胸の感染症(気管支炎・肺炎など)
概要
胸の感染症は、かぜのウイルスや細菌が気管(息の通り道)や肺に入って、炎症を起こす病気の総称です。代表的なものに「気管支炎(きかんしえん)」と「肺炎(はいえん)」があります。気管支炎は気管支という管の内側が炎症を起こすもので、肺炎はさらに奥の肺の組織まで炎症が広がったものです。せきやたん、発熱などが主な症状で、多くは数週間で良くなりますが、息苦しさが強いときは早めの受診が大切です。
重要な事実
- 胸の感染症の多くはウイルスが原因で、自然に良くなることが多いです。
- 細菌が原因の場合、医師が抗菌薬(細菌をやっつける薬)が必要かどうかを判断します。
- せきは治まってからも2〜3週間ほど続くことがあります。
- 高齢の方や赤ちゃん、持病のある方は重症化しやすいので注意が必要です。
とてもよくある病気です。風邪をひいたあとにせきが長引くのは、気管支炎のことがよくあります。肺炎はそれより頻度は低いものの、日本でも多く見られる病気です。
子どもから高齢者まで、誰でもかかります。特に、赤ちゃんや小さな子ども、65歳以上の方、たばこを吸う方、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの持病がある方、糖尿病や免疫の力が下がる病気のある方はかかりやすいと言われています。
症状
- 息ができず苦しそう、会話が途切れるほど息苦しい
- 唇や顔色が青白い、または紫色に見える
- 意識がない、またはもうろうとしている
- けいれんが起きた
- 血の混じったたんをたくさん吐いた
- 胸を強く押さえて苦しがる(心臓の病気の可能性もあります)
- ⚠38度以上の熱が2〜3日続いている、またはどんどん悪化している
- ⚠息切れが強くなってきた、横になると息が苦しい
- ⚠たんが膿のように黄色や緑色になって量が増えた
- ⚠水分がとれない、尿の回数が極端に減った
- ⚠持病(喘息、COPD、心臓病、糖尿病など)がある方の体調悪化
一般的な症状
- せき(乾いたせき、またはたんの出るせき)
- たん(透明、白、黄色、緑色など)
- 発熱や寒気
- 息苦しさ、息が切れる感じ
- 胸の痛みや胸のつかえ感(せきをしたときに痛むことも)
- ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音
- のどの痛み、鼻水、だるさ
子供の症状
- 呼吸がいつもより速い、息が苦しそう
- 小鼻をふくらませて呼吸する(鼻翼呼吸)
- 肋骨の間やのどもとがへこんで呼吸する(陥没呼吸)
- 母乳やミルクの飲みが悪い、水分がとれない
- 機嫌が悪い、ぐったりして元気がない
- せきで吐いてしまう
高齢者の症状
- 熱が出ないことがある(熱がなくても肺炎のことがあります)
- なんとなく元気がない、ぼんやりしている、話がかみ合わない
- 食欲がない、水分をとらない
- 急に歩けなくなった、転びやすくなった
- 息苦しさより「体がだるい」などの漠然とした不調で始まることがある
原因
主な原因
- ウイルス(かぜのウイルスなど)による感染 — 最も多い原因です
- 細菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌など)による感染
- マイコプラズマなど、特殊なタイプの細菌による感染
- 食べ物やだ液が誤って気管に入ること(誤嚥=ごえん)による感染 — 高齢者に多いです
- まれにカビ(真菌)による感染 — 免疫の力が大きく下がっている方に起こることがあります
リスク要因
- たばこを吸う、または周りに喫煙者がいる(受動喫煙)
- 65歳以上の高齢、または小さな子ども
- 喘息、COPD、肺の病気の持病がある
- 糖尿病、心臓病、腎臓病などの持病がある
- 免疫の力が下がる病気や治療を受けている
- 飲み込みにくさがある、むせやすい(誤嚥のリスク)
- 保育園・幼稚園・学校・職場など人が集まる場所での生活
- インフルエンザなどの感染症にかかったあと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが強い、呼吸が速い
- 唇や顔色が悪い
- 高熱が続いてぐったりしている
- 水分がとれず、尿がほとんど出ない
- 高齢の方で、急に元気がなくなった・ぼんやりしている
- 赤ちゃんや小さな子どもで、飲みが悪い・呼吸が苦しそう
定期受診を予約すべき場合:
- せきやたんが2週間以上続いている
- 熱は下がったのに、せきや息苦しさが良くならない
- たんの色や量が気になる
- 繰り返し胸の感染症にかかる
- たばこを吸っていて、せきが長引いている
診断
まずは問診と診察で、症状の経過や持病、喫煙歴などを確認します。医師は聴診器で胸の音を聞き、息の通り道や肺に異常な音がないかを調べます。必要に応じて検査を行い、気管支炎か肺炎か、ウイルス性か細菌性かをおおよそ判断します。
行われる可能性のある検査
- 聴診(胸の音を聞く診察)
- パルスオキシメーター(指先で血中の酸素の量を測る機器)
- 胸部レントゲン検査
- 血液検査(炎症の程度や感染のタイプを調べる)
- たんの検査(原因の菌を調べる)
- 必要に応じて胸部CT検査
診察で予想されること
診察は数分から十数分で終わることが多く、レントゲンや血液検査もその日のうちに結果が出ることが一般的です。検査の結果、肺炎が疑われる場合は治療方針を詳しく相談します。軽い気管支炎であれば、検査をせずに様子を見ることもあります。
治療
治療の中心は、体の力を助けながら自然に治るのを待つことです。ウイルスが原因の場合は、抗菌薬(細菌をやっつける薬)は効かないため使われません。細菌による感染が疑われる場合に、医師が必要と判断したときだけ抗菌薬が検討されます。症状に応じて、せきや熱を和らげるお薬が処方されることもあります。
自宅でのセルフケア
- 十分に休む — 睡眠をしっかりとることが一番の治療です
- 水分をこまめにとる(白湯、お茶、スープなど)
- 部屋を加湿する(加湿器や洗面器のお湯で乾燥を防ぐ)
- たんを出しやすくするため、上半身を少し高くして寝る
- たばこの煙を避ける(本人も周りの人も)
- 市販のせき止めや解熱薬を使う場合は、薬剤師やかかりつけ医に相談する
- 熱が下がっても、しばらくは無理をせず仕事や学校を休む
医療治療
医師は症状と検査結果から、ウイルス性か細菌性かを見極めます。細菌性が疑われる場合には抗菌薬が検討されますが、すべての人に必要というわけではありません。また、息苦しさが強い場合には酸素を吸入したり、痰を出しやすくするお薬を使ったりすることがあります。重症の場合は入院して治療を行うこともあります。お薬の名前や使い方については、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
通常の胸の感染症で手術が必要になることはほとんどありません。肺炎がこじれて肺の周りに膿がたまる(胸膜炎・膿胸)など、まれな合併症が起きた場合に、専門の医師が処置や手術を検討することがあります。
この病気と共に生きる
胸の感染症は、多くの場合1〜3週間ほどで良くなります。せきは最後まで残りやすく、治りかけに2〜3週間続くこともあります。熱が下がって元気になっても、せきが続く間は無理をせず、こまめに休憩をとりましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する、または受動喫煙を避ける
- 手洗い・うがいを習慣にする
- 十分な睡眠と栄養で体の抵抗力を保つ
- 人が多い場所ではマスクを着用する(流行期には特に)
- 部屋の湿度を40〜60%程度に保つ
- 持病がある方は、普段の治療をきちんと続ける
食事と運動
特別な食事制限はありません。消化のよいものを少量ずつ、温かいスープやお粥などで栄養と水分をとりましょう。回復してきたら、散歩など軽い運動から少しずつ始めます。息苦しさを感じたら無理をせず休み、体調に合わせて段階的に戻していくのが大切です。
精神的健康と心の健康
せきが長引くと、眠れない、疲れがとれない、仕事や学校に戻れるか不安になるなど、心が疲れてしまうことがあります。これは珍しいことではありません。症状が長引いて不安なときは、ひとりで抱え込まず、かかりつけ医や身近な人に気持ちを話してみてください。つらい気持ちが続く場合は、地域の相談窓口や心の健康相談を利用することもできます。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げることはできます。手洗い・うがい・マスク・禁煙・十分な睡眠が基本です。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンは、対象となる方にとって重症化を防ぐ助けになります。接種を希望する場合は、かかりつけ医に相談してください。
ワクチン
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンは、年齢や持病によって推奨される場合があります。どのワクチンが自分に必要かは、医師や自治体の案内で確認しましょう。
検診プログラム
胸の感染症そのものの決まった検診はありませんが、自治体や職場の健康診断で胸部レントゲンを受ける機会があります。喫煙歴がある方などは、必要に応じて医師に相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 肺炎へ進行する(特に高齢者や持病のある方)
- 胸膜炎や膿胸(肺の周りに膿がたまる状態)
- 脱水や体力の低下
- 呼吸不全(酸素がうまく取り込めなくなる状態)
- まれに敗血症(菌が全身に回る重い状態)
長期的な見通し
ほとんどの方は、適切に休みながら数週間で良くなります。せきがしばらく残ることはありますが、それも徐々に落ち着いていきます。高齢の方や持病のある方でも、早めに相談して適切なケアを受けることで、多くは回復します。不安なことがあれば、いつでもかかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年10月22日
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