慢性疾患(長く続く病気)と上手に付き合う
概要
慢性疾患とは、すぐに治るのではなく、長い期間(ふつうは3か月以上)にわたって続く病気のまとまった呼び方です。高血圧(血の流れの圧力が高い状態が続く)、糖尿病(血糖値が高い状態が続く)、ぜんそく、心臓の病気、関節の病気など、さまざまな種類があります。病気の種類によって症状も治療のしかたも違いますが、「長く付き合いながら、症状をうまくコントロールしていく」という点は共通しています。
重要な事実
- 慢性疾患は「治す」だけでなく「うまく付き合う」ことが目標になります。病気そのものを完全に消せなくても、症状を軽くし、毎日の生活の質を保つことは十分に可能です。
- 症状には波があります。調子のよい日もあれば、悪い日もあります。悪い日があるのは、あなたの努力が足りないからではありません。
- 定期的な通院と、自分でできるセルフケア(生活の工夫)を組み合わせて管理していきます。医療者とあなたが一緒に作っていくものです。
とても多い状態です。日本では、がん、心臓の病気、脳の血管の病気など、長く経過をたどる病気が死亡原因の上位を占めています。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病で通院している人も数多くいます。つまり、慢性疾患を持つことは特別なことではなく、多くの人が経験していることです。
年齢を問わず、誰にでも起こりえます。子どもでは、ぜんそく、1型糖尿病(体の中でインスリンが出にくくなる病気)、アレルギーの病気などがあります。高齢になると、複数の慢性疾患を同時に持つことが増えます。遺伝的な体質、生活習慣、環境、加齢など、いくつもの要因が関係します。
症状
- 意識がない、呼びかけても反応が浅い
- 呼吸が苦しくて話せない、唇や顔色が青白い
- 胸の強い痛みが続き、汗が出る
- けいれんが止まらない、意識を失って倒れた
- 大量の出血がある、血を吐いた、黒い便が続く
- 急に片方の手足が動かない、ろれつが回らない、顔がゆがむ(脳の血管の病気のサイン)
- 迷ったら119番に電話してください。ためらう必要はありません。
- ⚠発熱が数日続き、ぐったりしている
- ⚠いつもの症状と明らかに違う急な悪化がある
- ⚠薬がなくなった、飲めなくなった、飲むのをやめてしまった
- ⚠強い痛みで眠れない、日常生活ができない
- ⚠急に体重が減った、足のむくみが急に増えた
- ⚠気分の落ち込みが強く、日常生活が回らない
一般的な症状
- だるさ、疲れやすさ(休んでも疲れが取れにくい)
- 痛み(関節、筋肉、頭、おなかなど、場所は病気によってさまざま)
- 睡眠の問題(眠りにくい、途中で目が覚める、朝起きられない)
- 症状が良くなったり悪くなったりする「波」がある
- 食欲の変化、体重の変化
- 気分の落ち込み、不安、いらいら
- 集中しにくい、物忘れが増えたように感じる
- 日常生活(仕事、家事、通学)に時間がかかる、疲れやすい
子供の症状
- ぜんそくの発作(息が苦しい、ゼーゼーする)
- 疲れやすい、体育や遊びについていけない
- 食欲がなく、体重が増えにくい、成長がゆっくりに感じる
- 学校を休みがちになる、友人関係で悩む
- 腹痛や頭痛など、はっきりしない体の不調として現れることがある
- 治療を続けることに飽きたり、嫌になったりする(思春期によくあることです)
高齢者の症状
- 複数の病気を同時に抱え、症状が重なり合う
- 薬の数が多くなり、飲み合わせや副作用が心配になる
- 筋力や体力が落ちやすい(フレイル:加齢で心身が弱った状態)
- 転びやすくなる、歩くのが遅くなる
- 物忘れや認知機能の変化が重なることがある
- 症状を「年のせい」と思い込み、受診が遅れやすい
原因
主な原因
- 遺伝や体質(家族に同じ病気の人がいる場合など)
- 免疫の働きの異常(体を守る仕組みが誤って自分を攻撃してしまうこと)
- 生活習慣(食事の内容、運動不足、喫煙、飲酒、睡眠不足)
- 環境の影響(アレルギーの原因物質、職業上の粉じんや化学物質など)
- 加齢による体の変化
- 感染症のあとに続く症状
- はっきりした原因がわからないものも多い
リスク要因
- 喫煙(本人だけでなく、まわりの煙も含む)
- 飲酒量が多い
- 塩分や脂質の多い食事、野菜や果物が少ない食事
- 運動不足、長時間すわったまま過ごすこと
- 肥満、特に内臓まわりの脂肪が多い状態
- 睡眠不足や生活リズムの乱れ
- 強いストレスが長く続くこと
- 家族に同じ病気の人がいる
- 高齢であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に息が苦しくなった、胸が痛い、意識がぼんやりする(119番をためらわないでください)
- 高熱が続く、ぐったりして水分もとれない
- いつもの症状と明らかに違う変化が急に起きた
- 薬が切れてしまい、飲めないまま数日たった
- 自分やまわりを傷つけたい気持ちが強くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 症状が少しずつ悪くなっている、日常生活が前より大変になった
- 疲れやすさ、痛み、眠りの問題が2週間以上続いている
- 体重が意図せず増えた、または減った
- 気分の落ち込みや不安が続き、楽しみを感じにくい
- 薬の副作用かもしれない症状が出た(自己判断で中止せず、まず相談してください)
- 健診で数値の異常を指摘された
診断
診断は、問診(お話をうかがうこと)と診察から始まります。症状がいつから、どんなふうに続いているか、生活の様子、家族の病歴などを聞き、体の状態を診ます。慢性疾患は、一度の受診ですぐに診断がつくとは限らず、時間をかけて経過を見ながら判断することもよくあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査、尿検査(体の中の状態を調べる)
- 画像検査(レントゲン、CT、MRI、超音波など)
- 心電図(心臓の電気の動きを調べる)
- 呼吸機能検査(息を吐く力や肺の働きを調べる)
- 内視鏡検査(管を入れて中を直接見る検査)
- 組織を少し取って調べる検査(生検)
- 症状日記や問診票(毎日の症状の記録が診断の助けになります)
診察で予想されること
診断までに何度か通院することもあります。専門の医師を紹介されることもあります。受診のときは、症状が出た日と時間、そのとき何をしていたか、薬を飲んだかどうかをメモしていくと話がスムーズです。わからないことは遠慮なく質問してください。セカンドオピニオン(別の医師の意見を聞くこと)を求めることもできます。
治療
慢性疾患の治療の目標は、症状を軽くして、毎日の生活の質を保ち、合併症(別の臓器に起きる二次的な問題)を防ぐことです。病気によっては根本から治すことが難しい場合もありますが、治療と生活の工夫で症状をうまくコントロールしている人はたくさんいます。治療は医療者とあなたが相談しながら進めていきます。
自宅でのセルフケア
- 薬は自己判断でやめたり量を変えたりしない(気になることは医師や薬剤師に相談する)
- 症状日記をつける(症状、睡眠、食事、活動、気分を簡単に記録する)
- 睡眠を大切にする(毎日同じくらいの時間に寝起きする)
- 無理のない範囲で体を動かす(散歩、ストレッチなど)
- バランスのよい食事を心がける(極端な食事制限は避け、必要なら管理栄養士に相談する)
- 禁煙する、飲酒はほどほどにする
- ストレスをためない工夫を持つ(趣味、人と話す、呼吸を整える時間)
- 予防接種を医師と相談する
- かかりつけ医を持ち、体調の変化を早めに相談する
医療治療
治療の方法は病気の種類によってさまざまです。薬で症状を抑える、炎症を鎮める、進行をゆるやかにする、體の働きを助けるなど、目的もいろいろあります。薬の種類や量は、年齢、体の状態、他の病気、飲み合わせを考えて医師が調整します。ほかにも、リハビリテーション(体力や動きを取り戻す訓練)、理学療法、呼吸リハビリ、栄養指導、生活指導などが組み合わされます。薬についての疑問や副作用の心配は、医師や薬剤師に遠慮なく聞いてください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、薬やリハビリだけでは十分にコントロールできないとき、血管や管が狭くなっているとき、腫瘍があるとき、臓器の働きが大きく落ちているときなどです。急いで行う場合もあれば、状態を見ながら計画して行う場合もあります。手術以外の選択肢も含めて、主治医とよく相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
慢性疾患と付き合うコツは、自分の体のペースを知ることです。調子のよい日に予定を詰め込みすぎると、そのあとに反動が来やすくなります。休む時間を先に予定に入れておく、大事な用事の前日は早めに休む、といった工夫が役立ちます。家族や同僚、学校の先生など、まわりの人に自分の状態を伝えておくと、助けを求めやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 生活のリズムを整える(食事、睡眠、活動の時間をできるだけ一定に)
- 疲れを感じる前に小休止を入れる
- 体調の記録を続け、受診のときに持っていく
- 大事な予定の前後に余裕を作る
- 完璧を目指さない(できなかった日があっても大丈夫)
- 信頼できる人に話を聞いてもらう時間を持つ
- 自治体の保健師、ケアマネジャー、社会福祉協議会などの相談窓口を活用する
食事と運動
食事と運動の内容は病気によって違います。たとえば塩分を控えめにしたほうがよい場合もあれば、たんぱく質やエネルギーをしっかりとる必要がある場合もあります。自分で判断せず、主治医や管理栄養士に相談してください。運動は、散歩や軽いストレッチなど、息が少し上がる程度を無理なく続けるのが基本です。具合の悪い日は休むことも大切な自己管理です。
精神的健康と心の健康
長く続く病気は、体だけでなく心にも影響します。落ち込み、不安、いらいら、怒り、「なぜ自分だけが」という気持ち、人と会うのがおっくうになることなどは、よくある自然な反応です。我慢し続ける必要はありません。話を聞いてもらうだけで楽になることもあります。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたり、生きていたくないと感じたりしたら、すぐに医療機関や地域の相談窓口に連絡し、緊急の場合は119番に電話してください。一人で抱え込まないでください。
予防
すべての慢性疾患を防ぐことはできません。遺伝や体質、加齢など、自分では変えられない要因もあるからです。それでも、生活習慣を見直すことでリスクを下げられる病気は多くあります。禁煙、適正体重を保つこと、塩分を控えめにすること、野菜をとること、体を動かすこと、睡眠を確保すること、健診を受けることが役立ちます。すでに病気がある場合でも、生活の工夫は悪化を防ぐ助けになります。
ワクチン
慢性疾患があると、感染症にかかったときに重くなりやすいことがあります。インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、主治医と相談してみてください。年齢や病気によって公的な助成が受けられる場合があります。自治体の案内も確認してみましょう。
検診プログラム
特定健診・後期高齢者健診、がん検診など、自治体が案内している健診は、病気を早く見つける助けになります。症状がない段階で見つかると、選択肢が広がります。案内が届いたら、かかりつけ医に相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 症状が徐々に強くなり、日常生活が難しくなる
- 心臓、腎臓、目、神経など、ほかの臓器に合併症が起きる
- 入院が必要になる急な悪化
- 感染症にかかったときに重くなりやすい
- 仕事や学業、家事が思うように進まなくなる
- 気分の落ち込みや不安が強くなる
- 薬が増え、飲み合わせの管理が複雑になる
長期的な見通し
慢性疾患は「終わりのある戦い」ではなく「長く付き合う関係」です。病気の種類によりますが、治療と生活の工夫で症状をコントロールし、仕事や趣味、家族との時間を続けている人はたくさんいます。調子に波があっても、それは前に進めていないという意味ではありません。早めに相談すること、自分に合ったペースを見つけることが、長い目で見ていちばんの近道になります。
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最終更新: 2026年10月22日
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