胸の感染症(気管支炎・肺炎など)
概要
胸の感染症とは、鼻やのどより奥の「気道(きどう=空気の通り道)」や肺に、ウイルスや細菌が入って起こる感染症の総称です。かぜよりも深いところで炎症が起きるため、せきや発熱が長引いたり、息苦しさを感じたりすることがあります。代表的なものに「気管支炎(きかんしえん=気管支に炎症が起きるもの)」と「肺炎(はいえん=肺の奥の小さな袋に炎症が起きるもの)」があります。多くは軽く済みますが、肺炎は重症化することがあるため、早めの受診が大切です。
重要な事実
- 胸の感染症の多くはウイルスが原因で、数日から2週間ほどで自然に良くなることが多いです。
- 細菌が原因の場合は、医師の判断で抗菌薬(細菌をやっつける薬)が使われることがあります。ウイルスには抗菌薬は効きません。
- せきは治りかけても2〜3週間続くことがあります。長引くせきだけでも心配しすぎないでください。
とてもよくある病気です。特に冬から春にかけて増え、かぜをひいたあとに続いて起こることも少なくありません。外来を受診する人の多い理由のひとつです。
子どもから大人まで、どなたでもかかります。特に、小さな子ども、高齢の方、喫煙している方、喘息(ぜんそく)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患=たばこの煙などで肺の働きが落ちる病気)などの肺の病気がある方、糖尿病や免疫の働きが弱まる病気がある方は、重症化しやすいとされています。
症状
- 呼吸が苦しくて、話すのがやっと、または話せない
- 唇や爪の色が青白い・紫色に見える
- 意識がない、呼びかけても反応が鈍い、ぐったりしている
- 胸に強く鋭い痛みが突然起きた
- けいれんしている、体が硬直している
- (これらがあるときは、すぐに119番へ連絡してください)
- ⚠高い熱が3日以上続く、またはいったん下がってまた上がる
- ⚠息苦しさがどんどん強くなっている
- ⚠たんに血が混じる
- ⚠水分がとれない、尿がほとんど出ない
- ⚠症状が良くならず、むしろ悪化している
一般的な症状
- せき(乾いたせき、またはたんの出るせき)
- たん(透明・白・黄色・緑など、色がつくこともある)
- 発熱、悪寒(さむけ)、体のだるさ
- 息苦しさ、階段や坂道で息が上がる
- 胸の痛み、特に深く息を吸ったときの痛み
- ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音
- のどの痛み、鼻水、頭痛など、かぜのような症状から始まることも
子供の症状
- 機嫌が悪い、ぐったりして元気がない
- 母乳やミルク、食事の飲み込みが悪くなる
- 呼吸が速い、鼻の穴がふくらむ、肋骨の間や下がへこんで息をする(陥没呼吸=かんぼつこきゅう)
- ゼーゼー・ヒューヒューという音がする
- 夜中にせき込んで吐く、眠れない
- 泣き声が弱い、尿の量が減る
高齢者の症状
- 熱がはっきり出ないことがある(体温が低めでも肺炎のことがあります)
- 急に元気がなくなる、ぼんやりする、話がかみ合わない
- 食欲が落ちる、水分をとらなくなる
- せきやたんが目立たず、だるさや転倒が先に気づかれることがある
- 呼吸が浅く速くなる
原因
主な原因
- ウイルス(かぜウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、新型コロナウイルスなど)
- 細菌(肺炎球菌、マイコプラズマ、インフルエンザ菌など)
- ごくまれに真菌(カビの仲間)や、食べ物などが気道に入ることによって起こるもの
- 感染した人のせきやくしゃみのしぶきを吸い込む、または手についたウイルス・細菌が口や鼻から入ることで広がります
リスク要因
- 65歳以上、または5歳未満の子ども
- 喫煙、受動喫煙(周りの人のたばこの煙を吸うこと)
- 喘息、COPD、過去の肺の病気
- 糖尿病、心臓病、腎臓病などの持病
- 免疫の働きが弱くなる病気や治療を受けている
- 多量の飲酒、栄養不足、睡眠不足
- 保育園・学校・施設など、人が多く集まる場所での生活
- 飲み込みがうまくいかず、誤って気道に食べ物や唾液が入りやすい(誤嚥=ごえん)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが強い、呼吸が速い
- 高い熱が続く、または症状が急に悪くなる
- たんに血が混じる
- 水分がとれない、ぐったりしている
- 高齢の方や小さな子どもで、元気がない・普段と様子が違う
定期受診を予約すべき場合:
- せきやたんが2週間以上続く
- 熱は下がったのに、息苦しさやだるさが残る
- 毎年同じ季節に胸の症状をくり返す
- 喫煙していて、せきやたんが増えてきた
- 症状は軽いが、何度もくり返すので相談したい
診断
まず問診(症状の経過、持病、喫煙、周りでの流行など)と、聴診器で胸の音を聞く診察が行われます。多くはこれだけで見当がつきます。必要に応じて検査を追加し、肺炎かどうか、重症度はどのくらいかを判断します。
行われる可能性のある検査
- 胸部のレントゲン検査(肺の白い影などを見る)
- 血液検査(炎症の程度や体の状態をみる)
- たんの検査(原因の菌を調べる)
- パルスオキシメーター(指にはさむ器械で、血の中の酸素の量を測る)
- 必要に応じて胸部CT検査、鼻やのどの粘膜をぬぐう検査
診察で予想されること
診察は数分から十数分で終わることが多く、レントゲンや血液検査も当日に結果がわかることが一般的です。検査の結果、ウイルス性で軽い場合は「安静と水分で様子をみましょう」と言われることもあります。診断や検査の必要性は、症状や持病によって変わります。
治療
治療の中心は、体の抵抗力で感染と戦えるよう、しっかり休んで水分をとることです。原因がウイルスか細菌かによって方針が変わるため、自己判断で薬を決めず、医師の説明を聞いてください。
自宅でのセルフケア
- よく眠り、無理をしない(回復には休息がいちばん大切です)
- こまめに水分をとる(水、お茶、スープなど。お酒は控えましょう)
- 部屋を加湿し、空気が乾きすぎないようにする
- 喫煙している場合は、この機会に禁煙を考える(煙は気道を刺激します)
- 市販の解熱鎮痛薬などを使う場合は、薬剤師や医師に相談する(特に持病のある方、妊娠中の方、子どもは注意)
- 熱が下がっても、しばらくは無理な運動や長時間の外出を控える
医療治療
医師は症状・年齢・持病・検査結果から、ウイルス性か細菌性か、重症度はどのくらいかを判断します。細菌が原因と考えられる場合には抗菌薬(細菌を退治する薬)が処方されることがありますが、ウイルスには効きません。症状を楽にするための薬、痰を出しやすくする工夫、必要に応じて吸入や酸素投与が行われることもあります。重症の場合や、食事・水分がとれない場合、高齢の方や小さな子どもでは入院して治療することがあります。くわしい治療方針は主治医の説明に従ってください。
手術が検討される場合
胸の感染症は、通常は手術を必要としません。ただし、肺の周りに膿(うみ)や水がたまる合併症が起きた場合など、ごくまれに処置や手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
回復期は「良くなった気がしても、まだ本調子ではない」時期です。せきが残ることも多く、人にうつす可能性がある間は、マスクや手洗い、換気を心がけましょう。仕事や学校は、熱が下がり食事がとれて息苦しさがないことを目安に、医師に相談してから戻ると安心です。
生活習慣のアドバイス
- 手洗い・うがいをこまめに行う
- せきやくしゃみのときは、ひじの内側やティッシュで口を覆う
- 部屋の換気と適度な湿度を保つ
- 十分な睡眠と、バランスのよい食事を心がける
- たばこの煙を避ける(自分も周りの人も)
- 流行期は人混みをできるだけ避ける
食事と運動
食欲がないときは、スープやおかゆ、果物など、食べやすいものを少量ずつとりましょう。水分はのどが渇く前に少しずつ。回復してきたら、散歩など軽い活動から始め、息苦しさを感じたらすぐ休んでください。激しい運動は、症状が落ち着いて体力が戻ってからにしましょう。
精神的健康と心の健康
長引くせきや発熱は、眠れない・仕事や家事が進まないなど、気持ちの面でも負担になります。「なかなか治らない」と不安になるのは自然なことです。一人で抱え込まず、家族や友人、かかりつけの医療者に気持ちを話してみてください。つらさが続くときは、自治体の健康相談窓口や、医療機関の相談窓口を利用するのもひとつの方法です。気持ちがとてもつらいときは、ためらわずに医療者に相談してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、できることはたくさんあります。手洗い、換気、人混みを避ける、禁煙、十分な睡眠と栄養、そしてワクチンの接種が役立ちます。
ワクチン
年齢や持病に応じて、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、新型コロナワクチンなどの接種が勧められることがあります。対象や時期は年齢や健康状態で変わるため、かかりつけ医や自治体の案内、厚生労働省の情報を確認し、医師と相談して決めましょう。
検診プログラム
胸の感染症そのものの「検診」はありませんが、喫煙している方や長くせきが続く方は、肺の働きを調べる検査(スパイロメトリーなど)を勧められることがあります。また、高齢の方では、飲み込みの状態を確認してもらうことが誤嚥の予防につながります。
合併症
治療しない場合
- 肺炎(肺の奥まで炎症が広がる)
- 胸膜炎(きょうまくえん=肺を包む膜に炎症が起き、水がたまる)
- 肺に膿(うみ)がたまる状態
- 呼吸の働きが落ちる(呼吸不全)
- ごくまれに、菌が血液に入って全身に広がる
- 高齢の方では、体力が落ちて入院が長引くことがある
長期的な見通し
多くの方は、適切に休み、必要なら治療を受けることで、数日から数週間で良くなります。せきがしばらく残ることはありますが、それも少しずつ落ち着いていきます。早めに相談すること、そして焦らず回復を待つことが、いちばんの近道です。
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最終更新: 2026年10月22日
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