小児白血病(子どもの白血病)
概要
白血病(はっけつびょう)は、血液をつくる細胞ががん化してしまう病気です。血液は骨の中心にある「骨髄(こつずい)」という場所でつくられます。骨髄では、酸素を運ぶ赤血球、出血を止める血小板、感染と戦う白血球がつくられています。白血病になると、これらの正常な細胞が十分につくれなくなり、代わりにがん化した細胞が増えていきます。その結果、貧血(顔色が悪い、疲れやすい)、感染しやすい、出血しやすいといった症状が現れます。子どもに多いのは「急性リンパ性白血病」と「急性骨髄性白血病」で、特に急性リンパ性白血病が多く見られます。小児白血病は、子どものがんの中では最も多い種類ですが、それでも非常にまれな病気です。
重要な事実
- 白血病は血液の細胞ががん化する病気で、子どもでは「急性」のタイプがほとんどです。
- 現在の治療では、多くの子どもが長期間元気に過ごせるようになってきています。治療は数年にわたることが多く、専門の医療チームが支えます。
- 白血病そのものがうつることはありません。家族や友だちと同じ生活を続けて大丈夫です。
小児白血病は、子どもに起こるがんの中では最も多い種類ですが、それでも人口あたりで見ると非常にまれです。日本の15歳未満の子どもでは、年間およそ1万人に1人弱の割合で小児がんで診断され、そのうち約3分の1が白血病とされています。つまり、ほとんどの子どもには起こらない病気です。
主に15歳未満の子どもに起こり、特に2〜5歳ごろに多く見られます。男の子にやや多いとされています。生まれつき特定の遺伝的な特徴をもつ子ども(ダウン症など)では起こりやすいことが知られていますが、多くの子どもには特に理由が見つかりません。大人の白血病とは種類や治療の考え方が異なります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- けいれん(ひきつけ)が起きた、または止まらない
- 呼吸が苦しそう、唇や爪が青白い
- ぐったりして反応がなく、尿が出ない
- 止まらない出血がある(鼻血が15分以上止まらない、大量の吐血・下血など)
- 高熱に加えてぐったりしている、または顔色が明らかに悪い(感染が重くなっている可能性があります)
- ⚠38度以上の発熱が続く、または繰り返す
- ⚠あざが急に増えた、皮膚に点状の出血が広がっている
- ⚠鼻血や歯ぐきの出血が止まりにくい
- ⚠骨の痛みが続いて歩きにくい、夜も痛がる
- ⚠リンパ節のはれが2週間以上続く、または大きくなっていく
- ⚠顔色の悪さと疲れやすさが数週間続く
- ⚠原因不明の体重減少や食欲低下が続く
一般的な症状
- 顔色が悪い、疲れやすい、すぐ息切れがする(貧血による症状)
- 発熱が続く、かぜが長引く、感染症にかかりやすい(正常な白血球が減るため)
- あざができやすい、鼻血や歯ぐきの出血が止まりにくい(血小板が減るため)
- 首やわきの下、足のつけ根のリンパ節がはれる
- 食欲がない、体重が減る、元気がない
- 皮膚のかゆみや発疹が出ることがある
- おなかが張る、肝臓や脾臓(ひぞう)が大きくなる
子供の症状
- 足や腕、背中などの骨や関節の痛みを訴える。小さな子どもでは「足が痛い」と言えず、歩きたがらない・触ると泣くといった様子で気づかれることがあります。
- いつもより機嫌が悪い、ぐずりやすい、遊ばない、昼寝が増えた
- 発熱が数日続き、抗菌薬を使ってもすっきりしない
- 成長曲線から外れるほど体重が増えない
- 学校や保育園で「元気がない」「顔色が白い」と指摘される
- けがをしていないのにあざが増えている
原因
主な原因
- 多くの場合、はっきりした原因は見つかりません。血液の細胞が育つ過程で、遺伝子(体の設計図)の変化が偶然積み重なって起こると考えられています。
- この遺伝子の変化は、生まれたあとに体の細胞の中で起こるもので、親から子どもへ受けつがれるものではありません。
- 放射線被ばくや、過去に別のがんに対して行った治療(放射線や一部の抗がん薬)が関係することもありますが、これはごく一部のケースです。
- ダウン症など、生まれつき特定の遺伝的な特徴がある場合に起こりやすいことが知られています。
リスク要因
- ダウン症候群、Fanconi(ファンコーニ)貧血、一部の免疫不全症など、生まれつきの遺伝的な特徴
- 過去に別のがんに対して放射線治療や化学療法を受けたことがある(治療後の長期フォローが必要です)
- 高線量の放射線にさらされた経験
- 兄弟に白血病の子どもがいる場合はリスクがやや高いとされますが、それでも非常にまれです
- なお、一般的な日常生活(テレビ、電子レンジ、携帯電話、予防接種、食生活など)が白血病の原因になるという確かな証拠はありません。保護者の方がご自身を責める必要はありません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38度以上の発熱が続く、または繰り返す
- あざや点状の出血が急に増えた、鼻血や歯ぐきの出血が止まりにくい
- 歩きたがらない、触ると痛がるなど、骨の痛みが続く
- 顔色が明らかに悪く、ぐったりしている
- リンパ節のはれが大きくなっていく
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすさ、顔色の悪さ、食欲のなさが2〜4週間以上続く
- かぜではない発熱を繰り返す、感染症にかかりやすい状態が続く
- 体重が増えない、成長曲線から外れてきた
- 皮膚のかゆみや発疹が続く、おなかが張っている気がする
- 園や学校で「元気がない」「顔色が白い」と何度も言われる
診断
まずは問診と体の診察、そして血液検査(採血)を行います。血液検査で白血球・赤血球・血小板の数や種類に異常があれば、小児血液腫瘍の専門医がいる病院に紹介されます。そこで確定のための検査(骨髄検査など)が行われます。診断がつくと、どのタイプの白血病か、治療の計画を立てるために必要な詳しい検査が進められます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血算):赤血球・白血球・血小板の数と種類を調べます
- 血液の顕微鏡検査:血液の中に異常な細胞がいるかを確認します
- 骨髄穿刺(こつずいせんし)・骨髄生検:腰の骨などから骨髄の細胞を採って調べます。局所麻酔や鎮静を使って行われ、痛みはできるだけ抑えられます
- 染色体検査・遺伝子検査:白血病のタイプを細かく分類し、治療の選択に役立てます
- 腰椎穿刺(ようついせんし):脳や脊髄を包む液(髄液)を調べ、病気が中枢神経に及んでいないかを確認します
- 画像検査(レントゲン、CT、超音波、MRIなど):リンパ節や臓器の状態を確認します
- 心臓や腎臓の機能検査:治療を安全に進めるために行います
診察で予想されること
診断がつくまでに数日かかることがありますが、緊急性が高い場合はすぐに検査が進みます。骨髄検査は痛みを伴うことがありますが、鎮静や麻酔で負担を減らす工夫がされています。結果を待つ間は、ご家族にとってとても不安な時間です。病院のスタッフに質問をメモしておき、少しずつ聞いていくことをおすすめします。担当医は治療方針、見通し、副作用などを説明してくれます。セカンドオピニオン(別の医師の意見を聞くこと)を求めることもできます。
治療
小児白血病の治療は、小児がんの専門病院で、医師・看護師・薬剤師・心理士・ソーシャルワーカーなどチームで行われます。大きく分けて「寛解導入(かんかいどうにゅう)」「地固め」「維持療法」という段階を踏み、全体で2〜3年かかることが多いです。治療の目的は、白血病細胞を減らして正常な血液をつくれる状態(寛解)にし、その状態を長く保つことです。
自宅でのセルフケア
- 手洗いをていねいに行い、人混みや感染症が流行している場所をできるだけ避ける
- 発熱や体調の変化を早めに医療チームに伝える(治療中は小さな変化も大切なサインです)
- 歯みがきやうがいなど口腔ケアを丁寧に行い、口の中の感染を防ぐ
- 食事は衛生面に気をつけ、治療中に避けたほうがよい食品について管理栄養士に相談する
- 予防接種は治療中に受けられないものがあるため、必ず主治医に相談してから受ける
- 体調のよいときは、無理のない範囲で体を動かし、ストレッチや軽い散歩を取り入れる
- 家族自身も休息をとり、ひとりで抱え込まないようにする
医療治療
治療の中心は「化学療法(抗がん薬による治療)」です。何種類かの薬を組み合わせ、段階を追って進めます。白血病のタイプや遺伝子の特徴に合わせて、治療の組み合わせや期間が調整されます。中枢神経(脳や脊髄)に病気が及ぶのを防ぐための治療が行われることもあります。再発のリスクが高い場合などには、造血幹細胞移植(骨髄移植など)が検討されます。治療中は、輸血や感染症の予防・治療など、体を支えるケアも並行して行います。治療の種類・期間・副作用は個人によって異なるため、具体的な内容は必ず担当医から説明を受け、わからないことはその場で質問してください。
手術が検討される場合
白血病そのものを取り除く手術は通常行いません。ただし、治療のための点滴ルート(中心静脈カテーテル)を体内に留置する処置や、合併症への対応、組織を採って調べるための処置などで、小さな手術が行われることがあります。
この病気と共に生きる
治療中は通院や入院が長く続き、生活のリズムが大きく変わります。家族で役割を分担し、付き添いの交代や、きょうだいの世話を周囲に頼ることをためらわないでください。学校や保育園とは早い段階で相談し、入院中の学習支援や復学のサポートについて情報を集めておくと安心です。治療が落ち着いたあとも、定期通院や「晩期合併症(治療の影響が後になって現れること)」のフォローが続きます。
生活習慣のアドバイス
- 治療中は感染予防を最優先に。手洗い、うがい、人混みを避けることを心がける
- 家族も含めて予防接種の記録を整理し、主治医と相談しながらスケジュールを立てる
- 学校・保育園・塾などと連絡を密にし、無理のない範囲で人とのつながりを保つ
- 治療の記録(症状、服薬、体温など)をノートやアプリでまとめておくと、診察時に役立つ
- きょうだいにも「今どうなっているか」を年齢に合わせて説明し、気持ちを聞く時間をつくる
- 保護者自身の睡眠と食事をできるだけ確保する。疲れたときは周囲に助けを求める
食事と運動
治療中は免疫力が下がっているため、生ものや加熱が不十分な食品は避け、衛生に気をつけた食事がすすめられます。食べられる量が減るときは、少量を何回かに分ける、好物を取り入れるなど工夫を。食事内容は担当の管理栄養士に相談すると安心です。運動は、体調と主治医の指示に合わせて、感染リスクの低い環境で軽い散歩やストレッチなどから始めます。骨がもろくなっている時期は、転倒や打撲に注意が必要です。
精神的健康と心の健康
お子さん本人は、痛みや治療への不安、友だちと会えないさびしさ、自分の体への戸惑いを抱えます。年齢に応じて、わかりやすい言葉で病気や治療について説明し、質問があれば答えることが安心につながります。ご家族、特に保護者の方は、不安・罪悪感・疲労を抱えやすく、それが自然な反応です。眠れない、気分の落ち込みが続く、日常生活が回らないと感じるときは、医療チームの心理士や相談員、地域の相談窓口に早めに声をかけてください。つらい気持ちをひとりで抱えず、信頼できる人に話すことが大切です。
予防
小児白血病のほとんどは、はっきりした原因がわかっていないため、確実に防ぐ方法はありません。保護者の生活習慣や子育てが原因になるという証拠はなく、ご自身を責める必要はありません。できることとしては、必要のない放射線被ばくを避ける、家族で禁煙を心がける、バランスのよい食事と十分な睡眠で健康を保つ、など一般的な健康づくりがすすめられます。
ワクチン
白血病そのものを防ぐワクチンはありません。ただし、治療中は感染症にかかると重症化しやすいため、治療を始める前に受けられるワクチンについて主治医と相談しておくことが大切です。治療中や治療後しばらくは受けられないワクチン(生ワクチンなど)があります。
検診プログラム
小児白血病を早期に発見するための一般的な検診はありません。気になる症状があるときに、早めに小児科を受診することが大切です。遺伝的な特徴や過去の治療歴などでリスクが高いと判断された場合は、主治医のもとで定期的なフォローが行われます。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進み、息切れや強い疲労、めまいが起こる
- 感染と戦う白血球が減り、重い感染症にかかりやすくなる
- 血小板が減って出血しやすくなり、止まりにくくなる
- 白血病細胞がリンパ節や肝臓、脾臓、中枢神経などに広がる
- 治療が遅れると命に関わることがある
長期的な見通し
小児白血病の治療は大きく進歩しました。特に多い急性リンパ性白血病では、多くの子どもが長期間にわたって病気のない状態を保てるようになっています。治療は長く大変な道のりですが、専門チームの支えと家族のサポートの中で、学校に戻り、成長していく子どもたちがたくさんいます。治療後のフォローも充実してきており、将来の健康を見据えたケアが続けられます。見通しについては個人差が大きいため、必ず担当医からお子さんの状況に合わせた説明を受けてください。
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最終更新: 2026年10月22日
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