子どもを元気に動かそう — 毎日の身体活動のすすめ
概要
「子どもを元気に動かす」というのは、特別なスポーツのトレーニングをさせることではありません。毎日の暮らしの中で、歩く・走る・跳ぶ・遊ぶといった、体を動かす時間をしっかり持つことです。体を動かすことは、丈夫な体をつくるだけでなく、気持ちの安定、よく眠れること、勉強への集中力にもつながると言われています。大事なのは「きつすぎず、楽しい」くらいの強さで、毎日少しずつ続けることです。
重要な事実
- 日本の厚生労働省のガイドでは、子どもは毎日合計60分以上、体を動かすことが目安とされています。通学で歩く、遊びで走るといった時間も含めて考えてよいとされています。
- まとめて60分でなくても大丈夫です。10分ずつを数回に分けても、積み重なって効果になります。
- 目安の強さは「少し息がはずむけれど、会話はできる」くらい。ヘトヘトになる必要はありません。
最近の子どもたちは、外で遊ぶ時間や歩く時間が減っていると言われ、目安とされる活動量に届いていない子が多いと考えられています。これは特別なことではなく、どこの家庭でも起こりやすい、ごくありふれた内容です。
乳幼児から10代まで、すべての子どもが対象です。体を動かす量は、住んでいる地域、遊べる場所、家族の生活リズム、学校や習い事の予定などで大きく変わります。運動が苦手な子、障害のある子、喘息などの持病がある子も、その子に合った形で体を動かすことが大切にされます。
症状
- 意識がない、けいれんしている、呼びかけても反応が弱い
- 頭を打ったあと、何度も吐く、ぼんやりしている、手足が動かしにくい、ろれつが回らない
- 胸が痛いと言う、失神した、脈がとても速くて苦しそう
- 熱中症が疑われる強いサイン(意識がもうろう、汗が出ない、皮膚が熱い、体温が非常に高い)
- 呼吸が苦しい、ゼーゼーして会話ができない、唇や顔色が青白い
- これらのサインがあれば、ためらわずに119番(救急)へ連絡してください。
- ⚠関節を強く痛がり、腫れていて歩けない、腕を上げられない
- ⚠転んで頭を打った。すぐ泣いて元気そうでも、当日から翌日にかけて小児科に相談を
- ⚠発熱があり、ぐったりしている、水分をとれない
- ⚠吐き気や下痢が続き、おしっこの量が減っている(脱水のおそれ)
- ⚠やけど、深い切り傷、指を挟んだなどのけが
- ⚠運動中にいつもと違う息苦しさや動悸があり、休んでも改善しない
一般的な症状
- これは病気ではないので「症状」というより、気づきのサインとして見てください。
- 少し歩いただけで「もう疲れた」と言う、坂道や階段で息が切れやすい
- 外遊びや体育を「疲れるから」と嫌がる、体を動かす遊びを避ける
- 家の中で座って過ごす時間が長い(ゲーム・動画・スマートフォンなど)
- 夜なかなか寝つけない、朝起きられない、日中のぼんやりが多い
- 体重が増えてきた、体が重そうに見える
- 姿勢が崩れやすい、すぐ椅子にもたれる
子供の症状
- 幼児から小学生: 走る・跳ぶ・投げるといった基本的な動きが少ない
- 片足で立つ、ボールを蹴る、なわとびなどが同年代より苦手そうに見える
- 遊びの途中ですぐ座り込む、歩くのを「抱っこ」とせがむ
- 友だちと外で遊ぶより、室内の一人遊びを強く好む
高齢者の症状
- ここでは思春期以降の子と、まわりの大人について書きます。
- 中学生・高校生: 部活動をやめたとたんに体を動かす機会がなくなる
- スマートフォンやゲームの時間が長くなり、活動時間が減る
- 大人(保護者・祖父母)も同じで、家族みんなで動くと子どもも続きやすくなります
- 大人が一緒に歩く習慣をつくると、子どもの活動量も自然に増えることがあります
原因
主な原因
- 画面を見て過ごす時間(ゲーム・動画・スマートフォン)が増えたこと
- 外で安全に遊べる場所が減った、交通が多くて一人で遊ばせにくいと感じること
- 習い事や学習、送り迎えで1日が埋まり、自由に体を動かす時間が取りにくいこと
- 移動が車やバス中心になり、歩く時間そのものが減ったこと
- 保護者が共働きで忙しく、外遊びに付き合う余力が持ちにくいこと
- 「運動が苦手」「恥ずかしい」という気持ちが先に立ち、体を動かす場面を避けてしまうこと
リスク要因
- まわりに公園や広い遊び場が少ない、都市部で外遊びの環境が整いにくい
- 家族のなかに運動習慣があまりない
- 子ども本人が「運動は苦手」と強く思っている、過去に体育で嫌な経験がある
- 喘息、アレルギー、貧血、肥満などの体の状態で動きにくさを感じている
- 障害や発達の特性があり、集団の運動についていくのが難しい
- 経済的な事情で、スポーツの場や用具を用意しにくい
- 睡眠時間が短い、朝食を抜くことが多いなど、生活リズムが乱れている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がもうろうとしている、けいれんした、呼びかけへの反応が弱い(すぐ119番)
- 頭を打ったあとに繰り返し吐く、ぼんやりする、手足の動きが左右で違う(すぐ119番)
- 胸の痛み、失神、強い息苦しさがある(すぐ119番)
- 熱中症の強いサインがある(すぐ119番)
- けがで腫れが強く、体重をかけられない、変形している(同じ日のうちに受診)
- 水分がとれず、おしっこが半日以上出ていない(同じ日のうちに受診)
定期受診を予約すべき場合:
- 体重の増え方が気になる、健診で相談された
- 体育や外遊びを極端に嫌がり、自信をなくしているように見える
- 運動すると息苦しい、動悸がする、顔色が悪くなることがある
- 喘息やアレルギーがあり、どのくらい動いてよいか相談したい
- 発達の面で気になることがあり、体の動かし方を相談したい
- 睡眠や食事のリズムが崩れ、生活全体が心配
診断
ふだんは特別な検査は必要ありません。小児科や乳幼児健診・学校健診の場で、身長と体重の伸び方、ふだんの遊び方や歩く時間、睡眠の様子などを聞き取り、体の動きや姿勢を一緒に確認します。気になる点があれば、必要に応じて検査を紹介してもらえます。
行われる可能性のある検査
- 問診(どんな遊びをしているか、1日にどれくらい歩くか、睡眠時間など)と身体測定が中心です
- 成長曲線(身長・体重の伸びを線で表したもの)での確認
- 必要に応じて血液検査(貧血、甲状腺の働き、ビタミンなどを調べる)
- 運動時の息苦しさが気になる場合の呼吸機能検査や、心臓の検査
- これらの検査はすべての子に必要なわけではなく、気になるサインがあるときに行います
診察で予想されること
診察は10〜15分程度のことが多く、問診と身体測定が中心です。服を着たまま体重と身長を測り、ふだんの生活を聞かれます。検査が必要と言われた場合も、痛みの少ないものがほとんどです。心配なことは遠慮なくメモして持っていくと、話がスムーズになります。
治療
このテーマは「治療」というより、家族の生活リズムを少しずつ整えていくことが中心です。医療機関は、肥満、運動発達の遅れ、喘息や貧血など気になることがあるときに、一緒に考える場です。特別な治療がなくても、家庭での工夫だけで十分に改善していくことが多い分野です。
自宅でのセルフケア
- まずは1日10分から。「今日は一緒に公園まで歩こう」くらいの小さな目標から始める
- 遊びの形にする(鬼ごっこ、なわとび、ボール遊び、ダンス)。運動と意識させないほうが続きます
- 画面を見る時間に区切りをつけ、その前後に体を動かす時間を組み合わせる
- 歩いて行ける用事をつくる(買い物、学校の送り迎えの一部、階段を使う)
- 家族の誰かが一緒に動く。大人が楽しそうにしていると子どもも真似します
- 天気が悪い日は室内でできる遊び(ストレッチ、風船遊び、室内ダンス)を用意しておく
- 週に1回は「からだを動かす日」と決めて、家族の予定に組み込む
- ほめるのは結果ではなく「動いたこと」。記録表やカレンダーにシールを貼るのも効果的です
医療治療
医療の場では、小児科医、保健師、管理栄養士、理学療法士などが関わることがあります。内容は、生活の聞き取りとアドバイス、成長の見守り、必要に応じた栄養や運動の相談が中心です。肥満や発達の面で支援が必要なときは、地域の教室や専門機関を紹介してもらえることもあります。薬が使われるのは、別の病気(喘息や貧血など)が見つかった場合に限られ、医師が必要性を判断します。活動量そのものを薬で増やすことはありません。自己判断でサプリメントなどを与える前に、必ず医療機関や薬局に相談してください。
手術が検討される場合
このテーマで手術が必要になることは通常ありません。ただし、転倒や事故で骨折し、手術が必要になることはあります。そうしたけがの多くは、遊び方の見直しや環境づくりである程度防げます。
この病気と共に生きる
毎日の生活に「動くきっかけ」をちりばめるのがコツです。朝はカーテンを開けて光を浴び、少し歩く。学校や保育園はできる範囲で歩く。夕方は宿題の前に10分だけ体を動かす。夜は決まった時間に画面を切り、早めに布団へ。完璧な一日でなくてよくて、1週間のうち半分できていれば十分と思っておくと、家族が疲れません。
生活習慣のアドバイス
- 起きる時間と寝る時間をできるだけそろえる
- 画面を見る時間はあらかじめ決めておき、タイマーを使う
- 歩ける距離は歩く。エレベーターより階段を選ぶ
- 週末は外に出る予定を1つ入れる(公園、散歩、買い物)
- 子どもが自分で選べるようにする(今日は何をして遊ぶ?と聞く)
- 家族で一緒に動く時間を短時間でも確保する
食事と運動
食事は、決まった時間に3食とることを土台に、主食・主菜・副菜をそろえると整いやすくなります。朝食を抜くと体が動きにくくなるので、食べられるものを少しでも。水分は、暑い日や運動の前後にこまめにとります。運動は「毎日60分」が目安ですが、小分けで構いません。息が少しはずむ程度の活動を、遊びの中で楽しく続けるのがいちばん。強い運動を詰め込むより、毎日少しずつ動くほうが体になじみます。
精神的健康と心の健康
体を動かすことは、気分の切り替えやストレス発散にも役立つと言われています。逆に、動く機会が少ないと、なんとなくだるい、イライラする、自信がないといった気持ちが出てくることがあります。子どもが「運動が苦手」と話したときは、否定せずにまず聞いてあげてください。つらい気持ちが長く続くときや、学校に行きづらさがあるときは、小児科や学校のスクールカウンセラー、地域の相談窓口に相談してください。気持ちが追い詰められていると感じたら、すぐに119番、またはお住まいの地域の救急・相談窓口に連絡してください。
予防
生活の習慣として、ある程度は身につけていけます。特別なことを始める必要はなく、歩く・遊ぶ・寝る・食べるのリズムを少しずつ整えることが近道です。小さな習慣を家族で続けることが、いちばんの予防になります。
検診プログラム
乳幼児健診や学校健診では、身長・体重の伸びや運動発達の様子が確認されます。気になることがあれば、健診のときに遠慮なく相談してみてください。健診は、変化に早く気づくための大切な機会です。
合併症
治療しない場合
- 体力がつきにくく、疲れやすい体になる
- 体重が増えやすく、将来の生活習慣病のリスクにつながることがある
- 骨や筋肉が育ちにくく、姿勢の崩れやけがのしやすさにつながる
- 睡眠のリズムが乱れ、日中の集中力や気分に影響することがある
- 「運動が苦手」という意識が強まり、体を動かす場面を避けるようになる
- 友だちと遊ぶ機会が減り、社会性を育てる経験が少なくなることがある
長期的な見通し
心配しすぎる必要はありません。子どもの体は柔軟で、生活のリズムを少し変えるだけで、数週間から数か月で変化が現れることがよくあります。今日から10分歩く、週末に公園へ行く。その小さな積み重ねが、何年も先の健康につながっていきます。焦らず、楽しみながら続けていきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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