コレラ — 知っておきたいこと
概要
コレラは、コレラ菌という細菌が原因で、激しい下痢と嘔吐(おうと)を引き起こす感染症です。菌に汚れている水や食べ物を口にすることで感染します。いちばんの特徴は、お米のとぎ汁のような白っぽい水のような下痢が、たくさん出ることです。体の水分と塩分が失われやすいので、早めに水分を補うことがとても大切です。人から人へうつることはあまりなく、多くは水や食べ物を通じて広がります。
重要な事実
- コレラは、汚染された水や食べ物を口にすることで感染する感染症です。
- 症状は軽い人も多く、症状が出ない人もいます。一方で、激しい下痢で体の水分が失われると危険な状態になることがあります。
- 治療の中心は、失った水分と塩分(電解質:体の働きを保つミネラル)を補うことです。早めに補えば、ほとんどの人は回復します。
世界全体では、清潔な水やトイレが整いにくい地域を中心に、今も多くの人がかかっています。日本ではとてもまれで、多くは海外の流行地域から帰国した人に見つかる「輸入例」です。日本ではコレラは感染症法(感染症の発生を防ぐための法律)で3類感染症に定められており、診断された場合は保健所への届け出が必要です。
安全な水や衛生環境が整いにくい地域に住む人、そうした地域へ旅行・出張する人、乳幼児、高齢者、そして胃酸が少ない状態の人や免疫が下がっている人が影響を受けやすいとされています。健康な大人でもかかることがあります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- けいれんが起きた
- 尿がほとんど出ない、8時間以上おしっこがない
- 皮膚が冷たい、青白い、冷たい汗が出ている
- 呼吸が速く浅い、脈が弱くて速い
- 水分をまったく飲めない、飲んでもすぐ吐いてしまう
- ⚠下痢や嘔吐が止まらず、水分がとれない
- ⚠高熱がある
- ⚠血が混じった便が出た
- ⚠流行地域への渡航後、数日以内に激しい下痢が始まった
- ⚠赤ちゃんや高齢者で元気がなく、いつもと様子が違う
一般的な症状
- 水のようにゆるい下痢(白っぽく、においが少ないことがあります)
- 何度も繰り返す嘔吐(おうと)
- お腹の張りや軽い腹痛
- 口の渇き、尿が少なくなる、立ちくらみ(脱水:体の水分が足りない状態)
- 足がつる、筋肉のけいれん
- だるさ、頭痛、元気が出ない
子供の症状
- 脱水が大人より早く進みやすい
- 泣いても涙が出ない、口の中が乾いている
- おしっこの回数が減る、おむつが長時間乾いたまま
- 元気がなく、ぐったりしている、反応が弱い
- 目がくぼむ、皮膚をつまむと戻りにくい
- 機嫌が悪い、眠りがち
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、脱水に気づきにくい
- 尿が少なくても自分では気づきにくい
- ふらつき、転倒、意識がぼんやりする
- 腎臓・心臓・糖尿病などの持病や、服薬の影響で症状が変わりやすい
- 急に悪化することがあるので、早めの受診が大切
原因
主な原因
- コレラ菌に汚染された水を飲む
- 汚染された水で作った氷や飲み物、洗っていないコップや食器
- 十分に洗っていない生野菜・果物
- 加熱が不十分な魚介類
- 患者の便や嘔吐物に触れた手を洗わずに、口や食べ物に触れる(家庭内ではこうした経路が関係します)
リスク要因
- コレラが流行している地域(南アジア、東南アジア、アフリカ、中東、中南米の一部など)への渡航・滞在
- 安全な水やトイレが整っていない環境での生活
- 災害や避難所などで衛生環境が悪くなったとき
- 胃酸が少ない状態(胃の手術を受けたことがある、長期間胃酸を抑える薬を使っている)
- 乳幼児、高齢者
- 免疫が低下する病気や治療を受けている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 水のような下痢が何度も続き、水分がとれない
- 嘔吐がひどく、飲んでもすぐ吐いてしまう
- 尿がほとんど出ない、口が強い渇きで苦しい
- ぐったりしている、意識がぼんやりしている(この場合は救急要請を)
- 血の混じった便、または高熱がある
- 流行地域から帰国後、数日以内に激しい下痢が始まった
定期受診を予約すべき場合:
- 流行地域へ旅行する予定があり、水や食べ物の注意点を相談したい
- 軽い下痢やお腹の不快感が数日続いている
- 家族や同居の人がコレラと診断された(保健所の指示に従ってください)
- 下痢のあと、だるさや食欲不振が長引いている
診断
まず、症状の経過、渡航歴、食べたものや飲んだもの、周囲に同じような症状の人がいるかを聞きます。そのうえで便を調べて、コレラ菌がいるかどうかを確かめます。日本では保健所など専門の検査機関で確認されることが多く、診断された場合は保健所への届け出が行われます。
行われる可能性のある検査
- 便の培養検査(便を培養して菌を育て、調べる検査)
- 便の迅速検査(遺伝子や菌の成分を短時間で調べる検査)
- 血液検査(脱水の程度、塩分などの電解質、腎臓の働きを確認)
- 尿検査(脱水の程度の参考)
診察で予想されること
検査結果が出るまでに数日かかることがあります。その間も水分をとり続けることが大切です。結果によっては保健所から連絡があり、仕事や学校を休む期間などについて案内があります。指示に沿って対応すれば心配いりません。
治療
治療の中心は、失われた水分と塩分(電解質)を補うことです。症状が軽い〜中等度の場合は、経口補水液(飲んで水分と塩分を補うための液)を少しずつ飲んで補います。嘔吐が強くて飲めない場合や、脱水が強い場合は、医療機関で点滴による補給を行います。抗菌薬が使われることもありますが、使うかどうかは医師が状態を見て判断します。
自宅でのセルフケア
- 経口補水液を、一度にたくさんではなく少量ずつ何回にも分けて飲む
- 飲むのがつらいときは、スプーン1杯ずつ間をあけて飲む
- 市販の清涼飲料やスポーツ飲料は糖分が多く塩分が足りないことがあるので、経口補水液が望ましい
- 下痢止めを自分で判断して使わない(菌を体の外に出しにくくなることがあります)
- トイレの後、調理の前、食事の前に石鹸と流水で手を洗う
- タオルや食器は家族と分ける
- 下痢が続いている間は、仕事・学校・食べ物の調理を控える(期間は保健所や医師の指示に従う)
- 家族も症状が出ていないか気にかけ、同じように手洗いを心がける
医療治療
医療機関では、脱水の程度を評価して、点滴で水分と電解質を補います。吐き気が強いときには吐き気をやわらげる対応がされることがあります。状態に応じて抗菌薬が検討されることもありますが、使用の可否や種類は医師が判断します。小児では栄養面のサポートが行われることがあります。治療の内容は症状や年齢、持病によって変わるため、自己判断せず医師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
コレラの治療で手術が必要になることは通常ありません。
この病気と共に生きる
回復するまでは安静にして、こまめに水分をとりましょう。トイレの後と食事の前の手洗いをていねいに行い、タオルや食器は家族と分けると安心です。入浴はシャワー程度にし、湯船は回復してからにするとよいでしょう。下痢が続いている間は、周りの人にうつさないために仕事や学校、調理を控え、いつまで休むかは保健所や医師の指示に従ってください。
生活習慣のアドバイス
- 石鹸と流水での手洗いを習慣にする
- 飲み水は安全なものを選び、流行地域では氷や生水を避ける
- 回復期は睡眠と休養を十分にとる
- 家族にも手洗いや食事の取り扱いに気をつけてもらう
- 不安なことは一人で抱えず、医師や保健所に相談する
食事と運動
回復期は、おかゆ、スープ、やわらかく煮た野菜など消化のよいものを少量ずつ何回かに分けてとりましょう。乳製品や脂っこいもの、アルコール、カフェインは控えめにするとお腹が楽になります。運動は、下痢が治まり体力が戻ってから、散歩など軽いものから少しずつ再開してください。
精神的健康と心の健康
隔離や休業が必要になると、不安になったり、周囲にどう思われるか心配になったりすることがあります。渡航先で体調を崩した場合は、心細さが大きいこともあります。これは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、医師や保健所、信頼できる人に話してください。つらい気持ちが続くときは、相談窓口を利用することも大切です。
予防
はい。基本は「安全な水」「安全な食べ物」「手洗い」の3つです。流行地域では、水道水でもそのまま飲まない、氷を避ける、生ものや皮をむいていない果物を避ける、などの工夫が役立ちます。手指の衛生を保つことは、自分を守るだけでなく周りの人を守ることにもつながります。
ワクチン
コレラには飲むタイプのワクチンがあり、流行地域へ行く人に検討されることがあります。日本では定期接種のワクチンではなく、渡航先や滞在期間によって必要性が変わるため、旅行前に医師や検疫所の相談窓口に相談してください。ワクチンだけで完全に防げるわけではないので、水と食べ物への注意もあわせて大切です。
検診プログラム
症状がない人にコレラの検査を日常的に行うことは通常ありません。流行地域から帰国して下痢などの症状がある場合や、同じ食事をした人に症状が出た場合には、早めに医療機関や保健所に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 重度の脱水(体の水分が大きく失われ、血圧が下がる)
- ショック(血液が体のすみずみまで回らなくなる危険な状態)
- 腎臓の働きが低下する
- 電解質の乱れによるけいれんや不整脈(脈の乱れ)
- 意識障害
- まれに命に関わる場合がある
長期的な見通し
コレラは、早めに水分と塩分を補えば、ほとんどの人が数日のうちに回復します。回復後もしばらくは免疫(体を守る力)が続きますが、時間がたつと再びかかることもあります。下痢が続くときや具合が悪いときは、我慢せず早めに相談することが安心につながります。
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最終更新: 2026年10月22日
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