子どもの虐待に気づいたら ― 通報と支援の流れ
概要
子どもへの虐待とは、親や養育者が子どもに体や心の傷を与えたり、性的な害を加えたり、必要な食事・睡眠・医療・安全を用意しないことをいいます。この記事では、虐待かもしれないと気づいたときに「どこに、どうやって通報するか」「通報したあと何が起こるか」を、わかりやすく説明します。通報は、誰かを罰するためのものではありません。子どもの安全を守るための第一歩です。
重要な事実
- 日本では、虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人には、市区町村や児童相談所に通告する義務があると法律(児童虐待防止法)で定められています。確信が持てなくても「思われる」段階で通告してよいとされています。
- 全国共通の「児童相談所虐待対応ダイヤル 189(いちはやく)」があります。原則として24時間受け付けています(地域によって対応が異なる場合があります)。
- 通報した人の情報は守られ、匿名で相談することもできます。通報した人に不利益が生じることは通常ありません。
- 子どもが今まさに危険な状態にあるときは、迷わず119番(救急)や110番(警察)に連絡してください。
日本でも、児童相談所に寄せられる虐待に関する相談は年間20万件を超えるといわれ、決して珍しいことではありません。あなたの身近な場所で起きていてもおかしくない出来事です。
年齢や家庭の状況を問わず、どの子どもにも起こりえます。赤ちゃんから思春期の子どもまで、また経済的にゆとりのある家庭でも起こります。虐待は特定の「悪い親」だけの問題ではなく、孤立や疲れ、経済的な困難、支援の不足など、いくつもの事情が重なって起きることが多いものです。
症状
- 子どもが今まさに暴力を受けている、目の前で危険な状態にある
- 意識がない、呼吸がおかしい、けいれんしている、大量に出血している
- 首をしめられた、頭を強く打った、広い範囲のやけどなど、命に関わるけが
- 性被害を受けている、またはその直後である
- 子どもが「死にたい」と言っている、自分を傷つけている
- ⚠説明のつかないあざや傷が繰り返しある
- ⚠著しい栄養不良、脱水、長く続く不潔な状態
- ⚠強い恐怖や無反応など、心の状態が心配な変化がある
- ⚠保護者が支援を拒み、子どもの状態が悪くなっているように見える
- ⚠学校や保育園で、急な変化が続いている
一般的な症状
- 理由をうまく説明できない傷やあざを、繰り返し負っている
- おびえた表情で、大人を必要以上に警戒する
- 服や体が汚れたまま、食事や医療が必要なのに受けていないように見える
- 保護者の説明と、けがの様子が合わない、または説明を避ける
- 子どもの泣き声や、大人の怒鳴り声・物音が繰り返し聞こえる
- 家に帰りたがらない、特定の大人を極端に怖がる
子供の症状
- 赤ちゃん:体重が増えない、おむつや服がいつも汚れている、視線が合いにくい、泣いても反応が乏しい
- 幼児:急に赤ちゃん返りをする、夜泣きやかんしゃくが増える、特定の大人を極端にこわがる
- 学童:学校を休みがちになる、成績が急に下がる、友達と関わらなくなる、自分を傷つける行動が出る
- 思春期:家の話を避ける、外で過ごす時間が急に増える、リストカットなどの自傷、急な態度の変化
- 性器の痛みや出血、性について年齢不相応な知識や関心が見られる(性的な被害のサインのことがあります)
- 成長の遅れ、栄養不足、脱水、けいれんなど、体の状態が心配な変化
高齢者の症状
- 説明のつかないあざや傷がある、けがの手当てがされていない
- おむつが放置され、体や服が汚れている、脱水や栄養不足が見られる
- 本人の意思と関係なく、通帳や年金が使われている、お金の管理をめぐる不自然な変化
- 人との接触を極端に避ける、電話や訪問をさせてもらえない
- 急に無気力になる、不安が強い、おびえた様子になる
- 高齢者への虐待も、市区町村の相談窓口や地域包括支援センター、地域の保健師に相談できます
原因
主な原因
- 虐待は一つの原因で起こるものではありません。養育者の疲れやストレス、経済的な困難、地域からの孤立、DV(配偶者間の暴力)、心や体の不調、自分自身が子ども時代に虐待を受けた経験など、いくつもの事情が重なって起こります。
- 社会からの支援が届いていないことも背景になります。相談先を知らない、支援につながらない、一人で抱え込んでいるといった状況です。
- どんな事情があっても、子どもが傷つけられてよい理由にはなりません。虐待は子どもの責任では決してありません。
リスク要因
- 家庭が地域から孤立している、頼れる人が近くにいない
- 経済的な困難、住まいが不安定
- 保護者に心や体の不調、強い疲労や睡眠不足がある
- DVがある家庭
- 複数の子どもを一人で長時間みている、支援者がいない
- 保護者自身が子ども時代に虐待を経験している
- アルコールや薬物の問題がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けが、やけど、頭を打った、意識がぼんやりしている
- 性被害が疑われる(できるだけ早く。着替えずに受診すると証拠が残りやすくなります)
- 食事や水分がとれない、脱水がある、体重が増えない
- 自傷や「死にたい」という発言がある
定期受診を予約すべき場合:
- 子どもや家族の様子が気になるが、虐待かどうか自信が持てない
- 子育てのことで自分自身がいっぱいいっぱいで、誰かに話を聞いてほしい
- かかりつけ医や保健師、学校の先生に相談したいことがある
- 子どもの心や体の変化が続いている
診断
虐待は「病気」ではなく、子どもと家庭の安全を守るための「対応」が必要な事柄です。通報や相談を受けると、児童相談所が市区町村と連携して子どもの安全を確認し、必要に応じて医師の診察、警察、学校、保育園、保健師などと情報を共有しながら、これからの支援の方向を決めていきます。診断名をつけることよりも、「今この子は安全か」「どんな支援が必要か」を考えることが中心になります。
行われる可能性のある検査
- 身体診察(傷やあざの位置・形・治り具合を確認します)
- 必要に応じた画像検査(骨折や内出血がないかの確認)
- 栄養状態や発育の確認(身長・体重の測定)
- 心理面接や発達の確認
- 関係者(保護者、学校、保育園など)からの聞き取り
診察で予想されること
通報すると、まず子どもの安全確認が行われます(目安として48時間以内)。必要であれば、一時保護(安全な場所で子どもを一時的に守ること)が行われることがあります。同時に、家族への支援(子育ての相談、生活の支援、心のケア)が計画されます。通報した人の名前が相手に伝わることは通常ありません。結果が出るまでに時間がかかることもあります。
治療
支援の目的は、子どもの安全を守り、心と体の傷を癒やし、家庭が安心して子育てできる状態に近づくことです。子どもへのケアと、養育者への支援が同時に進められます。
自宅でのセルフケア
- 見たこと・聞いたことを、日付とあわせてメモしておく(推測は書かず、事実だけを)
- 自分一人で確かめようとしない。子どもに何度も質問すると、かえって負担になることがあります
- 匿名で相談できる窓口を使う
- 通報したあとに不安や罪悪感を感じるのは自然なこと。一人で抱えず、信頼できる人や相談窓口に話す
- 自分自身が危険を感じる場所には、一人で近づかない
医療治療
けがや病気の治療、栄養の回復、年齢に応じた心のケア、発達の支援が行われます。家族には、子育ての相談、生活面の支援、必要に応じて心のケアが提供されます。支援は、児童相談所、市区町村、保健センター、学校、医療機関、警察などが連携して進めます。薬が必要かどうかは、医師が個別に判断します。
この病気と共に生きる
子どもが安心できる毎日を取り戻すには、時間がかかることがあります。生活のリズムを整え、大人が落ち着いて関わることが回復の土台になります。支援を受けている間も、子どもの気持ちは揺れ動きます。「あなたは悪くない」と伝え続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間に寝て、決まった時間に食べるリズムを大切にする
- 子どもの話を、急かさずに聞く時間をつくる
- 担当の相談員、保健師、学校の先生との連絡を絶やさない
- 家族以外の信頼できる大人とのつながりを保つ
- 保護者自身が休息をとる時間を、意識して確保する
食事と運動
バランスのよい食事と、外で体を動かす時間は、子どもの心と体の回復を助けます。完璧を目指さず、できる範囲で続けることが大切です。食欲がない、眠れないといった変化が続くときは、医療機関や相談窓口に伝えてください。
精神的健康と心の健康
虐待を経験した子どもは、不安、怒り、無力感、自分を責める気持ち、睡眠の乱れ、集中しにくさなどを抱えることがあります。つらい記憶がよみがえることや、人を信じにくくなることもあります。これらは「弱さ」ではなく、つらい体験への自然な反応で、適切な支援によって和らいでいくことが多いものです。つらい気持ちが強いとき、自分や子どもを傷つけたい気持ちがわいたときは、一人で抱えずに相談してください。命に関わる危険があるときは119番、警察の助けが必要なときは110番です。
予防
虐待を完全になくすことは簡単ではありませんが、減らすことはできます。地域で子どもと家庭を見守ること、相談先をみんなが知っていること、子育てを一人で抱え込まない仕組みがあることが、大きな予防になります。「気になる家庭を見かけたら、さりげなく声をかける・相談する」という小さな行動も、予防の一部です。
検診プログラム
妊娠中からの相談、乳幼児健診、学校での健康診断など、子どもと家庭に定期的に触れる機会が、変化に気づく場になっています。気になることがあれば、これらの場で話してみてください。
合併症
治療しない場合
- けがや病気が悪化する、発育や栄養の遅れが生じる
- 不安、うつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心の不調
- 人を信じることや、感情をコントロールすることが難しくなる
- 学校生活や学習への影響、友人関係の困難
- 思春期以降の自傷や、危険な行動のリスク
- 次の世代でも同じことが繰り返されるリスク(ただし、支援によって変えていくことができます)
長期的な見通し
早くに支援が届くほど、子どもが安心を取り戻す力は大きくなります。虐待を経験した子どもでも、信頼できる大人との関係の中で、心と体は回復していきます。家庭が支援とつながることで、子育ての状況が良くなることも少なくありません。心配なときは、ためらわずに相談してください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年10月22日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.