コレステロールってなに?〜血液の中のあぶらを知ろう〜
概要
コレステロールは、血液の中を流れている「脂質(あぶら)」の一種です。体にとってはなくてはならない材料で、細胞の膜をつくったり、ホルモンやビタミンDをつくる材料になったりします。コレステロールは食べ物からだけでなく、肝臓でもつくられます。問題になるのは「多すぎる」ときです。コレステロールは血液の中を運ばれますが、運び方にはいくつか種類があります。よく「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールは、増えすぎると血管の壁にたまりやすくなります。反対に「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールは、余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きがあります。大切なのは、どちらか一方の数字だけでなく、全体のバランスを見ることです。
重要な事実
- コレステロールは体に必要な成分です。多すぎると血管に負担がかかります。
- 食事だけでなく、肝臓でもつくられています。
- ほとんど自覚症状がないまま、血管の病気のリスクが少しずつ上がることがあります。
- 健康診断の血液検査(採血)で数値を知ることができます。
とてもよくあることです。日本の健康診断でも、コレステロールの数値が基準を外れる人は少なくありません。特別な人だけのことではなく、多くの人が一度は気にした経験のあるテーマだと考えてよいでしょう。
中高年だけでなく、若い人にも起こります。糖尿病や甲状腺(のどにあるホルモンの腺)の病気、腎臓の病気があると高くなりやすいこともあります。また、生まれつきコレステロールが高くなりやすい体質の人(家族性高コレステロール血症)もおり、この場合は若い頃から数値が高くなります。男性は中年以降、女性は閉経(月経が終わること)の前後から数値が上がりやすくなります。
症状
- 突然の激しい胸の痛み、または胸を締めつけられるような苦しさが続く(冷や汗や息苦しさを伴うことがあります)
- 急な激しい頭痛、ろれつが回らない、片側の手足が動きにくい、顔がゆがむ(脳卒中のサイン)
- 意識を失う、呼びかけへの反応がおかしい
- ⚠坂道や階段で、以前より明らかに息が切れるようになった
- ⚠胸が圧迫される感じが繰り返し起こる
- ⚠歩くと脚(ふくらはぎ)が痛くなり、休むと楽になることを繰り返す
一般的な症状
- 通常はまったく症状がありません。数値が高くても、痛みやだるさは感じません。
- だからこそ、症状がないときに健康診断で見つけることが大切です。
- ごくまれに、まぶたや関節のまわり、かかとなどに黄色っぽい盛り上がり(黄色腫)が出ることがあります。これは体質的にコレステロールが非常に高くなるタイプの人に見られることがあります。
子供の症状
- 子どもも基本的には無症状です。
- 生まれつきコレステロールが高くなりやすい体質の場合、家族にも若い頃から数値が高い人がいることが多いです。
- まれに、目の黒目のまわりの白い輪(角膜輪)や、手足の黄色っぽい盛り上がりが見られることがあります。気になる場合は小児科に相談してください。
高齢者の症状
- 年齢とともに血管が硬くなりやすく、動脈硬化(血管の壁が厚く硬くなること)が進みやすくなります。
- 胸の圧迫感や息切れなど、心臓の血管の症状が出ることがあります。
- 歩くとふくらはぎが痛くなり、少し休むと楽になる(間欠性跛行)という足の血管の症状が出ることがあります。
原因
主な原因
- 食生活の偏り(脂身の多い肉、バターや生クリーム、揚げ物、加工食品のとりすぎ)
- 運動不足や体重の増加(特におなかまわりの脂肪)
- 体質・遺伝(家族にコレステロールが高い人がいる)
- 肝臓でのコレステロール産生が多いこと
- 喫煙や飲酒の量が多いこと
- 加齢による変化
- 他の病気の影響(甲状腺の働きの低下、糖尿病、腎臓の病気など)
- 薬の影響で数値が上がることがある
リスク要因
- 家族に若い頃からコレステロールが高い人、または心臓病・脳卒中を経験した人がいる
- 体重の増加、とくにおなかまわりの脂肪
- 糖尿病、高血圧、腎臓の病気がある
- たばこを吸う
- 日常的に体を動かす時間が少ない
- ストレスが多い、睡眠が不足しがち
- 年齢(中年以降)、男性、女性は閉経後
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の強い痛みや締めつけられる苦しさがある(ためらわず119番へ)
- 脳卒中のサイン(ろれつが回らない、片側の手足の麻痺、急な激しい頭痛)がある(119番へ)
- 歩くと脚が痛くなる症状が繰り返し出る
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や特定健診でコレステロールが高いと言われた
- 家族に若い頃からコレステロールが高い人、心臓病や脳卒中の人がいる
- 食事や運動などの生活習慣について相談したい
- 糖尿病や高血圧など、ほかの持病がある
診断
血液検査(採血)で調べます。総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)の数値を確認します。数値だけでなく、血圧・体重・喫煙・家族歴・ほかの病気の有無もあわせて、あなたにとっての目標範囲を医師が考えます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(脂質の数値を調べる採血)
- 血圧・体重・腹囲の測定
- 家族歴や生活習慣についての問診
- 甲状腺の働きを調べる検査(必要に応じて)
- 血糖やHbA1c(糖尿病の目安)、肝機能・腎機能の検査
- 必要に応じて心電図や血管の超音波検査
診察で予想されること
検査の前は、食事の影響で数値が変わるため、一般的には10時間程度の絶食(水以外はとらない)が望ましいとされています。詳しくは受けられる医療機関の指示に従ってください。結果は当日から数日でわかることが多いです。数値が基準を超えていても、それだけで病気と決まるわけではなく、全体のリスクとあわせて判断します。一度の結果だけで一喜一憂せず、経過を見ていくことが大切です。
治療
治療の目標は「数値を下げること」そのものではなく、将来の心臓や血管の病気のリスクを下げることです。目標の範囲は、糖尿病や心臓病の経験などがあるかどうかで変わります。まずは食事と運動、禁煙といった生活習慣の見直しから始め、それでも十分に下がらない場合やリスクが高い場合に、薬を使うことがあります。
自宅でのセルフケア
- 脂身の多い肉やバター、揚げ物、加工食品を控えめにする
- 魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、全粒穀物をとり入れる
- 食物繊維(とくに水に溶けるタイプ)を意識してとる
- 早歩きなどの中くらいの強さの運動を、無理のない範囲で習慣にする
- 禁煙する。お酒は量と頻度を控えめにする
- 体重、とくにおなかまわりを意識して管理する
- 睡眠を十分にとり、ストレスをためこまない
医療治療
生活習慣の見直しだけでは十分に下がらない場合や、糖尿病・心臓病の経験などでリスクが高い場合に、コレステロールを下げる薬を使うことがあります。薬の種類や使い方は医師があなたに合わせて決めます。自己判断で飲むのをやめたり量を変えたりせず、気になることがあれば医師や薬剤師に相談してください。薬を使っている間も、定期的な血液検査で経過を確認します。
手術が検討される場合
コレステロールの数値そのものを手術で下げることはありません。ただし、心臓の血管が狭くなっている場合などには、カテーテル治療やバイパス手術が検討されることがあります。これはコレステロールの治療というより、進んでしまった血管の病気に対する治療です。
この病気と共に生きる
コレステロールの数値は、数日や数週間では大きく変わりません。3〜6か月くらいの長い目で見ていくのが現実的です。健診結果を保管して、前回と比べられるようにしておくと、変化が実感しやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(吸っている場合は、禁煙外来などの支援も利用できます)
- お酒は量と頻度を控えめにする
- 毎日の睡眠時間を確保する
- 体重と腹囲を定期的に測って記録する
- ストレスをためず、自分なりの息抜きの時間をつくる
- 通院や健診の予定をカレンダーに入れて忘れないようにする
食事と運動
食事では、脂身の多い肉やバター、生クリーム、揚げ物、スナック菓子などを「毎日たくさん」から「ときどき適量」に変えていきます。そのうえで、青魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、全粒穀物、ナッツなどをとり入れるとよいでしょう。食物繊維、とくに水に溶けるタイプの食物繊維は役に立つと考えられています。運動は、早歩きや自転車、泳ぎなどの中くらいの強さの有酸素運動を、週に合計150分ほどを目安に、無理のない範囲で続けるのがおすすめです。加えて、軽い筋力トレーニングを組み合わせると効果的です。エレベーターより階段を使う、ひと駅分歩くといった小さな工夫から始めても十分です。持病がある方は、運動を始める前に医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
「悪玉」という言葉を聞くと、不安になったり自分を責めたくなったりするかもしれません。でも、数値は生活習慣によって変えていけるものです。食事を極端に減らしたり、食べることを必要以上に怖がったりすると、かえって心身の負担になります。気持ちが落ち着かないときや、不安が続くときは、ひとりで抱えこまずに医師や周りの人に話してみてください。つらい気持ちが強い場合には、地域の相談窓口や医療機関に相談することが大切です。
予防
生活習慣が関係するタイプの高コレステロールは、ある程度予防できます。食事、運動、禁煙、体重管理を日々続けることが土台になります。生まれつきの体質によるタイプは完全には防げませんが、早く見つけて管理することで、将来の血管の病気のリスクを下げることができます。
ワクチン
コレステロールを防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
日本では、健康診断や特定健診(40〜74歳の加入者を対象とした公的な健診)で血液検査が行われ、脂質の数値も確認できます。厚生労働省も生活習慣病の予防と早期発見をすすめています。家族に若い頃からコレステロールが高い人がいる場合は、年齢にかかわらず早めに医師へ相談しましょう。健診の受け方は、お住まいの自治体や加入している健康保険の案内をご覧ください。
合併症
治療しない場合
- 動脈硬化(血管の壁が厚く硬くなること)が進みます。
- 心臓の血管が狭くなる狭心症や、詰まる心筋梗塞につながることがあります。
- 脳の血管が詰まる脳梗塞のリスクが上がります。
- 足の血管が狭くなり、歩くと脚が痛くなる末梢動脈疾患につながることがあります。
- 腎臓の血管が傷つき、腎臓の働きが低下することがあります。
長期的な見通し
多くの人は、生活習慣の見直しと、必要に応じた治療を続けることで、リスクを下げることができます。数値は急には変わりませんが、毎日の積み重ねは確実に力になります。心配なことがあれば、ひとりで抱えずにかかりつけ医に相談しながら、自分のペースで進めていきましょう。
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最終更新: 2026年10月22日
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