っています。今はロボット技術や支援機器、コミュニケーション支援なども発展しています。自分や家族に合った支えを見つけながら、無理なく前に進んでいくことができます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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