子どもの嘔吐(おうと)— 家でできることと、病院に行く目安
概要
嘔吐(おうと)は、胃の中のものを口から強く出すことです。子どもは胃や腸の調子が少し乱れただけでも吐きやすいので、嘔吐だけでは重い病気とは限りません。大切なのは「吐いた回数」よりも「水分がとれているか」「元気があるか」「おしっこが出ているか」を見ることです。
重要な事実
- 子どもは大人より体が小さいので、嘔吐や下痢で水分が失われると脱水(だっすい=体の水分が足りなくなること)になりやすいです。
- 吐いた直後は胃が敏感になっています。少し時間をおいて、スプーン1杯ほどの水分から始めると受けつけやすくなります。
- 元気があって、水分がとれて、おしっこが出ていれば、家で様子を見られることが多いです。反対に、ぐったりしている・水分がとれない・おしっこが半日以上出ないときは、早めに医療機関に相談してください。
とてもよくある症状です。小さい子どもほどよく吐きます。ほとんどは数日で自然によくなりますが、ときには治療が必要な病気が隠れていることもあるので、様子の観察が大切です。
赤ちゃんから思春期の子どもまで、どの年齢でも起こります。とくに生後数か月の赤ちゃんは脱水が進みやすいので、注意して見てあげてください。
症状
- 意識がない、または起こしても反応が弱い
- けいれんを起こしている
- 呼吸が苦しそう、顔色が青白い
- 吐いたものに血が混じる、コーヒー色をしている
- 緑色(胆汁色)のものを勢いよく吐いた
- 頭を強く打ったあとに吐き始めた
- 生後3か月未満の赤ちゃんが繰り返し吐き、ぐったりしている
- 激しいおなかの痛みで泣き続け、おなかが張っている
- ⚠半日以上おしっこが出ていない、紙おむつが濡れない
- ⚠水分をとろうとしてもすぐに吐いてしまい、1日続いている
- ⚠口の中がとても乾いている、泣いても涙が出ない
- ⚠発熱が続く、元気がなくなる
- ⚠便に血が混じる、ゼリーのような便が出る
- ⚠おなかの痛みがどんどん強くなる、痛む場所が右下など一定の場所に決まっている
- ⚠発疹が出る、頭痛が強い、首が硬くて動かしにくい
一般的な症状
- 食べたものを吐く、吐き気がする
- 気持ちが悪くて食欲がない
- おなかが痛い、下痢をする
- 軽い発熱
- よだれが増える、口の中が気持ち悪い
子供の症状
- 吐いたあとにけろっとしていることも多い(胃腸炎などではよくあります)
- 泣き声が弱い、いつもよりぐったりして元気がない
- おしっこの回数が減る、紙おむつが乾いたままになる
- 涙が出にくい、口の中や唇が乾いている
- 頭を押さえる、機嫌が悪くてぐずる(頭の病気や中耳炎などのこともあります)
- 吐いたものに緑色(胆汁=たんじゅう)が混じる、血が混じる
高齢者の症状
- このページは主に子ども向けです。大人や高齢者の呕吐は原因が異なることがあり、脳の病気や腸の詰まりなどが見つかることもあります。
- 高齢の方が吐くときは、のどの詰まりや誤嚥(ごえん=食べ物が気管に入ること)、薬の影響なども考えられます。
- 家族の方が高齢者の嘔吐をみたときは、かかりつけ医に早めに相談してください。
原因
主な原因
- ウイルスによる胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)— もっとも多い原因です
- 細菌や食べ物による食あたり
- 食べすぎ、飲みすぎ、脂っこいもののとりすぎ
- 乗り物酔い、強いにおいや気持ちの悪さ
- かぜやのどの感染症、中耳炎、尿路感染症など胃腸以外の感染症
- 赤ちゃんの胃の入り口がゆるくて吐き戻す(胃食道逆流=いしょくどうぎゃくりゅう)
- まれに:虫垂炎(ちゅうすいえん)、腸閉塞(ちょうへいそく)、頭を打った後のけが、片頭痛、心の問題など
リスク要因
- 保育園・幼稚園・学校など人が集まるところに通っている
- 家族や周りの人に同じような症状の人がいる
- 手洗いが十分でない、同じタオルを使っている
- 生後数か月の赤ちゃん(脱水が進みやすい)
- 疲れている、睡眠不足、食欲がない状態が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 半日以上おしっこが出ない、口の中が乾いている、泣いても涙が出ない
- 水分をとっても繰り返し吐いてしまう
- ぐったりしていて、呼びかけへの反応が弱い
- 吐いたものに血や緑色が混じる
- 激しいおなかの痛みが続く、おなかが硬く張っている
- 頭を打ったあとの嘔吐
- 生後3か月未満の赤ちゃんが吐いた・発熱した
定期受診を予約すべき場合:
- 嘔吐が2〜3日続いている、または下痢が1週間以上続いている
- 食欲がもどらない、体重が減っているように見える
- 何度も繰り返す嘔吐をときどき起こす
- 咳をしたときに吐いてしまうことが続く
- 元気はあるが、心配なので確認しておきたい
診断
診察では、いつから・何回・どんなものを吐いたか、発熱や下痢・おしっこの回数、元気の様子などを聞きます。そのうえで、おなかを触って痛む場所がないか、口の中の乾きや皮膚の張りなどで脱水の程度をみます。多くの場合、特別な検査をしなくても診断がつきます。
行われる可能性のある検査
- 体重測定と、ふだんの体重との比較
- 脱水のチェック(口の中の乾き、涙、皮膚をつまんだときの戻り方、おしっこの量)
- 尿検査(ケトン体や濃さをみる)
- 血液検査(脱水の程度や炎症の有無をみる。必要なときのみ)
- 便検査(ウイルスや細菌を調べる。集団発生のときなど)
- 腹部エコー(超音波)検査(腸の詰まりや虫垂炎などが心配なとき)
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で終わることが多いです。検査が必要な場合も、痛みはほとんどありません。診察の前に、吐いた回数と量、水分をとれた量、おしっこの回数、便の様子をメモしておくと、話がスムーズに進みます。
治療
治療の中心は「水分をこまめにとること」と「体を休めること」です。多くの場合、特別な薬は必要なく、数日で自然によくなります。脱水が強いときや水分がとれないときは、医療機関で点滴を行うことがあります。
自宅でのセルフケア
- 吐いた直後は30分〜1時間ほど胃を休めてから、水分を始めます
- スプーン1杯(5〜10mL程度)を数分おきに、少しずつあげます。一度にたくさん飲ませるとまた吐きやすいです
- 水分は、湯ざまし、薄めの麦茶、経口補水液(けいこうほすいえき=水分と塩分を補う飲み物)などが向いています。柑橘類の果汁や炭酸飲料は胃を刺激することがあります
- 母乳は続けて大丈夫です。ミルクは薄めず、少量ずつ回数を分けてあげてください
- 吐いても水分がとれていれば心配しすぎないでください。少量でも入っていれば体は潤います
- うつぶせ寝は避け、吐いたものがのどに詰まらないよう、横向きに寝かせましょう
- おしっこの回数と色、元気の様子を1日に数回チェックしましょう
- 嘔吐物は手袋を使って処理し、よく手を洗い、床は薄めた塩素系漂白剤で拭くと家族への感染を防げます
医療治療
医療機関では、まず脱水の程度を確認し、必要に応じて点滴で水分と塩分を補います。吐き気が強くて水分がとれないときは、吐き気をやわらげるお薬が使われることがあります。原因が細菌による感染症とわかった場合などに限り、抗菌薬が検討されます。どの治療が合うかは、年齢や脱水の程度、原因によって変わるため、医師と相談して決めてください。市販薬や以前にもらった薬を、自己判断で子どもに使うことは避けましょう。
手術が検討される場合
嘔吐そのもののために手術が必要になることはほとんどありません。ただし、虫垂炎や腸閉塞など、手術が必要な病気が隠れている場合があります。強いおなかの痛みや張りがあるときは、早めに受診してください。
この病気と共に生きる
嘔吐が落ち着いてきたら、食べられるものを少しずつ再開します。おかゆ、うどん、やわらかく煮た野菜、すりおろしりんご、バナナ、白身の魚など、やさしいものがおすすめです。脂っこいもの、乳製品の多いもの、甘い飲み物は、しばらく控えめにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 吐いたあとは口をゆすいで、口の中をさっぱりさせてあげましょう
- 保育園・学校は、嘔吐や下痢がおさまり、食事がとれて元気になってから戻るのが目安です。ウイルス性胃腸炎のあとは、症状が消えてもしばらく便からウイルスが出ることがあるため、手洗いをていねいに続けましょう
- 家族にうつさないように、タオルは分け、トイレのあとと食事の前の手洗いを徹底しましょう
- 嘔吐が続くと睡眠も乱れます。看病する大人も、交代しながら休むようにしてください
- 脱水予防に、ふだんから少しずつ水分をとる習慣をつけましょう
食事と運動
胃が落ち着くまでは無理に食べさせず、水分を優先します。食欲がもどってきたら、量を少しずつ増やしていきます。運動は、吐き気や発熱がおさまって元気になってから再開しましょう。乗り物酔いしやすい子は、移動の前に軽く食べておく、窓の外を見ない、席を選ぶなどの工夫が役立ちます。
精神的健康と心の健康
嘔吐が続くと、子どもは「また吐いたらどうしよう」と不安になり、食べることを怖がることがあります。看病する大人も、眠れない日が続いて心身ともに疲れやすいです。つらいときは一人で抱え込まず、家族やかかりつけ医、地域の相談窓口に話してください。気持ちがとてもつらいときは、迷わず相談できる場所を探しましょう。
予防
すべての嘔吐を防ぐことはできませんが、手洗いをていねいに行うこと、食べ物をしっかり加熱すること、食器やタオルを分けることで、感染性の胃腸炎による嘔吐は減らせます。
ワクチン
ロタウイルスによる胃腸炎を防ぐワクチンがあります。日本では任意接種(希望する人が受ける予防接種)で、生後6週から受けられます。受けるかどうか、いつ受けるかは、かかりつけの小児科医と相談して決めてください。
検診プログラム
嘔吐そのものに対する決まった検査(スクリーニング)はありません。ただし、繰り返す嘔吐や成長の気がかりがあるときは、健診のときに相談しておくと安心です。
合併症
治療しない場合
- 脱水(体の水分が足りなくなること)— 元気がなくなる、おしっこが出なくなる、ぐったりする
- 電解質(でんかいしつ=体の中の塩分のバランス)の乱れ
- 誤嚥(ごえん)— 吐いたものが気管に入ってしまうこと
- 栄養がとれずに体重が減る、回復が遅れる
- まれに、腸閉塞や虫垂炎など、吐き気の裏に隠れた病気の発見が遅れる
長期的な見通し
ほとんどの子どもの嘔吐は、水分を上手にとりながら数日休むことで自然によくなります。脱水のサインに気をつけて、早めに相談できれば、多くは大きな問題になりません。看病する方も、完璧を目指さず「水分がとれているか」「おしっこが出ているか」の2点を中心に、ゆったり見守ってあげてください。
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最終更新: 2026年10月22日
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