抗がん剤治療中・治療後のくらしの工夫~副作用と上手につきあうために
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
抗がん剤治療(化学療法)は、がん細胞を抑えるための薬を使う治療です。治療中や治療後には、だるさや吐き気、脱毛などの副作用があらわれることがあります。ここでは、副作用をやわらげ、毎日をより過ごしやすくするための工夫をご紹介します。
重要な事実
- 副作用の種類や強さは、使う薬や体調によって人それぞれです。
- 多くの副作用は治療が終わると少しずつよくなりますが、長く続くこともあります。
- つらい症状はひとりでがまんせず、医療者に伝えることが大切です。
抗がん剤治療を受ける多くの人が、何らかの副作用を経験します。すべての人に同じ症状が出るわけではありませんが、だるさや吐き気などはよく見られます。
抗がん剤治療を受けている人、また治療を終えた後も長く影響が続く人(がんサバイバー)にみられます。年齢や性別を問わず、治療内容によってあらわれ方もさまざまです。
症状
- 突然の息苦しさや胸の痛みがある
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 高熱(目安:38.5度以上)が続く、または悪寒をともなう発熱がある
- 突然の激しい頭痛やけいれんがある
- ⚠吐血や下血、真っ黒な便が出る
- ⚠白血球が極端に減り、感染症の可能性が高い(担当医から緊急時の連絡方法を伝えられている場合はそれに従う)
- ⚠強い痛みや、手足のしびれが急に悪化する
- ⚠尿量が極端に減る、水分がとれずぐったりする
一般的な症状
- 疲れやすさ・だるさ(倦怠感)
- 吐き気・嘔吐、食欲がわかない
- 口内炎や味覚の変化
- 下痢や便秘
- 手足のしびれ・痛み(末梢神経障害)
- 皮膚や爪の変化
- 感染しやすくなる(免疫力の低下)
- 眠れない・気分が落ち込む
子供の症状
- 治療中のお子さんは、だるさや吐き気のほかに、学校を休むことでの不安や、友だちと違う見た目になることでつらい思いをすることがあります。
- 子どもは自分の症状をうまく言葉にできないこともあるため、機嫌や生活の変化に注意を払うことが大切です。
高齢者の症状
- 高齢者は、だるさや筋力の低下を感じやすく、転びやすくなることがあります。
- もともとある持病や飲んでいる薬との関係にも注意が必要です。
- 脱水や栄養不足にならないよう、周囲の見守りと早めの相談が大切です。
原因
主な原因
- 抗がん剤は、がん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を与えるため、さまざまな副作用があらわれます。
- 特に、細胞の分裂が活発な髪の毛・口の中・胃腸・血液をつくる骨髄などは影響を受けやすくなります。
- 副作用の出方は、薬の種類・量・治療期間・体質によって異なります。
リスク要因
- 治療で使う抗がん剤の種類や併用する薬
- 治療の量(強い治療ほど副作用があらわれやすいことがあります)
- 年齢や体力、もともとの体調
- がんの種類や治療歴
- 腎臓や肝臓の機能
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱や悪寒がある
- 息苦しさ、胸の痛み、意識の変化がある
- 出血が止まらない、便が真っ黒など出血が疑われる
- 食事や水分がまったくとれず、体力の低下が心配される
定期受診を予約すべき場合:
- 吐き気や下痢・便秘などが続いてつらい
- 口内炎が痛くて食事ができない
- 発疹や皮膚の赤み、かゆみなどが出た
- 手足のしびれが強くなり、日常生活に支障がある
- 眠れない日が続く、気分が落ち込むなど心のつらさを感じる
診断
抗がん剤治療の副作用は、診察や問診、血液検査などをもとに、医療者が症状の種類や重症度を確認します。副作用を適切に伝えることが、ケアの第一歩です。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の内容、つらさの程度、生活への影響)
- 血液検査(白血球・赤血球・血小板など血液の状態)
- 体重や食事量の記録
- 必要に応じて、吐き気や痛みなどの詳しいアセスメント
診察で予想されること
治療中は、定期的に診察や血液検査があります。あらかじめ副作用のスケジュールや対処法を説明されることもありますので、分からないことや気になることはその都度質問しましょう。
治療
副作用への対処は、症状をやわらげながら、日常生活の質を保つことを目指します。薬の調整や支援的な治療が行われることもありますが、必ず医療者の指示のもとで行われます。ご自身で市販薬を判断して使うことは避けましょう。
自宅でのセルフケア
- ゆっくり休める時間を確保し、疲れをためない
- 栄養バランスを考えて、食べやすいものを少しずつとる(吐き気があるときは無理に食べない)
- 水分をこまめにとる(ただし、心臓や腎臓の病気で水分制限がある場合は医療者の指示に従う)
- 口の中を清潔に保ち、うがいやブラッシングをやさしく行う
- 低温の食事や香りの強いものを避けるなど、吐き気を引き起こすきっかけを工夫する
- 手足のしびれがあるときは、冷たいものや熱いものに直接触れない、歩くときはゆっくり動くなどの注意をする
医療治療
副作用をやわらげるための薬(吐き気どめ、痛みどめ、下痢どめなど)や、感染症を防ぐための治療が行われることがあります。どの薬を使うかは、症状の程度や治療内容に合わせて医師が判断します。また、必要な栄養を補うために、点滴や栄養補助食品が使われることもあります。必ず医療者の指示に従いましょう。
手術が検討される場合
がん治療の一環として手術が行われる場合、手術後に抗がん剤治療を行うこともあります。また、抗がん剤治療中に吐き気や口内炎などが強く、食事がとれない場合には、栄養を確保するために中心静脈栄養などが検討されることがあります。手術の時期や方法は、がんの状態や治療計画によって決まります。
この病気と共に生きる
治療中は、体調の波に合わせて無理のないペースで過ごしましょう。大事な用事は体調のよい時間帯に予定し、休める環境を整えることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠をしっかりとり、昼間の短い休憩(15〜20分程度)も役立ちます。
- 脱毛が気になる場合は、帽子やスカーフ、かつらを試すこともできます。病院の相談室や看護師に情報を求めましょう。
- 口内炎や味覚の変化があるときは、刺激の少ない食べ物を選び、味付けや温度を工夫しましょう。
- 感染を防ぐため、手洗い・うがいをこまめに行い、人混みを避けるなど生活の工夫をしましょう。
- 喫煙や過度の飲酒は控えることが望ましいです。
食事と運動
食事は、栄養バランスが大切ですが、つらいときは無理せず、食べやすいものを食べたいときに食べることも一つの方法です。運動は、医師に相談しながら、その日の体調に合わせて、散歩や軽いストレッチなど無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
抗がん剤治療の副作用は、体だけでなく心にも影響することがあります。外見の変化や治療の不安、疲れが続くことで、気分が落ち込んだり、いらいらしたりすることは自然なことです。つらい気持ちをひとりで抱え込まず、医療者や家族、友人、または相談機関に話すことが大切です。もし、自傷や希死念慮などの強い苦しさを感じたときは、すぐに医療機関や相談機関に連絡しましょう。日本では、電話やオンラインで相談できる窓口もあります(例:いのちの電話など)が、正確な情報は各自治体や医療機関で確認してください。
予防
抗がん剤治療の副作用を完全に防ぐことはできませんが、治療の計画を立てる段階から副作用への対策を準備することで、症状をやわらげ、強く出るのを防ぐことができます。また、治療中の生活習慣を整えることで、一部の副作用を軽減できる可能性があります。
ワクチン
治療中は免疫力が低下することがあるため、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種については、主治医と相談してください。一般的に、生ワクチンは治療中は避けることがあります。
検診プログラム
がん検診(乳がん・大腸がん・子宮頸がんなど)は、治療後の健康管理の一環としても重要です。治療後の定期検診・フォローアップの計画は主治医と相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 副作用を我慢し続けると、食事・水分がとれず栄養不良や脱水をまねくことがある。
- 感染症を早期に受診せず重症化すると、敗血症などの重い合併症につながる可能性があります。
- 手足のしびれやだるさが強く出たままにすると、日常生活の動作が不自由になり、転倒などのけがのリスクが高まります。
- 心の不調を放置すると、抑うつ状態が長引いたり、治療の継続が難しくなったりすることがあります。
長期的な見通し
抗がん剤治療の副作用の多くは、治療の終了とともに少しずつ軽くなりますが、長く続くこともあります。最近は副作用をやわらげるための方法や支援が進んでおり、医療者の助けを借りながら生活の質を保つことができます。がんサバイバーとしての生活はひとりひとり異なりますが、無理をせず、必要なサポートを利用しながら、自分らしい生活ペースを取り戻していきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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